世界初の「空の地図」をつくる。一人の情熱から始まったゼンリンの新規事業
深田雅之(株式会社ゼンリン ドローン推進課 副長) / 原口幸治(株式会社ゼンリン 執行役員 研究開発室 室長)
2018.09.10

社内の味方も少ないなか、どんどん一人で外に飛び出していく行動力に感激した。

HIP:社内でドローンに取り組む仲間が増え始めたのは、いつの頃からだったのでしょうか?

深田:活動を始めて、約1年が経った頃ですね。2016年の3月に、原口が「ドローン面白そうだから、一緒にやろうか」と言ってくれて。それまでは一人ぼっちでやっていると思っていたので、「見てくれている人がいたんだ」と嬉しかったですね。

原口:深田は、新しいことに取り組むのが好きという意味で、私と似たタイプなんじゃないかと思っていて。でも、エンジニアと事業担当者、立場の違いもあって、最初は嫌いだったんです(笑)。私はもともと飛行機が好きで、飛ぶものに対する興味があったので、深田がドローンに取り組んでいることは知っていて。彼がほぼ1人でやっているのも知っていました。

それで研究開発のネタを仕入れるつもりで、深田と話をしたんです。すぐに、「面白いな」と思いましたね。社内の味方も少ないなか、どんどん一人で外に飛び出していく、彼の行動力にも感激しました。それで、研究開発部門として協力しよう、という話になったんです。

HIP:部門や立場を超えて、お二人が一つのビジョンでつながったんですね。

全国の管理職が集まる会議で、「世界初の『空の地図』をつくりたい」と夢を語った。

深田:原口と話し合った1か月後に参加した、経営方針発表会もターニングポイントだったと思います。年に一度、全国の管理職が集まる発表会で20分間プレゼンの時間をもらって、ドローンの話をしたんです。するとその翌週に、なんと営業部門のトップである常務が連絡してくれて「面白そうだからやろうよ。事業責任はこっちで持つから」と言ってくれました。

原口:私もそのプレゼンを見ていたのですが、深田は「世界初の『空の地図』をつくりたい」と語っていたんです。「何を夢みたいなこと言っているんだ」という思いもあると同時に、「こうやってビジョンを語る人がいないといけないな」とも思いました。エンジニアには、「順序立てて取り組んで、きちんとものをつくる」という責任があります。ですが既存事業ならともかく、新しいものを生み出すことは、それだけでは成しえない。

深田:そのときは会場全体の2割の人に響けばいいと思って、あえて大きな夢を語ったんです。多数の人を説得することはできなくても、響く人には響くだろうと。

HIP:振り返ってみれば、たとえ少数でも賛成してくれる人が増えて、なにかが動き始めるきっかけになることが大事だったのですね。

深田:そのとおりです。そのまた数か月後に常務の勧めで、経済産業省が主宰する『IoT Lab Selection』という、IoTを活用したプロジェクトのコンテストに参加しました。結果として準グランプリを受賞し、経済産業省から実験のための予算をいただくことができました。

そして同じ年、2016年の夏に東京電力と出会い、9月にはドローン事業推進課という組織ができて、現在は7人のメンバーがいます。グループ会社も入れると40、50人の規模のチームにまで成長しました。

送電線上でドローンを飛ばした、世界初の実験が成功。今後の課題は?

HIP:現在、「ドローンハイウェイ」プロジェクトはどのような状況なのでしょうか。

深田:2018年6月に秩父市で、総延長3kmのドローンハイウェイ上を完全に自動飛行させる実証実験をしました。送電線上でドローンを飛ばした実験としては、世界初です。前年の3月に、ドローンハイウェイ構想を発表したのですが、すぐに秩父市から「ぜひうちでドローンハイウェイをやってくれ」と連絡をいただきまして。

現地に行ってみると、地域の課題がたくさんあることがわかりました。高齢者が多く、山が多い場所で。過去には大雪で道路が遮断されて数日間通れなくなり、そのあいだ物資を届けられなかったこともあると聞きました。そういった社会課題を、ドローンで解決できる可能性があると感じました。

HIP:実験では、どのようなことを行ったのですか?

深田:実験には、東京電力ホールディングス子会社の東京電力ベンチャーズとゼンリンに加えて、楽天が参加しました。実際に、山の上の民家から楽天アプリで弁当を注文してもらって。弁当を入れたボックスを山の麓でドローンに積み込み、あとはスイッチひとつを押すだけで、自動飛行で注文者のもとまで届ける、ということをやりました。

秩父市での実験の説明動画

HIP:実験の成果について、どのように受け止めていますか?

深田:ドローンが送電線に沿って自動飛行できることは立証できました。しかし、ドローンを飛行させるためには、現段階では安全面などから自治体や地域住民の方々などへの説明が不可欠で、いろいろと準備が大変です。こうした飛ばすためのプロセスが簡素化され、安心が担保された「道」をいかに広げていくか。今後はこれに尽きると思います。

原口:ドローンは高度150m以下の低い空を飛ぶので、住民のプライバシーの問題があるほか、通信を行うため電波法も関係します。複数の省庁との調整もあり大変ですが、いまはドローンに関する規制緩和が政府主導で進んでいる状況なので、追い風ではありますね。

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