イノベーターの育成は可能か? ドラッカースクール前学長・山脇秀樹が語る、HIP Schoolで学べること
ドラッカースクール前学長 山脇秀樹
2015.07.29

この夏、HIPではイノベーションの核となる次世代のプレイヤーのための育成プログラム、『HIP school』をスタートする。新しい事業やビジネスを興して発展させるために必要な概念やビジネススキルを学ぶことができる講義とワークショップで構成される。

HIP schoolのオーガナイズと講義『デザイン思考と事業機会創出』を担当するのは、ドラッカースクール前学長の山脇秀樹氏。氏によれば、大企業における新規事業でも、スタートアップが立ち上げるビジネスにおいても、新しい事業やビジネスを興すためには「アントレプレナーシップ(企業家精神)」が不可欠だと言う。普段漠然と耳にする「アントレプレナーシップ」とはどのようなもので、なぜそれがイノベーションに不可欠なのか。そもそも、イノベーターを「育てる」ことは可能なのか? 山脇氏に聞いた。

取材・文:HIP編集部 写真:御厨慎一郎

欧米ではアントレプレナーシップがDNAとして根付いている

1950年、60年代の日本にはイノベーティブな人たちがいた。ホンダ、ソニー、パナソニック、東芝。当時から成長を続け、いまもなお世界で活躍する企業をつくりあげてきた人たちだ。彼らは創業時、失敗を恐れず、リスクテイクしていく情熱をもっていた。しかし、「最近の日本人たちは、リスクテイクの心が薄れてしまった」と山脇氏は感じているという。

山脇氏「起業家にとって、成功がどういった価値を生み出すかが重要です。再投資を可能にする経済的な利益はもちろん必要ですが、欧米では金銭以外の価値、たとえば社会への貢献、影響力や名誉、更には、未来を自ら作り上げる事の価値といったものを求めるイノベーターたちが多い。こうした情熱やハングリー精神は、最近の日本では薄れてしまっているように感じます。」

日本と欧米で、どのように差が生まれてしまったのか? 山脇氏はアメリカのドラッカースクールで教鞭をとってきたが、これまで教えてきた日本人について、このように話している。

山脇氏「日本からの留学生は、みな優秀で飲み込みが早い。そのため、習得した理論やフレームワークを応用するのはとても上手です。それに、ひとたび目的や方法が決まれば、手際よく段取りを進め、うまくチームマネジメントして成果を出すこともできる。一方で、新しいアイデアを出すのは苦手な傾向があります。枠組みやツールを使うことができない、暗中模索からブレーンストーミングするようなプロジェクトでは、初期段階での立ち遅れが目立ちます。」

一方、欧米ではどうなのだろうか?

山脇氏「欧米では、中学生の頃からアントレプレナーシップ(企業家精神)の本質を授業に取り入れています。子どもたちがゼロからプロジェクトを企画し、その企画を遂行するために資金を集める……。『教える』わけではなく、『体感する』機会が多いので、DNAとしてアントレプレナーシップが根付いているんです。」

イノベーションを起こすために必要な3つの要素

アントレプレナーシップをはじめに重視したのは、20世紀前半を代表する経済学者の一人、ヨーゼフ・シュンペーターだ。彼は、この精神を持つ人たち=アントレプレナーが、現在満たされていないニーズを発見し、それを満たす方法を提示し、経済に対してイノベーションを起こしていくと定義している。日本の経済にイノベーションを起こすためにも、この精神は不可欠となる。では、そのようなアントレプレナーシップを持ち、イノベーションを起こしていくためには、どういったマインドセットが必要なのだろうか。

山脇氏「イノベーションを起こす人に必要な要素は、『ビジョン』『情熱』『実行力』の3つです。『ビジョン』は、将来を見る目のこと。政治的、経済的、文化的な様々な視点から、世界情勢、企業、社会、そして自分がどのように変化しているのか、自分なりの視点を持つことが求められます。そして、『情熱』。イノベーションを起こすためには、失敗を恐れずリスクをとりながら活動することが必須です。これは、確固たる信念や情熱がないとできないことです。最後に、『実行力』。頭で思い描くだけではなく、実行していかなければイノベーションは生まれません。」

実際に、山脇氏の教え子の中で、特に成長したと感じる人には共通する点があるのだろうか?

山脇氏「過去に、イノベーターとして成長した人たちを見ていると、共通している点がいくつかあります。まず、色々な経験を通じて、新たに自己を再発見した人。そして、これまで安住していた環境や産業、企業の限界を再認識し、その境界を越えようした人。最後に、グローバリゼーションの本質でもある、多様性を理解した人。この3点です。これらに共通しているのは、自分の枠にとらわれないで、一歩踏み出す努力をしていたこと。イノベーションを生み出すためには、既存の枠組みを越えた発想を持ち、自己や産業の限界を知ることが重要です。そのためには、今働いている職場を離れて、普段とは違う環境へ出て行くことが求められます。」

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