スタートアップの悩み解決から始まったCVC。関係構築ノウハウを代表に聞く
三浦義昭(株式会社クレディセゾン 常務取締役 営業推進事業部長(兼)アフィニティ営業1部 担当 / 株式会社セゾン・ベンチャーズ 代表取締役社長)
2018.12.28

35年前にスタートアップだった私たちには、いまでも「挑戦」のマインドが根づいています。

HIP:「これからはオープンイノベーションだ」と、いきなり形式的にCVCを立ち上げるわけではなく、スタートアップの支援活動を一つひとつ積み上げているのが素晴らしいと感じました。CVC設立に対して、社長の理解が早いことにも驚きです。

三浦:それにはクレディセゾンの企業文化が影響しているかもしれませんね。私たちはクレジットカード会社としては後発だったので、他社とは異なる挑戦を続けて生き残ってきました。年会費が当たり前の時代に「年会費無料」を打ち出したり、当時カードを持つことが難しかった主婦の方にもクレジットカードを即時発行したり、世がクレジットカードの「サインを徹底しよう」とキャンペーンをしている時代に食品売場でサインを不要にしたりと、新しいモデルを打ち出してきたんです。

35年前にスタートアップだった私たちには、そのマインドがいまでも根づいています。社長は1990年代前半という早い段階から、「イノベーション」の大切さを語っている。ただ、時代が変われば社員も変わります。私が入社した当時の「ベンチャー企業のクレディセゾン」と比べれば、いまでは格段に部門が増え、意思決定も遅くなってしまっている。だからこそ、新しいチャレンジが求められていますし、外部のスタートアップから刺激をもらうことが何よりも重要だと考えています。

HIP:他社に先駆けて2015年の段階でCVCをつくったのも、そのチャレンジ精神が受け継がれていたからなんですね。三浦さん自身も、その課題意識からスタートアップ投資に関わるようになったのでしょうか。

三浦:じつは、そうでもないんです。私は2011年から、ネット戦略企画部というところでインターネット関連事業に関わっていたのですが、当時はいまほどスマートフォンも普及しておらず、スタートアップシーンが盛り上がっていたわけではありません。ただ、社内で声をかけられてピッチイベントなどに足を運ぶうちに「面白いことをやっている人たちがたくさんいるな」という好奇心が芽生え、それから徐々にスタートアップとの協業や投資に関心を持つようになりましたね。

さまざまな部署と協業の可能性を探るため、メンバーの所属は全員バラバラです。

HIP:冒頭、専任者が一人もいないとお聞きしましたが、セゾン・ベンチャーズのチーム運営はどのように行われているのでしょうか。

三浦:メンバー全員が集まるのは週に1度、2時間の会議だけ。そこで投資の意思決定を行います。それ以外の時間を使って、各々カンファレンスに参加して情報収集をしたり、投資先と打ち合わせを行ったりしていますね。会議では、メンバーが投資したい会社に関する資料を持参し、ときには候補のスタートアップの方にプレゼンしていただくこともあります。セゾン・ベンチャーズには取締役が5人いて、3人賛成すれば投資することにしています。

HIP:メンバーはどのようにして集まったのでしょうか。

三浦:セゾン・ベンチャーズ設立前から参加しているメンバーもいれば、設立後に手を挙げてくれたメンバーもいます。社内のさまざまな部署と協業の可能性を探るために、10人の部署は意図的にバラバラになるようにしているんですよ。担当者の本所属としては、経営企画部からキャッシュレス推進部門、顧客サービスの企画開発部門など非常に多岐に渡ります。

HIP:異なる部署のメンバーが集まっているからこそ、事業シナジーを検討しやすいわけですね。

三浦:そうですね。事業シナジーに重きを置いているので、フィンテック企業中心というわけではありません。フィンテックの領域にはむしろクレディセゾンが取り組むべきであり、その周辺領域の技術やインフラ開発、サービス・ソリューション提供を行っているスタートアップと、相互の事業成長を目指すことのほうが重要だと考えているからです。

クレディセゾンのベンチャーとの取り組み

「幅広い領域をカバーするCVC」というイメージをつけるため、最初はあえて金融と縁遠い会社に投資しました。

HIP:決済領域だけではなく、シェアリングサービスや指紋・音声認証、セキュリティーなどの多分野に投資している理由がよくわかりました。具体的にはどのようなシナジーが生まれていますか?

三浦:元塾講師の方が立ち上げた、学習塾の業務を効率化する「Comiru」というサービスがあります。アプリで保護者とやりとりができたり、写真をとるだけで生徒の通信簿がデータベース化できたりします。いま、クレディセゾンが学習塾にカード決済を提案する際に、ドアノックツールとして「Comiru」を使わせていただき、セットで導入いただけるように取り組んでいます。

塾の月謝の支払いは未だにカード決済が進んでおらず、封筒による手渡しや銀行振込が主流なので、弊社もその領域で業務を効率化すべくキャッシュレス化を推進しています。すでに私たち投資部門ではなく、営業部門が窓口となって「Comiru」の運営会社とやりとりをしながら協業しています。

HIP:クレディセゾンにはどうしてもクレジットカード会社というイメージがあるので、非フィンテックの領域をメインに投資しているというのは意外なお話でした。

三浦:じつはセゾン・ベンチャーズを設立して最初に投資したのは、音楽系スタートアップなんですよ。スマートフォンのイヤホンジャックに差し込むだけで、インターネットを通じて音楽や動画を共有できるデバイスを展開する会社でした。

HIP:いきなり非フィンテック系の企業に投資したんですね。

三浦:あえて本業とは縁遠い会社に投資しました。もちろん、事業シナジーがあるかどうかは検討しました。ECサイトで商品を購入する際に、そのデバイスを利用してカード決済ができるようにするサービスはどうだろうかと。ただ、iPhoneからイヤホンジャックがなくなってしまったので、その構想は結局かたちになりませんでしたが……。とはいえこのような投資戦略のおかげで、「セゾン・ベンチャーズは幅広い領域に投資するCVCだ」という認識を少しずつ持ってもらえるようになりました。

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三浦氏が経験から教える「CVC運営のポイント」とは?

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