多くのパートナーが引き寄せられる理由は「イノベーティブとトラディショナルの融合」
HIP:次に、日野自動車とともに取り組んでいる「FlatFormer(フラットフォーマー)」について教えてください。まず、こちらはどんなモビリティーなのでしょうか?
シェメシュ:FlatFormerは車そのものではなく、次世代のEVソリューションと、それを使ったサービスのことを指します。長距離、大規模な輸送にも対応できる無人運転商用EVのプラットフォームで、配送や人の移動、移動式サービスなど、さまざまな活用を検討しています。
具体的な情報については、まだ明かすことはできませんが、今後はこれをいろいろなところに運び、テストを重ねながらそれぞれの地域にどんな価値を提供できるのか模索していくことになるでしょう。いずれにせよ、これまでにまったく想定していなかったモビリティーの活用方法が次々と生まれていくと思います。なぜなら、私たちと日野自動車の考え方はとても似ていて、「新しい価値を社会に提供すること」という共通の理念を持っていますから。
HIP:自動車メーカーに限らず、さまざまな企業がREEとパートナーシップを結んでいますが、その理由をどのように分析していますか?
サルデス:サプライヤーやOEMのパートナーが私たちREEに関心を寄せていただく最大の理由は、自動車メーカーや配送業者などの企業が、これまで以上に迅速かつコスト効率よく電気自動車に移行できる、真にユニークな技術を持っているためだと考えています。また、REEは古くからある自動車の概念を打ち破り、新しい自動車の設計と商品化の方法を提示しており、多くの企業が魅力を感じているのだと考えます。
特に、近年はマーケットや社会情勢のシフト、新たなテクノロジーの台頭など、急激な変化が一気に起こっています。われわれは、これらの変化にフレキシブルに対応し解決策を出せるメンタリティーを持っています。だからパートナーとして、REEを選んでいただいているのではないでしょうか。
また、REEの本部自体はイスラエルにありますが、アメリカやイギリスなど各地にオペレーションセンターを設けていて、エンジニアリングの拠点となっています。そこで働いているのは、トラディショナルなOEM出身の技術者ばかりです。つまり、イスラエル本国のイノベーティブな発想と、伝統的な技術力・考え方を組み合わせている点も、私たちの特徴の一つですね。
イスラエルと日本の企業に共通するイノベーションマインドとは?
HIP:REE側から見た、日本企業の印象はいかがでしょうか?
シェメシュ:イスラエルはイノベーティブな国だといわれますが、その背景にあるパッションの部分は日本と通じるものがあるように感じます。イノベーションには、「いますぐに起こすべきもの」と「未来を見据えたもの」がありますが、日本の場合は後者の考え方が強い印象を持っていて、そこは私たちとよく似ています。
現時点の課題を解決するイノベーションだけでなく、そのインベーションが与える変化までふまえ、研究やビジネスを行っている。時間はかかりますが、とても重要な視点ではないでしょうか。
HIP:読者のなかには日本企業にはない要素を取り入れようと、海外企業とのジョイントを考える人もいると思います。日本企業と海外企業のジョイントを成功させるためには何が必要ですか?
井口:信頼ですね。私たちの場合はイスラエル企業と日本企業の橋渡しをしているわけですが、イスラエル側の信頼がなければ物事が前に進みません。そのためにも、とにかくコミュニケーションを深めていく。
自分たちがやりたいこと、実現したいことをいかに伝えていくか、そして相手に迷惑をかけないためにはどう実行すべきか……それらをコミュニケーションですり合わせていくんです。やはり、相手が何を考えているかを読み取れないと前に進めませんし、それができてこそ日本企業と海外企業の信頼が築けるのではないでしょうか。
シェメシュ:同感です。それは、日本企業側からイスラエル側を信頼してもらうのもそうですし、私たちも日本企業の考えを読み取って信頼を築いていく必要があります。日本企業にとってはこれができる海外のパートナーを見つけることも大切でしょう。
HIP:では、最後に「FlatFormer」の今後の展望をお聞かせください。
シェメシュ:現時点で言えることは少ないのですが、2022年度に開発中のプロトタイプが公開される予定です。これは、これまでで最もイノベーティブなプラットフォームになるでしょう。われわれ自身も日野自動車とREEが共に次世代モビリティーの新時代を切り拓くことを非常に楽しみにしておりますので、ぜひご期待いただければと思っております。