出過ぎた杭は打たれない。YKK AP「未来窓」開発者が語る常識破りの仕事術
東克紀(YKK AP株式会社 事業開発部 部長)
2019.11.29

大企業ではローンチに数年かかることも。意思決定を早くさせる方法は?

HIP:そもそも、東さんが新規事業の責任者にアサインされた経緯を教えてください。

東氏:もともとは、バルコニーや外構などのエクステリア(※敷地内の外部空間)建材の開発を担当する部署に15年ほどいました。ときには、リリースした商品について意見を聞くために工務店やハウスメーカーへの営業にも同行させてもらっていました。

通常、営業と開発の部門は分かれていますし、ほかにそうした動きをする社員もいなかったので、当時から目立っていたかもしれませんね。

HIP:たしかに、大企業で15年以上も開発者の立場でありながら、営業に同行するのは珍しいと思います。

東氏:開発者の多くは、自分のつくったものが批判されるのが怖い。だから、わざわざ自らセールスに出て行きたがらないという面もあります。でも、私は「生活者の声に応えられるものづくりをしたい」とずっと思っていましたので、営業にも同行したかったのです。

そして、その後の2年間はセールスエンジニアとして市場を動き回りました。それからも、営業力強化プロジェクトに異動したり、技術を語れる営業育成として建築塾を立ち上げたりしました。

そんな動きが認められたのか、海外も含めたYKK グループ全体で「事業を生み出す価値創造塾」のメンバーにアサインされたんです。その活動の一環で、窓の故郷であるドイツの製品にも負けない「4Gの窓」の開発に注力した経験も後押しし、結果的に現在の事業開発を任せていただくことになりました。

HIP:事業開発を進めるうえで、心掛けていることはありますか?

東氏:まずは、スピードですね。大企業の新規事業は、社内の根回しがいちばん大変。大げさではなく、製品やサービスのローンチまで数年かかることもたくさんもあります。しかし、それだと、いまの時代では遅すぎて生き残れません。

私の現部署の決裁は、ある程度の自由がきくので、そこはトップに感謝しています。意思決定の体制をミニマムにすることで当然スピードは上がりますが、このような境遇は稀だと自分でも思います。非常に恵まれていますね。

誰にも文句を言わせないために。斬新なアイデアには、説得力が必要

HIP:余計な根回しをする必要がないことで、心理的な負担も少なそうですね。

東氏:いまも多少の根回しは必要ですが、それ以上にスピード感のほうが断然大事です。いちいち確認しなくて良さそうなことならば、根回しは後にして、先に動いてしまうこともあります。たとえ、あとで注意を受けたとしても、なんだかんだで大企業はしっかりと対応してくれますから。そっちのほうが、スピードは上がるので、打たれ強い人にはおすすめです(笑)。

HIP:なるほど(笑)。そのほかに新規事業を推進するうえで、大事だと思うことはなんですか?

東氏:インパクトのある目立つプロジェクトと、しっかりお金をつくる堅実なプロジェクト、この2つをバランスよく進めることも新規事業には大切です。われわれは、未来窓のような「表舞台で注目されるプロジェクト」を展開する一方で、将来的に手堅く稼げそうなプロジェクトも裏で走らせています。

このような進め方にすると、経営層への説得材料にもなる。長期プロジェクトを頓挫させないためには、その「二刀流」が必須ですね。

HIP:ちなみに、企画や開発など、社内に別部隊もあるわけですよね。既存の事業部から煙たがられることはありませんか?

東氏:気づいたらほかの領域に立ち入ってしまっているので、そうかもしれません(笑)。ただ、私はもともと開発出身というバックグラウンドがあるので、「何言ってるんだコイツ」と、軽く見られないのかも。開発のノウハウがあるから、地に足をつけた話もできますし。

それがなければ、未来窓も未来ドアもかたちにできませんし、ただの「突っ走り男」で終わりますよ。従来にとらわれないアイデアや言動を受け入れてもらうには、結果や実績をつくり続けるしかありません。そうすれば、誰にも文句を言われることはない。出る杭も出過ぎてしまえば、打たれなくなると思っています(笑)。

社員も会社を「活用」すべき。イノベーティブな事業が生まれる関係性とは?

HIP:常識にとらわれないチャレンジを実践している東さんですが、そうした情熱の原動力はどこからくるのでしょうか?

東氏:「情熱」というよりは、「危機感」ですね。今後、人口減少や高齢化社会に伴って、国内では間違いなく住宅が減っていきます。つまりは、窓の需要もなくなっていく。

そんな将来が待ち受けている窓業界ですが、最大手のひとつとされているYKK APには、まだまだ影響力があるはずです。新たなチャレンジも世の中にアピールしやすい立場ですし、うまくいけば世界の常識を変えられるかもしれない。だからこそ、才能あふれる人たちと仕事をして、新しい価値を生み出し続けていく必要があると考えています。

私はつねに新しいことに取り組みながら、世の中の課題を解決して会社に貢献したいんです。そこに対する情熱はあります。ですから、新規事業が軌道に乗り始めたら、そこから先はほかの社員にお任せして、自分はどんどん新しい可能性を探っていきたいと思っています。

HIP:東さんは良い意味で、大企業をうまく利用していらっしゃいますね。

東氏:当然です。語弊を恐れずにいえば、会社は社員を活用しているんですから、社員も会社を活用すべき。それこそが健全な関係だと、私は思います。企業にはネームバリューやアセットがあり、個人にはスキルや知見がある。それらを掛け合わせて、イノベーティブな事業をするのが理想ではないでしょうか。

HIP:最後に、今後の展望について教えていただけますでしょうか。

東氏:これからもこの未来窓プロジェクトを継続しつつ、来季にはPARTYとまた面白い仕掛けを考えていくつもりです。自宅の窓やドアによって、より豊かで楽しい生活を過ごせるよう、これまでと違った観点でエンドユーザーを驚かせたい。ときにはお客さんを巻き込み、一緒に楽しみながら、窓への意識を高めてもらう。そんな取り組みをしていきたいですね。

Profile

プロフィール

東克紀(YKK AP株式会社 事業開発部 部長)

入社から15年間、商品開発部門に所属。その後、YKKグループ選抜による経営学プロジェクト参画などを経て2014年から現職。新規事業開発のみならず、素材開発、商品企画、社内人材育成などを通じ、現代の課題に対し柔軟な解決を目指しながら、これからの建材の可能性を追求している。

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