元Facebook Japanカントリーグロースマネージャー・児玉太郎が語る、日本企業がイノベーションを起こすために必要なこと
児玉 太郎
2015.06.26

今や国内2400万人のユーザーを誇るFacebookだが、2010年頃は100万人にも満たなかったという。たった数年の間で、私たちの生活や人とのつながり方まで変えてしまったこのサービスの日本での普及を陰で支えた立役者が、児玉太郎だ。2014年にFacebookを離れた後も、多くのスタートアップから支持を集めるビジネスパーソンであり、当プロジェクト「HIP」の名づけ親でもある彼は、どうやら仕事を楽しむ達人のよう。彼の仕事哲学は、働く意識とこれからの未来をドラマティックに変えそうなヒントに満ちていた。

取材・文:HIP編集部   撮影:福岡秀敏

Facebook Japanが始動。「何から始めたらいいのかわからなかった」

HIP編集部(以下、HIP):はじめに、児玉さんがFacebookに関わるまでのいきさつを伺えますか?

児玉太郎(以下、児玉):僕はもともとヤフーの社員だったんです。アメリカから帰国して引越のバイトをしていたところ、たまたまヤフーに拾ってもらったのが1999年。その後10年間働いていました。今や大企業と呼ばれるヤフーですが、入社当時は社員数100名ほどのいわゆるベンチャー企業。オフィスも中規模ビルのワンフロアでした。

HIP:ヤフーの成長と共に歩み、在職中にFacebookと出会ったわけですね。

児玉:はい。Facebookに興味を持つようになって、彼らの戦略や取り組み方がいかにすごいかをあちこちの部署に顔を出して語っていったんですよ。経営会議にも首を突っ込んで、Facebookの広告への取り組み方について解説したりしていました。ヤフー時代の最後の2年間は、Facebookの話しかしていなかったと思う。何と言うか、もはやヤフー社内のFacebook社員(笑)。そんな調子だったから、本国のFacebookチームが日本へやってきた時に、「うちの会社にFacebookオタクがいるよ」と話題になり、そこで初めて彼らと僕が「接続」されたというわけです。

HIP:その後すぐに、Facebook日本法人の設立に関わったのですか?

児玉:いえ、出会ってから最初の1年間は、アメリカにいる彼らとさまざまな情報交換をしていました。でも、次第に「これは一緒に働いているのと同じじゃないか」という状況になってきて、2009年にサンフランシスコに行ってマークや幹部メンバーと話をして、正式にFacebookに加わり、日本でのビジネス展開を担当することになりました。

HIP:いよいよFacebook Japanの立ち上げですね。

児玉:ただ、当時Facebookは日本でまだまだ知られていなかったし、メディアで取り上げられはしても、評価は低かったんです。そのうえ、国内にはすでにmixiやTwitterがありましたし……。ビジネス展開を任されたとはいっても、正直、何から始めればいいのかわかりませんでした。そこでまず、「大人に相談しよう」と思い立ったんです。大人たちの知恵を借りてみよう、と。

HIP:その、「大人たち」とは?

児玉:大企業の重要なポジションにいる方々。例えば、テレビ局や広告代理店、モバイルキャリアといった、本当に大きな組織を動かしている方々です。たとえ面識のない方であっても、誰かに紹介してもらったりして、直接会って話を聞いてもらうチャンスを求めました。僕は当時33歳で、自分と同世代の知人に相談したこともありましたが、今ひとつピンとくる答えに巡り合えなかった。「検索エンジンに引っかかるように工夫する」、「いいPR会社を探す」というような答えは至極真っ当な意見ですが、ワイルドさに欠けていたんです。僕は、100が200になる手がかりではなく、100が1000になるアイデアが欲しかったんですよね。だから、「これはもう、大企業の先輩方にFacebookのファンになっていただくしかない!」という結論に至ったんです。

国内普及のキーポイントは、トップダウン式。

HIP:大企業の大人たちにFacebookのファンになってもらう作戦は、どのように展開していくのでしょう?

児玉:初めは提案書も何も持たずに、「どうやって進めていけばいいのか、意見を伺いたい」と持ち掛けました。そうしているうちに、手応えが出始めた。原宿にある、ごく普通のマンションの一室にある僕らのオフィスに、数千人規模の大企業で重役を務めている方々が来てくださるようになったんです。車寄せもなく、靴も脱いでいただかなければならず、話をする場所もさっきまで僕らがカップラーメンを食べていたテーブルで(笑)。それにも関わらず、名だたる企業の重役の方々が話を聞きにいらしてくださっている。

HIP:諸先輩方をひきつける何かが児玉さんにはあるんでしょうね。

児玉:それはわからないですけど、Facebook自体に可能性を感じてもらえていたんだと思います。実際にそこからさまざまな取り組みが生まれていきました。僕らがタッグを組んだ相手は、何千万人の顧客を抱えている大企業の方々ばかりだったので、データの上でも目に見えてユーザーが増えていくのを実感することができましたね。

HIP:具体的に、どんな企業とタッグを組んだのですか?

児玉:まず初めに、リクルートさんです。新卒や転職などといった就職活動をサポートするツールとしてFacebookを導入してくださいました。さらにその後、電通さんにご支援いただいて、ユニクロさんやローソンさんを始めとする日本を代表する企業がFacebookを新しいマーケティングツールとして活用するキャンペーンを仕掛けていただきました。そのほか、KDDIさんやソフトバンクさんは、これからブレイクするアプリとして、テレビコマーシャルなどでどんどんアピールしてくださったり、端末にプリインストールしていただくことができました。先進的なイメージを発信することがメリットだと考えていただけたようです。また、古巣のヤフーにも協力を得ることができ、Yahoo! JAPANのトップページにFacebookのニュースフィードが表示される仕組みを開発していただきました。こういった取り組みの多くが、トップダウン方式で決まっていったという点は、とても特徴的だと思っています。

HIP:そこまで着実な成果を上げることができた理由は? 何が効果的だったと考えていますか?

児玉:そもそも、Facebook自体が特定のカラーを持たない、あらゆる人に利用してもらえるプラットフォームだったということがラッキーでした。言うなれば、ユーザーを選ばないインターネットそのもののようなイメージですね。

HIP:インターネットそのものとは、どういうことでしょうか。

児玉:Facebookは「世界的規模で、世界にとって“いいこと”をやろう」、「一人残らず繋がる世界にしよう」というビジョンから出発した企業で、今もその理念は変わっていません。全世界のユーザー数が14億人に達した現在であっても、「世界の人口は70億人いるんだから、残っている50億人をどう獲得するか」を議論し、「残りの50億人の多くはインターネット接続の仕組みすら持っていない人々だ」という話になれば、その50億人にネット環境を提供する仕組みを本気で考え始めるんです。そのスケールの大きさと、本社が抱えている有能な人材をもって取り組んだら、本当にどうにかなりそうと予感させる何かがある。その点が、多くの方々に魅力として捉えていただけたのではないかと感じています。

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