INTERVIEW
共創投資部とD2C&Co.の両輪でイノベーションを実現。丸井グループのCVC戦略
相田昭一(株式会社丸井グループ)/ 武藤夏子(株式会社丸井グループ)

INFORMATION

2023.08.24
取材・文:サナダユキタカ
写真:坂口愛弥

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時代の流れやコロナ禍による人々の価値観の変化によって、百貨店や商業施設など小売事業の在り方が変わり始めている。丸井グループでは2010年後半から直接消費者に販売する”D2C”ビジネスに注目。「モノを売らない店」を標榜し、リアル店舗を商品販売の場から、消費者とブランドをつなげる場へと考え方を転換させている。そうした流れの中で、社外からのイノベーション導入を図るべく「共創投資」に注力。共創投資部を立ち上げるとともにD2Cスタートアップへの投資を行うD2C&Co.を設立した。2023年8月時点で、両社合わせて投資規模は269億円であり、そのうちスタートアップに対しては53社、181億円を投資している。

CVCの当事者にインタビューする連載「Impact of CVC」の第2回では、丸井グループの取り組みにフォーカス。同社で共創投資に取り組む、相田昭一氏と武藤夏子氏に話をうかがった。

「共創投資」を通じて、スタートアップとのオープンイノベーションに挑む

HIP編集部
(以下、HIP)

丸井グループでは「共創投資」を掲げ、スタートアップ企業への投資や共創による外部とのイノベーションを推進しています。まず丸井グループ全体としての、CVC投資ならびに社外とのイノベーション創出の狙いについてお聞かせください。

相田昭一氏
(以下、相田)

丸井グループは、小売業と金融業が一体となったビジネスを展開してきました。1931年に創業した歴史のある企業ではありますが、今後さらに成長していくためには、従来のビジネスにとどまらず、新しい価値を生み出していかなくてはなりません。

もちろん、新規事業開発にもチャレンジしており、アニメ事業や証券事業といった成功事例もあるのですが、社内だけでは限界があると感じていました。というのも、新規事業コンクールを社内で開催し、社員が専任で挑戦しても、起案した本人が壁にぶつかって途中で苦しくなってしまうなど、グロースするのがなかなか難しいのです。

株式会社丸井グループ 常務執行役員 CDO、D2C&Co.株式会社 取締役の相田昭一氏
HIP

社内の人間だけだと、新規事業が成長しにくいという課題があった。そこで、社外のプレイヤーとの共創で、新規事業を加速させていきたいということでしょうか?

相田

そうですね。当社では未来投資といってますが、これまで取り組んできた社内からのイノベーションの創出をめざす「新規事業投資」のほかに、社外とのコラボレーションによるイノベーション導入を図る「共創投資」にも取り組んでいます。

HIP

スタートアップへの投資を担う「共創投資部」や「D2C&Co.」はどのような経緯で設立されたのでしょうか?

相田

もともと、スタートアップ投資を担当していたのは経営企画部だったのですが、2017年に中期経営計画でスタートアップに対して300億円の投資を発表し、共創投資部も設立しました。

それから徐々にスタートアップ投資が拡大していくなかで、領域に特化した投資組織をつくり、投資家を含めたあらゆる人々へその本気度を見せていくために、2020年にD2C&Co.を設立したのです。

武藤夏子氏
(以下、武藤)

というのも、ネットショッピングが拡大していくなかで、リアル店舗の考え方を変えていく必要が出てきました。売ることを目的とせず、オンラインとオフラインを融合したリアルならではの価値を追求するために「売らない店」への転換を進めているのです。

さらに、2017年頃からアメリカでD2Cが勢いを増していったタイミングで、私たちもその領域に注目。D2Cのエコシステムを日本でつくっていくため、スタートアップへの投資だけでなく、物流や販売面などのサポートまでトータルで行なうようになりました。それらを実現させる役割も、D2C&Co.は担っているのです。

株式会社丸井グループ 共創投資部、D2C&Co.株式会社 チーフリーダーの武藤夏子氏

「D2CといえばD2C&Co.」と呼ばれるのが目標

HIP

D2C&Co.を設立したときの反響はいかがでしたか?

相田

D2Cスタートアップに向けて投資を行い、「D2CといえばD2C&Co.」とイメージされるまでに成長していこうという目標を掲げていました。そのため、特にD2Cに関連するスタートアップには大きなインパクトがあったと思います。

HIP

D2Cスタートアップのために、あらゆるサポートを行なっていくと。

武藤

D2Cのスタートアップは、サプライチェーンや物流を整えたり、リアル店舗などにおいてお客様のエンゲージメントを高めたりする必要があります。「D2Cは総合格闘技」と言われるほど、マーケティングや販売、物流などさまざまな要素で構成されるビジネスです。そうした部分まで理解しながら投資をしていくのが、D2C&Co.のスタンスです。

相田

丸井グループで働いている社員は、入社するとまずは販売といった小売に関する業務に関わります。その経験を活かしながら、スタートアップを資金面だけでなく、あらゆる業務面でサポートできるのがD2C&Co.の強みですね。

こうした強みから、投資時点でスタートアップの価値の向上が見込める際は、丸井・D2C&Co.の社員を出向させています。

社名に掲げたD2Cの実例

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