INTERVIEW
優しさがつまった日本のトイレ。その未来像を鈴木おさむが考える
鈴木おさむ(放送作家)

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2016.11.25

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テクノロジーを使っても、「アナログ的な優しさ」を忘れずに進化できるといいですね。

HIP:今後、進化していってほしいトイレの機能はありますか?

鈴木:健康診断できるトイレは実現してほしいですね。たとえば、ぼくは痔を患っているので、トイレをしていると血が出ることがあるんです。でも、もしかしたら痔の出血ではない可能性もあるわけでしょう。だから、結構焦るんですよ。でも、トイレが痔による出血なのか、そうでないかを判断してくれると安心できますよね。ほかにも、おしっこで疲労度がわかったり、尿糖値がわかったりすると便利かも。

HIP:尿糖値が測れるトイレは、すでに数社で開発が進められているようですね。ヘルスケアIoT製品を開発するスタートアップ企業のサイマックスでは、トイレに機器を設置することで、自動で排泄物の分析を行うサービスを開発しているそうです。

鈴木:そうした分析機能がついたトイレも、これから当たり前になるかもしれないですね。体脂肪が測れる体重計がいまでは当たり前になっていることですし。体重を毎日計ると太りにくいというように、健康状態を毎日チェックすることで、「今日はお酒を控えよう」とか「ビールはやめておこう」とか、病気の予防になりそうです。うちの両親は高齢なので、毎日体調を見ることができれば安心できるかも。テクノロジーを使っても、「アナログ的な優しさ」を忘れずに進化できるといいですね。

世の中は、ネーミングひとつで大きく動いたりします。「だれでもトイレ」が、もっと増えるといいな。

HIP:家庭のトイレだけでなく、公共のトイレも進化してきていますよね。機能や快適性はもちろんですが、公共施設での多目的トイレの整備も進んでいます。

鈴木:知り合いのニューハーフも喜んでいますよ。テレビ局でも、ニューハーフタレントさんは、多目的トイレを使っている人が多いかな。男女のトイレ、どちらにいても、やっぱりドキッとしますよね。

HIP:たしかに、見た目が女性だと、男子トイレにいるとビックリしますね。

鈴木:それでいえば、ぼく、男子トイレに女性の清掃員がいるのはすごく苦手なんですよ。男性が女子トイレを掃除するのはNGだけど、女性はどちらにでも入れる、という考えなのかもしれないけど、それはおかしいでしょう。男子トイレは男性に掃除してほしい。この感覚は、LGBT(レズ・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字から取られており、性的少数者を指す言葉)の人たちが感じる違和感に近いんじゃないかな。

HIP:LGBTの方の半数以上は、トイレの使用時に「困る、ストレスを感じる」という調査結果もあります(特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティと株式会社LIXILが2016年4月に行った「性的マイノリティのトイレ問題に関するWEB調査結果」)。最近は、障がいを持つ方やLGBTの方の利用を想定した「だれでもトイレ」という呼称のトイレもありますよね。

鈴木:「だれでもトイレ」は、良いネーミング。「多目的トイレ」は名前が悪いですよ。その昔は、「障がい者トイレ」なんて言い方もあったでしょう。これだと入りにくい。「だれでもトイレ」みたいな名前にすると、障がい者やLGBTの人はもちろん、子どもを連れた母親だって入れるし、ぼくだって入れる。世の中は、ネーミングひとつで大きく動いたりします。「だれでもトイレ」が、もっと増えるといいな。

こういった話になると、すぐ「2020年に向けてやっていこう」となりがちだけど、ぼくは嫌い。

HIP:2020年には『東京オリンピック』を控えていますし、「だれでもトイレ」をはじめとした、どんな方にも優しいトイレの普及が進んでいきそうですね。

鈴木:こういった話になると、すぐ「2020年に向けてやっていこう」となりがちだけど、ぼくは嫌い。たとえば、今日の話のなかでトイレから見えてきた問題には、LGBTや高齢者の介護といった内容もありましたよね。これって、2020年をゴールにする問題ではなくて、これから長く考えていく必要がある問題。むしろ、2021年以降が大事になってくるはずです。

HIP:地震の多い日本では、災害時にトイレをどうするかといった問題も、長期的に考えなくてはいけない問題です。今日のお話を聞いて、身近なものだからこそ、真剣に考えていく必要があると思いました。

鈴木:日本人は、食事にすごくこだわりますよね。排泄は食事の正反対にある行為。その排泄にも、トイレという形ですごくこだわっているのが面白いと思います。うちにはいま、1歳3か月になる子どもがいるのですが、今後はトイレ教育が始まる。食べることとトイレを教えることで、人はこうやって学んでいくのだと実感しています。ぼくはいまでもタレントさんとトイレが一緒になったら「おお……」と思う。「この俳優さんも人間なんだ」って。トイレは、すごく人間っぽさを感じられる空間ですよね。

Profile

プロフィール

鈴木おさむ(放送作家)

1972年4月25日生まれ。千葉県千倉町出身。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当。映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、小説の執筆等さまざまなジャンルで活躍。

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