INTERVIEW
巨大SNS時代を経てメディアはこうなる。Taboolaカントリーマネージャーが見据える未来
馬嶋慶 (Taboolaジャパンカントリーマネージャー)

INFORMATION

2017.10.03

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グローバルレベルでもっとも効率がいいとされるUIが、日本では最適ではないこともある

HIP:馬嶋さんは、Taboolaを日本のウェブメディアに紹介するカントリーマネージャーとしての役割を担っていますが、どんな課題を感じていますか?

馬嶋:日本のウェブメディアは、テクノロジー面でまだまだできることが多いと感じています。ですから、Taboolaのミッションを日本の方々に理解していただき、どのように関係をつくっていくかには苦心しています。

たとえばTaboolaは、“Connecting People to Information”というメッセージをグローバルで打ち出しているのですが、そのまま日本語に訳しても「人を情報につなぐ」では、何をやりたいのか伝わらない。

ですから、ぼくはあえて大きく強い言葉に訳して、「パブリッシャー(ウェブメディア)のコミュニティーにイノベーションを起こす」と伝えています。

HIP:たしかに未来のビジョンまで共有できないと、大事なウェブサイトにメスを入れる決断はできませんよね。

馬嶋:さらにカントリーマネージャーは、社内に対しても別の視点からアプローチしていくことが大切です。たとえば、グローバルでもっとも効率がいいとされる手法が、日本では最適ではないこともある。その場合、日本だけの特殊な状況に合わせた新しいアルゴリズムをつくらなくてはいけません。

上司やエンジニアからすれば「それ本当に必要なの?」という状況に対して、こうすれば日本でもサービスが受け入れられるということや、その後の戦略などを粘り強く伝える力が必要とされます。

HIP:グローバルと日本で違いが生まれた事例について教えていただけますか?

馬嶋:ある芸能系ニュースサイトに、グローバルでとても良い結果を出していたUIを実装したのですが、大きな成果を上げることができませんでした。むしろ、もとのUIに少し手を加えただけのほうが、次から次へとページが見られていく。ゴシップ系の記事の記事が好きなユーザーは、「この情報が見たい」という明確な意思を持っているので、それにあった施策が必要なんだと思います。

一方で、報道系のニュースサイトでは、グローバルで結果を出しているUIをそのまま持ち込んだほうが成果が出ています。たとえば、都知事に関する前・中・後編の特集記事があった場合、前編の最後に中編・後編の見出しを載せるだけでなく、別の記事、たとえば五輪や選挙の記事の見出しを載せたほうが読まれる可能性が高くなるんです。

ただ、それでも記事を書いた記者の気持ちとしては3本続けて読んでもらいたい。すべてをアルゴリズムに任せることに抵抗もあると思います。ぼくらもその感覚はよくわかるので、編集部で自由に記事を掲載できる場所もあわせてつくっているんです。

HIP:グローバルで結果を出しているUIであっても、ローカルなコンテンツ制作者側の思いとすり合わせることが大事なんですね。海外と日本で効果的なUIが異なることには、日本のユーザーのどんな特徴が影響しているのでしょうか?

馬嶋:日本のユーザーは、伝統的で信頼性の高いウェブメディアを好む傾向がある気はします。アメリカではフェイクニュースのウェブメディアが幅を利かせているので、状況がまったく違いますよね。ただ、日本でも『ハフィントンポスト』『BuzzFeed Japan』といった「SNS以降」に勃興してきたウェブメディアがいくつもありますし、デバイスも多様化してきています。メディア内外の環境が変わってきているので、新しいレコメンドのあり方を模索していく必要があると思います。

フォーカスすべきポイントをクリアすれば、1年で売上が5倍という結果も起こりうる

HIP:SNS時代の次の未来に挑戦したいという大きなミッションと、目の前のウェブメディアや編集者、読者への思い、その両方がTaboolaのカントリーマネージャーには必要とされているんですね。馬嶋さん個人として、日々のモチベーションが上がる瞬間はどういうときですか?

馬嶋:目標を達成するためにアクションを起こし、実際に数字が伸びているのを確認したときは、パソコンの前でニヤニヤしてしまいます。「データオタク」のような一面を持っているのかもしれませんね(笑)。

ただ、個人的な趣向は別として、組織づくりのうえで数字はやはり重要だと考えています。シンプルですが「Taboolaがマーケットでどれだけウケているか、数字を伸ばせるか」は、組織の大きなモチベーションになるので、ハッキリと意識していますね。

HIP:社内外に対してTaboolaのミッションを示していくうえでも、数字が持つ説得力は大きいですよね。

馬嶋:数字を伸ばすことは、ミッションを実現し「ルールを変える」ためのプロセスなんですよね。また「こうすればこれだけ数字が伸びる」ということをリーダーとして提示し、実現できないと、チームメンバーも仕事をこなすだけになってしまいますから。具体的にはいま、売上を1年で5倍にすることを目標としています。

HIP:1年で5倍……! 途方もない数字に感じます。

馬嶋:フォーカスすべきポイントを定めて、そのポイントをちゃんとクリアすれば、本当に起こりうる数字なんです。ただ、本社や上司に対しては控えめに提示しますけれど(笑)。心のなかでは絶対に5倍を目指すと誓っているし、チームメンバーにもそのつもりで接しています。

——最後に、今後のビジョンを教えていただけますか。

馬嶋:まずはTaboola全体の売上の半分を日本で稼ぎ出すことで、日本市場における成功のテンプレートをつくり上げたいです。そのためにも、優良なコンテンツを配信している「旧来メディア型」の保守的なウェブメディアにこそ、われわれのテクノロジーを使ってもらい、変化の波へ乗ることの大切さを感じてもらいたいと思っています。さらにその先は、日本だけでなく、APAC(アジア太平洋)のほかの国で新規マーケットを開拓するマネージメントをしてみたいですね。

Profile

プロフィール

馬嶋慶 (Taboolaジャパンカントリーマネージャー)

カナダ・オンタリオ州出身。住友銀行のトレーダー業務や博報堂での経験を経て、2013年よりFacebook Japanにてエージェンシーパートナーとして勤務。海外テクノロジー企業の日本市場エントリーのコンサルを行うStartup Booster Japanを立ち上げる。2016年、Taboolaのカントリーマネージャーに就任。

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