INTERVIEW
グローバルで勝つベンチャー企業の輩出のために、監査法人にしかできないこと
鈴木真一郎(新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター センター長)

INFORMATION

2015.12.01

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日本はイノベーションを必要としている。人工知能、ロボティクス、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、3Dプリンター……これらのテクノロジーが発達した2030年の社会では、オフィスや住環境はもちろんのこと、個人の生活環境や消費行動、また企業の生産活動、販売活動など様々なものが大きく変化する。変化の激しい時代へと突入している現代では、イノベーションを生み出し、大きく成長していく企業の登場が期待されている。

これからの社会を支えていくであろうベンチャー企業を支援することで、新たな文化を生み出そうとしているのが、新日本有限責任監査法人だ。新日本有限責任監査法人(以下、新日本)企業成長サポートセンター センター長の鈴木真一郎氏に、なぜ新日本はベンチャー支援に力を入れているのか、そして日本のベンチャー企業がグローバルで勝つためにはどうすべきなのか、お話を伺った。

取材・文:HIP編集部 撮影:相良博昭

世界で生き残っていけるベンチャー企業を日本から創出するために

HIP編集部(以下、HIP):新日本監査法人では、いつ頃から企業成長サポートセンターの活動をスタートされたのでしょうか?

鈴木真一郎(以下、鈴木):2012年からですね。新日本はロンドンを拠点とするアーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッド(以下、EY)のメンバーファームですが、EYはこれまで世界中でベンチャー支援を行ってきています。Apple、Facebook、Googleなどのシリコンバレーから生まれたベンチャーたちも早期から支援していて、「ベンチャーの支援」がEYグローバル全体の方針にもなっているんです。世界では既に動き始めていたので、日本も早く環境を変えていかなければいけないという思いで立ち上げました。

HIP:グローバルでベンチャー支援に取り組まれているんですね。

鈴木:はい。EYが掲げている「Building a better working world」というメッセージには、より良い社会の創出に向けて活動をしていこう、という思いが込められているんです。私たちも日本の将来を見据えて、未来を切り開くイノベーティブなベンチャー企業を共に創造していく必要があると考えました。

HIP:なるほど。企業成長サポートセンターでは、具体的にどういったベンチャー支援活動をされているのでしょうか。

鈴木:ベンチャー企業の育成、IPO、上場後の支援までを視野にいれ、企業の成長ステージに合わせて、多角的に支援しています。また、日本のアントレプレナーを国際的なステージに輩出する起業家表彰制度「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」、雇用創出効果の高い企業を表彰する「Job Creation」といったイベントの開催に加えて、企業同士のマッチングや連携支援など、企業成長のためのプラットフォームを提供しています。森ビルさんとご一緒している「東京都インキュベーションHUB推進プロジェクト(HIP)」もその一つですね。

HIP:支援されているのはベンチャー企業のみですか?

鈴木:ベンチャー企業以外にも、大企業のオープンイノベーション推進を支援したり、国立大学を中心とする大学発ベンチャーキャピタルの設立や、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の立ち上げをお手伝いするなど、イノベーションを生み出していくためにベンチャー企業を取り巻く様々な関係者に対しても高品質なサービスを提供しています。

HIP:ベンチャー企業は、やはり東京を拠点としている会社が主な対象となるのでしょうか。

鈴木:いえ、東京だけではなく、全国各地のベンチャーも支援の対象です。地方ベンチャーを東京に呼んでマッチングイベントを開催することもありますね。世界で生き残っていけるベンチャー企業を創出するには、日本全国のベンチャー企業を支援していかないといけません。そうしたことも踏まえて、海外のアクセラレーターや起業家を呼んで講演してもらったりしています。

東京オリンピック以降の日本の将来を見据えて、今からイノベーションを起こしていくことが必要

HIP:先ほど「日本の将来を見据えて」というお話がありましたが、グローバルでの動きを踏まえ、日本はこれからどのような社会になっていくべきなのでしょうか?

鈴木:2030年以降の社会は、人工知能、IoT、ビッグデータといったテクノロジーが主流となり、人の暮らしが大きく変化すると考えています。そうした社会で重要な役割を持つことになるのが、ベンチャー企業です。アメリカでは、MicrosoftやAppleといったベンチャー企業が「フォーチュン500」(アメリカの経済誌『フォーチュン』が毎年発表する世界の企業番付)のトップにランクインしていますし、ランクインしている企業のうち、約4割は5年以内に入れ替わっているような状況です。イノベーションを起こした企業が新たにランクインしているんですね。一方、日本の企業は変わらぬままです。これから先、日本でもトップクラスの企業が入れ替わっていくような状況になっていかないといけません。

HIP:イノベーションを生み出し、グローバルに活躍できるベンチャー企業が生まれることが必要だ、と。

鈴木:そうです。ドイツでも、アメリカに対抗して第4の産業革命と呼ばれる「インダストリー4.0」という改革が進んでいます。IoTやデジタルファブリケーション、ビッグデータといった技術で工業をデジタル化することで、製造業を根本的に変えていこうという大きなプロジェクトです。

HIP:小泉進次郎氏も登壇された「HIP Conference vol.1」でも、「インダストリー4.0」について触れていました。

鈴木:ドイツに習って、日本でも第4次産業革命に取り組もうとしています。これは、2020年の先を見据えた動きです。東京オリンピック以降、経済が落ち込むのではないかと懸念する声もありますが、そうならないように今から日本の将来を見据えてイノベーションを起こしていく必要があります。そのために、私たちは将来の成長企業を設立のタイミングから支援しているんです。

監査法人だからこそできるベンチャー支援がある

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