落合陽一、竹中平蔵、松本理寿輝らが語る未来の東京『HIP Conference vol.7』
落合陽一(メディアアーティスト)
2017.08.21

保育園は子育て世代のネットワークのハブとなり、地域交流の拠点になっていける。

「リアルなコミュニティーが変える未来の都市」をテーマに行われたセッションII。登壇したのはカフェや本屋を併設した保育園運営が注目を浴びているナチュラルスマイルジャパン株式会社代表取締役の松本理寿輝氏。聞き手は、住民参加型のシティーマネジメントに多く関わる建築家、藤村龍至氏が務めた。

松本氏が運営するのは、東京都内4か所に開設された「まちの保育園・こども園」だ。「まちの」という言葉には、2つの意味が込められている。1つは、「まちの資源を子どもたちの学びに活かしていこう」というもの。地域の高齢者に日常的に交流してもらうことはもちろん、絵に興味を持っている子どもにはアーティストと交流してもらうなど、興味関心に沿ったつながりを生み出すことにも積極的に取り組む。

「まちの保育園 小竹向原」©︎Satoshi Shigeta@Nacasa & Partners Inc.
「まちの保育園 小竹向原」の園庭©︎Satoshi Shigeta@Nacasa & Partners Inc.

2つ目は「保育園をまちづくりの拠点にする」という考えだ。毎日のように若い世代のお父さんやお母さんが通ってくる保育園は、若者世代のハブとなる機能を本来的に持っている。そのコミュニティーを育み、町内会などの高齢者世代と連携をしていくことで、保育園は子・親・祖父母の全世代が関わる、地域交流の拠点になる。松本氏は、東京で保育園の運営を行っているなかで、コミュニティーの拠点としての可能性をますます感じているという。

松本理寿輝氏(以下、松本):若い世代も、地域に関わりたくないと思っているわけではありません。特に子育て世帯はおじいちゃま、おばあちゃまと子どもが出会い、交流する体験は大事だと思っているのです。一方で、町内会の方々も「どうしたら若い人たちに地域に参加してもらえるだろう」と悩んでいます。保育園がその橋渡し役として機能できることを、園を運営するにつれて実感しています。

松本理寿輝氏

コミュニティーづくりに重要なのは、効率性よりも「マメさ」

昨今、「地域住民の反対で保育園を開設できなかった」といったニュースを聞くことも少なくない。そんななか、松本氏は2011年の「まちの保育園 小竹向原」開園以降、「こども主体のまちぐるみの保育」という同じコンセプトで、3園の開園をしてきた。「まちの保育園」はどのように地域の人と建設的な関係を築いているのだろうか。松本氏は「まちのカラーに合わせたコミュニティーの育成が重要」だと考えている。

松本:たとえば、吉祥寺駅のある武蔵野市は商店の方々の結束が強く、地域に対して何か貢献をしたい、繋がりを作っていきたいという想いの方が比較的多い。だとすれば、このようなコミュニティーとつながりを作ることが先決になる。一方で、森ビルがタウンマネジメントをされている六本木のような街では、ディベロッパーである森ビルの力をお借りしながら、地域とのつながりをつくっていく方法が有効かもしれません。

「まちの保育園」には、「コミュニティコーディネーター」という職種があります。彼らが地域に足繁く通い、いろんな方に挨拶しながら、その町に合った関係性をつくっていきます。コミュニケーションは効率性よりマメさ。「ご理解ください」 と、一方的にお願いするのではなく、「互恵的な関係」をどう築くかが重要なのではないでしょうか。

藤村龍至(以下、藤村):私は「建築と社会」や「社会にある建築」というよりも、「社会そのものを建築する」という考え方で建築でコミュニティそのものをつくり上げていきたいと考えているんですが、松本さんも保育園でコミュニティそのものを作ろうとされているんですね。

地域の人と交流を行いながら育てていく「まちのガーデン」

「まちの保育園 小竹向原」ではカフェが隣接しており、「まちの保育園 六本木」ではカフェに加えて、地域の人とともにつくるコミュニティガーデン「まちのガーデン」を園の向かいにつくるなど、人々を集めるための仕組みにも多くの工夫がみられる。こうした地域のニーズを的確に捉えることが住民と良好な関係をつくり、地域に求められるコミュニティーづくりにつながっているのだと感じる。

東京大学と共同で研究を開始。「まちづくりの拠点」としての保育園を目指す。

いま、保育や幼児教育は変革期の真最中だ。2018年から文部科学省が策定する幼稚園教育要領と保育所保育指針が改定され、幼稚園と保育所の一体化を進める指針が示された。

2017年10月に開園する「まちのこども園 代々木公園」では、保育園や幼稚園といった乳幼児教育の場が、具体的な保育実践に加えて、まちづくりの拠点として機能していく可能性も東京大学と共同研究していくという。

松本:やっと日本でも幼稚園と保育園を一体化する流れが出てきました。小学校入学前の管轄がこれほど複線型になっているのは、OECD(経済協力開発機構)加盟国で日本だけです。つまり、幼児教育の最適なかたちが制度として定まっていないのです。「子どもたちにとって、最良の環境とは何か」。東京大学の研究室とも連携して解明しながら、より保育実践を深めていこうと思います。

2020年には小学校の学習指導要領も改定され、より学習者が主体的に授業に参加することを目指しアクティブラーニングの導入が図られている。節目を迎えている乳幼児教育と地域共同体に、「まちの保育園」はどのような成果をもたらすことができるのだろうか。これからの松本氏の活動に注目だ。

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