INTERVIEW
中止を諦めきれず、新規事業で二度も復活。富士ゼロックス技術者の転換点とは
江草尚之(富士ゼロックス株式会社 開発企画管理部)

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2018.09.28

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人脈が広がることで、MOEの違った可能性が見え、自分だけの活動ではなくなっていく

HIP:江草さんは長い間VHPを活用してプロジェクトを行っていますが、そもそも富士ゼロックスにこのような文化が根づいているのにはどのような背景があるのでしょうか。

江草:もちろん事務局の社員の努力もありますが、富士ゼロックスはプリンタービジネス以外の大きな柱がありません。今後この業界が厳しくなっていくことが予想されているなかで、新規事業の立ち上げが急務になっています。社員のなかにも「どうにかしなければ」という機運が高まっているので、VHPも盛り上がっているのだと思います。

HIP:VHPという制度の、どのような点にメリットを感じていますか?

江草:いちばんのメリットは、会社や部門の垣根を超えて、エネルギッシュな人脈が広がること。VHPに集まる人には、とにかく熱い想いを持った人が多いのです。やりたい仕事をしている人と、やらされ仕事をしている人とでは、スピード感も得られる成果もまったく違うなと感じます。

VHPには参加者同士の催しや集まりもあるのですが、そこでMOEの話をして興味を持ってくれた人とはまず飲みに行きますね(笑)。そうして仲間になってくれる人のなかには、私が主導するプロジェクトに協力してくれるばかりでなく、自らが主体となって、MOEを活用した別のVHPプロジェクトを立ち上げてくれる人もいます。

たとえばMOEでプリントしたオリジナルの布生地でグッズをつくるプロジェクトや、宮崎県の椎葉村という地域でMOEを使ったオリジナルグッズを活用して村おこしをするプロジェクトなど……。人脈が広がることでMOEの違った可能性が見えてくるし、自分だけの活動ではなくなっていくのが嬉しいですね。

プロジェクトリーダーとして全体を見ることで、技術者としてすべきことがわかる。

HIP:まさに、エネルギッシュな人が集まるからこその広がりですね。

江草:あとは、交通費以外の活動費は自分で調達しなければならない代わりに、ノルマや期限がないのもVHPのいいところですね。何度失敗してもチャレンジできるから、うまくいかないときにもマイナス思考になることなく、「じゃあ次はどう動こう?」とポジティブに考えることができます。

そもそも私は研究開発部門の人間なので、VHPがなかったら、プロジェクトを推進する立場になること自体ができません。しかもVHPは役員直轄のプラットフォームなので、上司の認可も得やすく、だからこそ本来業務外のことでありながらも積極的に活動できます。自分で開発したものを自分で営業し、事業化まで携わる技術者は、日本国内を探してもきっと多くはないはず。幸せな経験をさせてもらっているなと感じています。

プロジェクトリーダーとして全体を見ることで、事業化を見据えたうえでの、技術面の課題がわかります。ビジネスモデルによって、やらなければならない技術開発も変わるんです。言われたことだけをやるのではなく、プロジェクト全体に視野を広げることが大切だと感じますね。

MOEでプリントされたものの数々

特殊なものに印刷したいニーズは必ずある。そのために「すべてのものに印刷できる」MOEを磨いていく。

HIP:江草さんは、2005年にVHP活動を始めてから10年以上、MOEプリントに関わっていらっしゃいますね。ひとつのプロジェクトにこれほど長く情熱を注ぎ続けることができているのはなぜなのでしょうか。

江草:プラスチック用の「第1のMOE」から始まって、「第2のMOE」でようやく数種頼の素材に印刷できるようになりました。しかし、「Marks on Everything」と呼ぶにはまだ遠い。そういう意味で道半ばなので、やめるわけにはいきません。

「第2のMOE」は画像を光沢のある素材で保護するしくみなので、どうしても表面にはツヤが出てしまっていました。でも「第3のMOE」は、保護膜の素材が違うので、光沢度がコントロールできます。また伸縮性があるので、洗濯しても大丈夫。凹凸面へのプリントもできて、もちろん、素材のバリエーションも広がります。「第3のMOE」が商品化できたら、心から「MOEの技術者だ」と胸を張れると思っています。

イラストレーター・オザキイサムさんとMOEのコラボグッズ

HIP:すると、「第3のMOE」の商品化が現在の目標でしょうか。

江草:そうですね、個人的にはそれで頭がいっぱいです。実現できたら、かなり世界が変わると思いますよ。特殊なものに印刷したいというニーズは必ずあります。そのためにはまず、第2のMOEの売上向上から。定年まであと数年ですが、あわよくばその後も「Marks on Everything」の実現に向けて活動を続けたいと思っています。

Profile

プロフィール

江草尚之(富士ゼロックス株式会社 開発企画管理部)

1997年富士ゼロックス入社。技術開発センター、画形材研究開発部勤務を経て、2018年8月より現職。

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