チームの内の「助け合い」と「共感」が、個々人のモチベーションに大きく関わる
日立製作所では「Happiness Planet」を活用し、『働き方フェス』というオンラインイベントを企画している。2018年の2月に開催された回には、62社、117チーム、1,475人が参加。チームごとにそれぞれの「チャレンジ」を設定、協力してより高いハピネス度を目指し、最後にランキング上位が発表、表彰されるというイベントだ。
辻聡美:チーム全体の「チャレンジ」とは別に、メンバーはそれぞれ一日の個人目標を設定し、それを他のメンバーに共有します。普段は、今日どんな気持ちで仕事をしようとしているかを同僚に話すことって、ほとんどありませんよね。しかし、目標を可視化し共有することで「疲れていそうだから配慮しよう」「締切が近いみたいだから集中させてあげたい」など、チームのなかに助け合いと共感の気持ちが生まれ、チーム全体の「ハピネス度」も高まるんです。
安藤昌也氏(以下、安藤):「助け合い」の心が重要というお話には、私も大変共感します。私は近年、「人助け」の気持ちを喚起するデザイン「利他的UX」の研究を行っており、それをテーマに企業のオフィスコンセプト設計も手がけさせていただきました。
安藤:「なぜオフィスで働いているのか、チームで働いているのか」と考えると、それは人と人とのあいだに生まれる「利他性」が、個々人の仕事に対するモチベーションを保つ重要なポイントだからだと思うんです。しかし、他のメンバーの状態が見えなければ、利他性を発揮することは難しいですよね。
いまのオフィス環境は、各々パソコンに向かう作業が多く、評価も個人の出来次第という企業が増え、息苦しい環境に陥りやすい。個人の目標をチームで共有することが日常化すれば、オフィスにはさまざまな変化が生まれるのではないでしょうか。
「集中力」をチームで可視化し、効率化につなげる。「未来のメガネ」で叶える働き方改革
続いての第2部に登壇したのはKDDI株式会社の辻大志氏と株式会社ニコンの中川源洋氏。約30社の産業医を務める大室正志氏がモデレーターとなり、革新的なテクノロジーとともに、そこから生まれる新たな問題について語り合った。
KDDIの辻氏が手がけるのは、JINSが開発したメガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズ ミーム)」を使ったプロジェクト。視線の動きや瞬きから人の「集中力」を測定できる「JINS MEME」と、KDDIの通信技術を組み合わせ、リアルタイムでその結果を閲覧、チーム内でシェアすることで働き方改革に活かすというものだ。2018年4月から6月にはKDDI社内で実証実験が行われ、辻氏自身もオフィスでメガネをかけて過ごしたという。
辻大志氏(以下、辻大志):「JINS MEME」をかけ、集中力を測定していると、自分では気づかなかったことが見えてきます。私は夜に集中力を発揮しやすいタイプだと思っていたのですが、じつは朝のほうがより集中して仕事ができていることがわかりました。
辻大志:一般に、人が一日に集中していられる時間は4時間程度といわれています。それを可視化することで、その時間をいかに効率よく使うか、という考え方ができるようになる。私の場合は朝、集中して取り組み、集中力が低下する夜は早く帰るようになりました。
また、集中が一度途切れると、再び集中できるようになるまでに25分かかるともいわれています。リアルタイムで同僚の集中力が可視化できることで、相手が集中している時間はなるべくジャマをせず、集中していないときに話しかけようという配慮も可能になる。結果的に、自分も人も働きやすくなる、というのが、実際に使ってみての私の実感でした。