落合陽一、竹中平蔵、松本理寿輝らが語る未来の東京『HIP Conference vol.7』
落合陽一(メディアアーティスト)
2017.08.21

東京都知事に求められるダイナミックなリーダーシップのあり方。竹中平蔵氏が語る。

2つのセッション終了後のラップアップに登壇したのは、小泉政権時代に規制緩和政策を推進した竹中平蔵氏。「小池都政をどう評価しますか?」というNewsPicks編集長、佐々木紀彦氏の問いかけで議論は始まった。

竹中平蔵氏(以下、竹中):昨日まで出張先のドバイ、ナイロビに行っていたのですが、日本に帰ってきたあとに築地市場移転のニュースを見て、ちょっと乱暴な言い方ですけど「豊洲と築地なんてどっちでもいいな」って思ったんですよ。もちろん重要なトピックだと思いますけれども、私たちが食べるもののうち、築地市場などを通っているものって、どんどん比率が低下しているわけです。イオンなどの企業は自社で仕入れ先を確保し、流通網を構築しているわけですから。

グローバル社会のなかでそういった企業が増えていくなかで、築地の問題が、10年後、20年後の東京のあり方に決定的な影響を与えるとはとても思えないんですね。もちろん安全性は重要なんですけれども、日本全体が大騒ぎするような話では、まったくないと思います。豊洲の安全性を確認してから移転します。そのためにしっかりと後処理をします。もうそれ以外にない。築地のような問題に固執するのではなく、もっと大きな視点から議論するべきトピックがリーダーにはあるはずなんですよ。

佐々木紀彦氏(以下、佐々木):地方の方にとってもこれほど毎日、全国ネットのマスメディアで築地の話をされているのは迷惑ですよね。これは都政というよりメディアの問題でもありますが。

竹中平蔵氏

民間企業が中心となって運営される「トランジットモール化した都市」

リーダーに本来求められる役割は、戦略的なアジェンダを設定し、旗を掲げることと語る竹中氏。「小池都知事にぜひ取り組んでほしいアジェンダはありますか?」と質問が向けられると、「都心部のトランジットモール化」「公共施設の民間への解放」の2点を挙げた。

竹中:1つは、銀座・新宿・渋谷・池袋といった都市から自家用車をすべて締め出し、電気自動車のバスを走らせるトランジットモール化を推進すること。東京は歩いて暮らせるエコな都市になります。

トランジットモールとは自家用自動車の通行を制限し、公共交通機関だけが優先的に通行できる形態の歩車共存道路のこと。アメリカのオレゴン州ポートランドなどの都市で導入された例が有名だ。

竹中:もう1つは、公共施設を民間企業に解放することです。申し訳ないけれど、公務員が自分たちの力だけでテクノロジーやアートを活用した改革案を実行しても上手くいきません。民間のスペシャリストの方々と協力し、たとえば、すべての地下鉄をバリアフリー化するだけでも世界で突き抜けた存在になれます。東京は資産の塊ですから。

世界一の都市になるために必要な3つの改革。カギは、民間企業への規制緩和。

竹中氏の提唱により始まった「世界の都市総合力ランキング」(森記念財団 都市戦略研究所)は、世界を代表する主要42都市を「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」といった6つの項目、約70の指標に基づいて評価をするもの。2016年度のランキングでは、東京は世界第3位だったが、竹中氏は「3つの要素を改善すれば、東京は1位になれる」とそのポテンシャルの高さを主張した。氏が改善すべきと話したのは以下の3項目である。

1. 法人税を安くすること

2. 空港へのアクセスを便利にすること

3. 民間企業に対する規制緩和を進めること

法人税の緩和により、企業活動を活発化し、空港へのアクセスを改善することで国内外の移動を活発化する。タックスヘイブンとして知られるシンガポールや、約350都市と直接の交通網をひいているロンドン・ヒースロー空港を引き合いに出しながら、日本のとるべき改革案を示した。なかでも重要なのは規制緩和だという。

竹中:イギリスとシンガポールに次いで、規制緩和政策である「レギュラトリー・サンドボックス」を日本が導入したことは画期的な動きだと思います。もともとはFintech(ファイナンス・テクノロジーの略。金融とITを掛け合わした分野のこと)の推進のために検討されていましたが、教育などといった他の分野にも適用できるはずです。こうした大局的な戦略を考えるのが、国や都市のリーダーに求められるガバナンスだと思いますね。

政府は今年6月9日に、「レギュラトリー・サンドボックス」にまつわる法案を閣議決定した。レギュラリーサンドボックスとは「砂場の規制」を意味する金融用語。政府が企業の要望などを踏まえて規制を一時的に停止し、革新的な事業を行いやすくする規制緩和策だ。テクノロジーが目まぐるしく発展する現代において、さまざまなテーマの知見を横断し、政治に活かしていくことが重要だとまとめ、竹中氏のセッションは幕を閉じた。

アート、コミュニティー、行政と多角的な視点から「未来の東京」について議論がなされた『HIP Conference vol.7』。一見異なるジャンルの話に見えるが、AIの発達、コミュニティー、規制緩和によるチャレンジできる場の創出など、根底に流れるテーマは共通している。東京が、これからの世界でどのような存在感を出すことできるのか。領域横断的に未来を見据える姿勢が求められている。

Profile

プロフィール

落合陽一(メディアアーティスト)

1987年東京都生まれ。筑波大学助教、デジタルネイチャー研究室主宰、VRC理事。コンピュータと人の新たなる関係性を実証するため、実世界志向コンピュータグラフィクスやヒューマンコンピューテーション、アナログとデジタルテクノロジーを混在させたメディアアート表現を行う。

林千晶(株式会社ロフトワーク 代表取締役 / MITメディアラボ 所長補佐)

1971年生まれ。2000年にロフトワークを起業。ウェブデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティーデザイン、空間デザインなど、ロフトワークが手がけるプロジェクトは年間530件を超える。2015年4月、「株式会社飛騨の森でクマは踊る」を設立、代表取締役社長に就任。

松本 理寿輝(ナチュラルスマイルジャパン株式会社 代表取締役)

1980年生。1999年一橋大学商学部商学科入学。ブランドマネジメントを専攻する傍ら、レッジョ・エミリア教育に感銘を受け、幼児教育・保育の実践研究を始める。2003年同学卒業後、博報堂に入社。フィル・カンパニー副社長を経て、かねてから温めていた構想を実現するべく、保育現場での実践活動に参画。2009年4月ナチュラルスマイルジャパンを創業。国内外の幼児教育・保育の実践研究を継続し、2011年4月「まちの保育園 小竹向原」を開園。同園の斬新なコンセプトは各方面で大きな反響を呼んだ。2012年12月、港区六本木一丁目に「まちの保育園 六本木」を、2014年10月、「まちの保育園 吉祥寺」を開園。“こどもも地域も生きるコミュニティづくり”を、日本の保育(幼児教育)環境や日常生活の豊かさにつなげることを目指し活動を行う。

藤村龍至(建築家)

1976年生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。2010年より東洋大学専任講師。2016年より東京藝術大学准教授。建築設計やその教育、批評に加え、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメントや、日本列島の将来像の提言など、広く社会に開かれたプロジェクトも展開している。

佐々木紀彦(株式会社ニューズピックス 取締役 / NewsPicks編集長)

1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得。東洋経済新報社で自動車、IT業界などの担当を経て、2012年11月、「東洋経済オンライン」編集長に就任。リニューアルから4か月でビジネス誌系サイトNo.1に導く。2014年より現職。「NewsPicks」編集長業務と合わせて、ビジネスモデルの開発などに取り組む。

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