堅そうな金融のイメージを服装が変える。上層部が私服OKした理由
HIP:証券会社の社員はスーツ着用が一般的ですが、FintertechではTシャツ、ジーンズ着用を奨励しているとお聞きしました。
川浪:新たな試みに取り組むベンチャーとしてFintertechを設立する際に、「私服出勤」というルールは自然と決まっていました。いままで毎日スーツで出勤していて、急に私服になったこともあり、ほかの社員からするとギャップがありすぎるみたいです。ときには気づかれないこともありますよ(笑)。
HIP:あえてルール化するというのも面白いですね。
宮本:役員がシリコンバレーに行った際、私服で働く自由な雰囲気が印象的だったようで、それが新会社にも反映されているのだと思います。
川浪:やはり若い人向けのサービスをつくっていく以上、これまでのガチガチに堅そうな金融のイメージは変えていかなければいけない。そんな意識も少なからずあったと思いますね。
HIP:私服で出勤するようになって変わったことはありますか。
相原:最初はスーツを着ないと仕事モードにならないかなと思ったのですが、すぐに慣れましたね。なにかを新しく考えたり、ディスカッションしたりする際は、カジュアルな格好のほうがリラックスした状態で物事を考えられるので、柔軟なアイデアが出る気がしますね。
宮本:これまではどんな場面でも無難にスーツを着ておけばOKだったのですが、選択肢が広がったことで商談内容や会議の雰囲気に合わせて服を選ぶようになりました。その日にお会いする方や、お伺いする企業のことをいままで以上に考えて行動する機会が自然と増えましたね。
年功序列の撤廃など新たな働き方を試し、大和証券グループに還元する
HIP:服装以外に、なにか大きく変わったことはありますか?
相原:クラウドサービスを全面的に採用するなど、新しいITツールをどんどん試しています。たとえば、大和証券のように大きな組織で試そうとすると、少しの検討漏れが大きなリスクやコストにつながってしまうため、どうしてもシステム導入は慎重に進めざるを得ません。
もちろん、Fintertechでもセキュリティーなどの必要な検討はしていますが、人数も、保持している情報も、少ないのでやはり身軽です。「出島」である利点を活かして、たくさんのツールを試しています。
宮本:仕事をしやすい最適なツールを探るなかでも、「これは使いづらいからやめよう」というのも、遠慮なく言い合える雰囲気なんです。
Fintertechには、若手だけでなく財務やコンプライアンス関連の職種などで、経験豊富なベテラン勢もアサインされています。しかし、年齢や役職に関係なくフラットに意見を出しあえるのも、カジュアルな私服の効果が影響しているかもしれません。
川浪:たしかに、肩肘張らない雰囲気なので、世代間のハードルも下げているように思います。新たな働き方はもちろん、次世代に向けたサービスを考えるうえでも、とくに若い世代の意見は貴重ですから。
立場に関係なくいろんな意見が飛び交う環境をつくらなければ、新しい発想は生まれてこないと思っているので、今後もそうした環境づくりは大事にしていきたいですね。
HIP:逆に新会社に移ったことで不便を感じることはありますか。
相原:設立して間もないので、総務的な仕事も含め、すべての仕事を自分たちでやる必要があります。そこはこれまでと違って大変ですね。とはいえ、いまは不便に感じる点も、改善していけば新会社なりの働きやすさをさらに見出せる可能性があると思うので、それをいま模索しているところです。
川浪:われわれが先陣をきって新しい働き方を「試す」というのも、大和証券グループ内の「出島」として担うべき使命の一つだと考えています。
ダメならダメで学びがありますし、そのなかで使えるノウハウ、小規模な組織で回すのにちょうどいい仕組みをつくりたい。テンプレートになるようなものを私たちがどんどんつくっていって還元していきたいですね。
10年後の大和証券グループの柱になりたい
HIP:最後に、Fintertechのこれからの展望を教えていただけますか?
川浪:証券会社は「金融システムを使って社会や経済を発展させる」ことがミッションですが、私たちはそこに「多様性」を投入していきたいと思っています。
デジタル化の進展でこれまで以上に価値観の多様性が増し、相対的に、お金ではないさまざまなモノが重要視されつつあると感じています。
たとえば人々の共感とか、応援とか、社会貢献もそうですね。金融ノウハウとテクノロジーを新たな領域にぶつけることで、こうした多様な価値観を支え合い、継続的に発展させられるような、そんな世の中を実現できれば理想的ですね。
相原:「次世代金融サービスの創出」というコンセプトがベースにあるので、デジタルネイティブ世代に向けた施策を考えています。大和証券グループの既存の組織体ではできない金融サービスを手掛けていきたいです。
あと、これは会社設立時に上層部から言われたことでもありますが、10年後の大和証券グループの柱になるような事業を目指しています。
フィンテックが加速し、金融業界全体が大きな転換点を迎えているなかで、いかにいままで誰もタッチできていなかった領域に挑戦していくかが重要だと考えています。
私たちが新たな金融サービスを構築して普及させる、その一翼を担える可能性、ポテンシャルはあると思っています。そして、Fintertechを皮切りに、大和証券グループ全体での新たな取り組みもさらに促進させて、従来のイメージを一新する革新的なグループ企業へと成長できたらいいなと思います。