スタートアップの悩み解決から始まったCVC。関係構築ノウハウを代表に聞く
三浦義昭(株式会社クレディセゾン 常務取締役 営業推進事業部長(兼)アフィニティ営業1部 担当 / 株式会社セゾン・ベンチャーズ 代表取締役社長)
2018.12.28

「オープンイノベーション」を標榜し、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を設立する大企業が、ここ数年で増えてきた印象がある。直接の利益より本業とのシナジー効果を狙って、ベンチャー企業へ投資を行うCVCだが、文化の異なる大企業とスタートアップが協働するコツはどこにあるのか? そもそも、大企業はどのようにCVCを運営するべきなのか?

まだ世に流通していない知恵を引き出すべく訪ねたのは、株式会社クレディセゾン常務取締役であり、CVCの株式会社セゾン・ベンチャーズ代表を務める三浦義昭氏だ。2015年のCVC設立以前から、いち早くスタートアップ投資や協業に取り組んできた三浦氏は、どのような壁にぶつかり、それを乗り越えてきたのか。クレディセゾンの歩みから、大企業とスタートアップの関係構築の技法を学ぶ。


取材・文:岡田弘太郎 写真:玉村敬太

最初のきっかけは、クレジットカード発行を通じたスタートアップ支援でした。

HIP編集部(以下、HIP):本日はセゾン・ベンチャーズを率いる三浦さんに、大企業のCVC運用のコツを伺いにきました。セゾン・ベンチャーズとクレディセゾン、2枚の名刺をお持ちなんですね。

三浦義昭(以下、三浦):セゾン・ベンチャーズの代表取締役社長と、クレディセゾンの常務取締役を兼任しているんです。クレディセゾンでは全国10支店を統括する営業推進事業部長という、スタートアップ企業とはまったく関わりのない仕事をしています。セゾン・ベンチャーズには専任の担当者は一人もおらず、所属している10人全員が兼務です。

三浦義昭氏

HIP:専任の担当者が一人もいないなかで数十社に投資しているんですね。三浦さんはどのような経緯でセゾン・ベンチャーズの代表就任に至ったのでしょうか。

三浦:クレディセゾンでは10年以上前から、ASEANを中心としたアジア地域での事業展開を視野に入れて、Eコマースを運営する現地のスタートアップとの協業の機会を伺っていました。そこでまずは、当時からアジア領域で投資を行っていたグリーベンチャーズやサイバーエージェント・ベンチャーズ、GMOベンチャーパートナーズなどのVCにLP(リミテッドパートナー。投資先の発掘や管理をVCに任せ、資金投資を行う)として参加し、積極的にネットワークを築こうと進めていました。現地ではEコマース市場が伸びており、私たちの強みである決済領域と相性が良かったのです。

HIP:きっかけは、海外スタートアップとの協業検討だったんですね。

三浦:VCと関係を築くなかで、国内スタートアップの話にもなりました。VCの方から「支援先のスタートアップがクレジットカードを持ちたくても、審査が通らない」と相談されたんです。事業が順調に伸びてきて、クラウドサーバーの費用を支払ったり、インターネット広告を打ったりするときに、法人カードがないから不便だという話も聞きました。限度額の小さい個人カードを複数枚、順繰りに使ってなんとか乗り切っているという社長もいるとのことでした。

クレディセゾンには、プライベートとビジネスのカード利用を分けて管理できる個人事業主や経営者向けのカードがあるので、それを発行したところ、非常に喜ばれました。

クレディセゾンからの出資が足かせになってはいけないと考え、協業に留めたこともあります。

HIP:最初の接点は事業提携や投資ではなく、スタートアップが抱える課題の解決だったんですね。

三浦:その後もスタートアップの方々と話をするうちに、彼らが取り組んでいる事業の面白さに気づきました。その頃から「投資先として国内スタートアップも紹介してくれないか」とVCの方に相談するようになったんです。同時期に経営層のなかでも「VCにLPとして参加するだけでなく、そろそろクレディセゾンが主体の業務提携や投資をするべきではないか」という議論がありました。

最初に業務提携したのは、2013年4月、スマートフォン決済サービス「Coiney」を提供する株式会社コイニーでした。クレディセゾンの加盟店で「Coiney」を使ったカード決済が行っていただけるようになり、その半年後には資本提携も行いました。同時期には、現物のクレジットカードのほかにネット専用のバーチャルカードをつくることができるサービスを提供する会社とも業務提携しています。

HIP:その会社には出資を行わなかったんですか?

三浦:行いませんでした。その会社にとっては当社に限らず、さまざまなクレジットカード会社と提携したほうが、事業が伸びると感じていたからです。クレディセゾンからの出資が足かせになってはいけないと考え、当時は協業に留めていたんですよ。

社長にCVC設立を相談したら、条件をつけられました。「VCに頼らず、すべて自分たちでやれ」と。

HIP:クレディセゾンとして業務提携や資本提携を進めるなかで、なぜCVCの設立に至ったのでしょうか。

三浦:シード期、アーリー期のスタートアップへの少額投資が増えていくなかで、株主への説明責任などからデューデリジェンス(投資対象の価値やリスクを調査すること)のために過剰なコストがかっていました。さらに、創業期で人手も足りないスタートアップに形式ばかりの「事業計画」を出してもらう必要が出てくるなど、相当の手間もありました。そこで、社長に「クレディセゾンではないハコとして、CVCをつくりたい」と提案したんです。

HIP:どんな反応が返ってきたんでしょう。

三浦:すんなり許可が出てしまったんです。ただ、条件を一つだけ突きつけられました。それは、すべて自分たちでやること。当初は他社の先行事例も踏まえてVCの協力を得ようと考えていたのですが、それはダメだと。なぜなら、失敗のノウハウが社内に蓄積されないから。当時は「なんて無茶なことを言うんだ」と思いましたね(笑)。

晴れてセゾン・ベンチャーズを立ち上げることとなって以降、シード、アーリー期のスタートアップにはCVCから、ミドル以降のスタートアップにはクレディセゾン本体から出資しています。いずれの場合でも動いているメンバーは一緒ですが、対外的にCVCと本体を使い分けているんです。

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幅広いスタートアップと事業シナジーを生むため、セゾン・ベンチャーズが行う工夫とは?

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