INTERVIEW
優しさがつまった日本のトイレ。その未来像を鈴木おさむが考える
鈴木おさむ(放送作家)

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2016.11.25

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トイレの個室にちょっと勉強になるマンガを貼れば、子どもたちのトイレのコンプレックスをなくしてあげることができる。

HIP:具体的には、電子掲示版を設置するなどでしょうか?

鈴木:ぼくは画面よりも紙がいいと思います。スマホもそうですが、デジタルでのインプットは疲れる。紙のほうがリラックスできますね。以前、『R25』というフリーペーパーがあったのを覚えていますか。有料の雑誌と変わらないクオリティを無料で配布することで、一世を風靡しました。ああいった、気軽に読めるマガジンがトイレの個室に置いてあってもいいですよね。あと、トイレに読みものを置くのは、広告以外にもメリットがあると思います。

HIP:それは、なんでしょうか。

鈴木:子どもが小学校でトイレに行けない問題を解決するのにも役立つのではないかなと。いまの子どもがどうかはよく知らないけど、ぼくらが子どもの頃って、学校でうんちしていることがバレたら、人生が終わるぐらいの大事件だったじゃないですか。

HIP:いまでも、恥ずかしいという理由や、トイレが汚い、あるいは和式だからといった理由で、学校で排泄しない子どもが多くいるようです。そうなると、健康上の問題にまで影響してきます。

鈴木:たとえば、トイレの個室にちょっと勉強になるクイズやマンガが貼ってあれば、トイレ自体が面白くなって、行くことに抵抗がなくなるんじゃないかな。それに、貼ってあるマンガが面白ければ、それが友達と共通の話題になって、学校でうんちすることがネガティブな行為じゃなくなるかもしれない。トイレのコンプレックスをなくしてあげることができますよね。

日本のトイレのキーワードは、「そんなところにまで気を使うのかよ!」という優しさと繊細さ。

HIP:日本では下水の技術をはじめ、トイレに関するあらゆる技術が発展していますが、日本人がこんなにもトイレにこだわる理由は何だとお考えですか?

鈴木:ぼくね、日本のトイレのキーワードは「優しさ」だと思っているんです。「そんなところにまで気を使うのかよ!」という優しさと繊細さが、日本人をよく表している。たとえば、トイレにマウスウォッシュや綿棒が置いてある居酒屋があるじゃないですか。トイレが用を足すだけじゃなくて、自分を1回リセットできる場所になっている。トイレといえば便器の話になりがちですが、日本人はトイレという空間自体を大事にしている気がします。

HIP:特に商業施設の女性用トイレは近頃ますます発展しているようで、凝った内装や広いパウダールームなど、自分をリセットできる場所になっているようですね。便器の話になりますが、温水洗浄便座も優しさから生まれたもののような気がします。

鈴木:たしかに、これも繊細さと優しさの塊ですね。一度使い始めたらすごくラクで、いまでは使わないのは考えられません。そういった意味では、温かい便座を初めて使ったときも感動しました。トイレの一番の弱点は便座に肌が触れたときの冷たさだと思うのですが、それを解消してくれた。技術を使っているけれど、アナログな感じですよね。まさに、人のぬくもりに訴えかけるところがすばらしいと思います。

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