INTERVIEW
元Facebook Japanカントリーグロースマネージャー・児玉太郎が語る、日本企業がイノベーションを起こすために必要なこと
児玉 太郎

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2015.06.26

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「大先輩とお話するのが、好きなんです」

HIP:大胆不敵とも思えるアタック方法の裏には、何かこれまでの経験が影響しているのでしょうか?

児玉:僕は大先輩とお話するのが好きなんです。ヤフー時代にも、よく社長室に立ち寄っては、当時の井上雅博社長に何かと話し掛けていましたし。

HIP:またも大胆不敵なエピソードですね(笑)。

児玉:ヤフーに入って、とにかく会社が楽しくて、仕事をするのも楽しかったんですよね。ヤフーには「サーファー」と呼ばれる職がありました。サーファーというのは、より多くのアクセス数を獲得するために、常にネットサーフィンをしながらインターネット上で新しいホームページを見つけ、一つひとつYahoo! JAPANのサイト上のカテゴリーに分類していく人たちなんです。

HIP:そういった作業を人の手で行っていたのは、今ではなかなか想像できないですね。

児玉:そうなんです。今はもうない、ネット黎明期ならではのプロセスですよね。僕はアメリカで暮らしている間にインターネットにとても親しんでいたので、「そんな楽しそうな仕事があるんだ」とヤフーに応募しました。結局、サーファー部ではなく、プロデューサー部に拾ってもらったのですが。本当に拾ってもらったという言葉がぴったりで、一番下のアシスタントからの出発となりました。でも、そこで幸いなことに活躍が出来たのは、純粋に、毎日が楽しかったという一言に尽きます。当時の生活にはオンとオフの切り替えもなくて、夜になって飲みに出掛けても、家に帰らずに会社に戻ってきちゃうんです。半ばオフィスに住みついているような状態で、風呂は銭湯に通うといった具合でしたね。それで井上社長に、「家賃を請求するぞ」と注意されたり(笑)。それほどまでに、ヤフーという会社と、取り組んでいる仕事に惹きつけられていました。

「余力がなくても常に『YES』と答えるようにしていました」

HIP:まさに、仕事一色の生活だったんですね。

児玉:何しろ、ワーク・ライフ・バランスという言葉も生まれていない頃だったわけで、僕だけじゃなく同僚のみんなもまた、そんなふうに仕事に取り組んでいたような気がします。社内で夜中にディスカッションが始まり、「じゃあこうしてやってみようよ」と話が白熱して、そのままプランを立て始めることもしばしば。23時に思いついたアイデアが、翌朝6時には実際に動きだしているとか(笑)。

HIP:そこまで熱中できたのは、なぜだったのでしょうか?

児玉:その頃は大規模なネットサービスを運営している企業がほとんどなかったので、自分たちがすごいことをやっているという気持ちがあって、そのやりがいと充実感がみんなを動かすエネルギーになっていました。社内全体がとにかくバイタリティに溢れていたので、面白くて仕方がなかったんです。でも、組織が大きくなっていくにつれて規則も厳しくなっていくわけで、みんなでオフィスに長居することも難しくなっていきました。そんな移り変わりの中にあっても、なぜか僕はかつてのバイタリティを一切失わなかった。そういうところがあったせいで、スタッフの数が数千人規模へと増え続ける中でも、珍しい存在で居続けられたんだと思います。

HIP:キャラクターが立った、名物社員になっていくというわけですね。

児玉:新しいプロジェクトが立ち上がる際に、「太郎を呼べ」と声をかけてくれることがあります。そういう時、たとえ余力がなくても常に「YES」と答えるようにしていました。そうしていくうちに、様々な新規プロジェクトに関われるようになっていました。もちろん同時に、様々なトラブルにも直面するんですが(笑)。そんな日々の中で、何かに挑戦したり、面白がったりするバイタリティってすごいものなんだと学びました。むしろ、そういったバイタリティがない人がいることを理解できなかったくらいです。今思えば、後輩に対してずいぶん無理難題を言う、ダメな先輩だったと思います。

HIP:児玉さんとお話ししていると、とても面倒見がいい先輩のようですが。

児玉:新卒採用が始まった時は、人一倍嬉しかったのを覚えています。ヤフーに入社した時は僕が最年少で大人の中にいるという感覚でしたから、同じ年頃のスタッフが入ってくることに、ワクワクしていました。そんな気持ちも手伝って、新入社員の研修が始まれば、仕事そっちのけで覗きに行ってみたり、邪魔をしてみたり。そんなことをやっているうちに、人事担当の方も、「うるさい児玉君が来ましたので、児玉君の話を聞いてみましょうか」なんてことになる(笑)。そして僕は小一時間話をさせてもらったりする……。それくらい自由に、社内のいろんなところに出没していました。

「みんなもっと、大先輩と仲良くなってみたらいいと思う」

HIP:児玉さんのみなさんから愛されるキャラクターは、底知れぬバイタリティによって作られているんでしょうね。

児玉:バイタリティに溢れていると、怖いもの知らずなんですよね。社長室のドアが閉まっているなんて関係ない。いつもふらっと役員フロアに行っては、秘書たちに話しかけたり、置いてあるお菓子を食べたり……ずっとちょっかいを出していましたから。今思えば、相手をしてくれていた秘書たちにとっては、かなり鬱陶しい奴だったでしょうね(笑)。毎日そんなことばかりしているから、社長に「お前はここで一体何をしているんだ」「ここで何をサボっているんだ」なんて叱られたりもするけれど、叱られながら一緒に社長室に入ってしまったり。で、社長室に飾ってあるものを触ったりしながら何気ない話をしているうちに、話題は自然と仕事のことになっていたりする。時には、「今こういう問題が起こっているんです」なんてこともポロッと口に出してしまって、結果的に社長に直接相談できていたり。

HIP:根回し上手ですね。

児玉:根回ししていたという意識はなく、あくまで目上の大先輩との会話が楽しかっただけなんです(笑)。でも、そういったやり取りを通して、社長に現場の生の声をインプットすることができていたんだなと思います。日本では、上のポジションの方々と会話することをとても恐れ多いことのように捉えがちですが、思い切って飛び込んでみるのも悪くない。みんな、もっと大先輩たちと仲良くなってみたらいいと思う。きっと、上層部からの報告を受けるばかりだから、現場の声に面白がって耳を傾けてくれると思うんです。

アメリカと日本の企業の違いから考える、イノベーティブな日本の未来に必要なこと

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