INTERVIEW
堅実な証券会社のイメチェン。大和証券グループのジーンズ着用ベンチャーとは
相原一也 / 川浪創 / 宮本亜也加(Fintertech株式会社 ストラテジーグループ)

INFORMATION

2018.11.20

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近年、スマートフォンをはじめとするデジタルデバイスが急速に普及しており、デジタルネイティブ世代に向けた施策が多くの業界で急務になってきている。

こうした時代の流れを察知し、大和証券グループ本社は100%出資のベンチャー、Fintertech株式会社を設立した。同社は、デジタルネイティブ世代に向けて、ブロックチェーンをはじめとする最先端のテクノロジーを活用した「次世代金融サービスの創出」をミッションに掲げている。

また、私服出勤が許されたり、これまでのキャリアや役職を問わず若い世代の声を積極的に吸い上げたりと、堅実なイメージを重んじる業界の常識を覆す試みを率先しているのも特徴だ。

このようなベンチャー企業が生まれた背景には、もともと社内有志による部署横断の活動が母体になっていたという。既存の組織体では成し得なかった、新たな価値創造を模索するFintertechの思いや目標を、第一期メンバー3名に聞いた。


取材・文:榎並紀行(やじろべえ) 写真:玉村敬太

グループ会社の垣根を越えた交流が発端となり、新会社設立へ

HIP編集部(以下、HIP):まずは簡単にFintertechの活動内容について教えてください。

相原一也(以下、相原):その名の通り、フィンテックによる新たな金融サービスの構築と普及のために立ち上げた新会社です。証券会社の個人向けビジネスのお客さまは、60歳以上の方の割合が多いのですが、われわれは、いわゆるデジタルネイティブと呼ばれる若い世代をターゲットにしています。

始まったばかりの会社なので、具体的な展開についてはまだ準備段階ですが、金融とテクノロジーを掛け合わせ、いまの大和証券グループとは異なる新たな事業を手がけていくことを考えています。

Fintertech株式会社 ストラテジーグループ 相原一也氏

HIP:Fintertechは社内有志による部署横断の活動が母体となって発足に至ったそうですね。きっかけはなんだったのでしょうか。

川浪創(以下、川浪):大和証券グループの社員のなかでも、最初に仮想通貨を手に入れたのはおそらくぼくだと言えるくらい、いち早くフィンテックに注目して、なにか仕事に活かせないかと考えていたんです。

ただ、もともとは株のトレーダーをやってきた人間なので、フィンテックに関する専門的な知識は乏しかった。だからこそ、社内で詳しい人間を探していました。それで、出会ったのが相原。飲みに行ったらフィンテックの話ですごく盛り上がって。

Fintertech株式会社 ストラテジーグループ 川浪創氏

相原:川浪とは同い年ということもあり、すぐに意気投合しましたね。私は大和総研の研究開発部門でフィンテックを担当していました。なので、いつかフィンテック関連の事業としてなにか一緒にできたらいいねと。

川浪: そんななかで、会社のオフィシャルな動きとして、相原を中心にミャンマーの証券取引所システムをブロックチェーン化する実証実験を推進したり、先進的な技術やサービスの活用について、グループ会社横断で検討する「金融イノベーション連絡会」が立ち上がったりしました。

ぼくのフィンテックへの想いを知っていた上司の推薦もあって、「金融イノベーション連絡会」に携わることになったんです。ここでようやく自分も会社のなかでフィンテックに関わることができるようになりました。

「新たなビジネスの種」を自発的に社内へ発信していった

HIP:そこからどのようにしてFintertech設立に至ったのでしょうか。

相原:「金融イノベーション連絡会」は5つの分会で構成されているですが、そのなかの1つの分会である「ブロックチェーン分会」に川浪と私は入っていました。それが、いまのFintertechの母体になります。

「ブロックチェーン分会」は名前の通り、主にブロックチェーンなどの最新テクノロジーの調査や研究を通じてその活用を模索することが目的。ブロックチェーンや仮想通貨に関心のあるさまざまな部署から集まった社員たちで、頻繁に集まって活動していました。

ブロックチェーンは、システム化が進んでいない領域や、業界構造の変革を伴うような領域に適した技術といわれています。ですので、その適用先の検討は結果として新規事業開発に近くなっていたと思います。すぐに事業化、とはさすがにいかなかったのですが、そこで生まれた新たなビジネスの種みたいなものはどんどん社内外へ発信していきましたね。

一方で、経営層はイノベーションをさらに促進するために新組織の設立も視野に検討をしていたようで、「このブロックチェーン分会を母体にして、新会社をつくったらいいんじゃないか」と。それで、2018年4月にFintertechが100%出資の子会社として設立されました。

川浪:本業があるなか活動していたので、周囲からは「部活」といわれることもありました。しかし、子会社の設立につながったことで、精力的に取り組んできたことが実を結んだんだと実感し、非常に嬉しかったですね。

HIP:宮本さんが正式に加わったのは、Fintertechが設立されてからでしょうか。

宮本亜也加(以下、宮本):そうですね。私は、もともと大和証券グループ本社の経営企画部にいて、「金融イノベーション連絡会」の事務局を担当していました。

先ほどの相原の話を補足すると、経営サイドとしても、既存の枠組みのなかでスピード感をもって新しいことを進めるのは、ハードルが高いと感じていたんです。出資先のWiLからも、治外法権的に動ける、いわば「出島(鎖国時代、唯一の貿易地であった長崎につくられた人工島)」のような新組織をつくったら機動性が高まるのではないか、とアドバイスを受けていました。

そんななか、「ブロックチェーン分会」の取り組みとタイミングが合致したため、Fintertechとして独立させてみては、となったんです。設立にあたって、私もFintertechにアサインされることになり、いまに至ります。

Fintertech株式会社 ストラテジーグループ 宮本亜也加氏

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