パーソルからアンカースターへ出向した社員が両社の媒介に
HIP:コンサルティング期間中、ワークショップやシリコンバレーへの出張に加え、パーソルキャリア社員である中山さんがアンカースターに1年間出向されたとうかがいました。どんな狙いがあったのでしょうか?
児玉:単純にぼくら側から出向する人手が足りなかったというのもありますが、やはりパーソルキャリアの人に入ってもらうことで、さまざまな利点があると考えました。ぼくらが普段やっている活動を違う角度から伝えてくれるんじゃないかという期待もあったし、双方のことをよくわかっている人に近くで伴走してもらえるのは、やはり心強いですから。
HIP:ちなみに、中山さんがアサインされた理由はなにかあったのでしょうか?
中山友希氏(以下、中山):詳しい理由までは聞いていませんが、私が最初に配属された部署の上長が峯尾さんだったこともあって距離がわりと近く、一緒に仕事をする機会も多かったんです。
過去にも「とりあえず行ってこい」みたいな、似たようなアサインを経験していたので、アンカースターへの出向も、その日のうちに「行きます!」と返事しました。よくわからないけど、直感的にワクワクしたんですよね。
HIP:当初、自分の役割をどのように捉えていましたか?
中山:峯尾さんと児玉さんをブリッジすること。それから、私がアンカースターで得たものをパーソルキャリアに持ち帰ることも大きなテーマでしたね。
実際に、児玉さんの下で働きはじめて、数えきれないくらい多くの気づきがありました。たとえば、アンカースターって得体が知れない人というか、異能が集まってくる会社で、だからこそ毎日のようにさまざまな化学反応が起きているんです。なにかに突出した人同士の掛け算で、すごいものができる瞬間を何度も目の当たりにしました。
ただ、それをパーソルキャリアに持ち帰って、伝えようと思っても、言葉ではなかなか説明しづらいんですよね。特に初期の頃は、児玉さんが話す言葉に対しても、パーソル側の人間はわかっているようでピンときていない状態だったので、余計に難しかったです。
HIP:そこをどのように突破したのでしょうか?
中山:やはり、私のように実際に見て体験してもらうのが一番だと考えました。パーソルキャリアの人たちをアンカースターのオフィスへ呼んで、どんな人が集まり、どういうコミュニケーションが行われているか体感してもらう。特に、最初の頃はワークショップに参加してもらうだけじゃなく、そうやって肌で感じてもらう機会を設けていましたね。
児玉:中山さんが間に入ってくれたことで、かなり相互理解が深まったと思います。あと、個人的には中山さんを通じて、峯尾さんの情報を常に仕入れられるのが有難かったですね。
ぼくはハートが弱いから、峯尾さんの様子がいつも気になってしまうんです。「今日、峯尾さんにあんなこと言っちゃったけど、怒ってないかな……」って。だから、中山さんに様子をうかがってもらわないと、安心して眠れなかった(笑)。
他の取締役や役員から聞いた、峯尾さんの印象の変化とは?
HIP:先ほど、峯尾さんからマインドセットのお話がありましたが、中山さんはこの一年、峯尾さんを近くで見てきてどんな変化を感じましたか?
中山:明らかに視点や発言が変わりましたね。近くで見ていても感じましたし、他の役員などから間接的に聞く峯尾さん評も変わってきたなって。
たとえば、パーソルホールディングス全体の取締役会での、峯尾さんの発言がものすごく進化していると。1人だけ違う次元にいるみたいだったというような話を何度か聞いて、私まで嬉しくなってしまいましたね。
HIP:まさに、児玉さんの仕掛けが功を奏したわけですね。
児玉:いや、実際はそこまで戦略的に仕掛けたことではありません。それに、ぼくが峯尾さんを変えたなんておこがましいです。
ただ、ぼくのなかにはいつも、理想のパーソルキャリア、理想の峯尾さんがいる。峯尾さんのことを知れば知るほど、もっとこんなふうになれるはずだ、もっとすごい未来を描けるはずだと、勝手な想像がどこまでも膨らんでしまうんです。
それはご本人にも、事あるごとに伝えていました。そして、もし峯尾さん自身が、「ぼくの想像する理想的で、超カッコいい峯尾さん」との間にギャップを感じるなら、一緒に埋めていきませんか、と。
峯尾:本当に、ここまで考えてくれているんだなと驚きました。じつは過去にも別会社からいろんな提案を受けたことはありますが、大抵の場合はパーソルキャリアのことをろくに知らない人が考えているから、言ってることがトンチンカンなんですよね。
シンプルなことですが、やっぱりぼくらについてたくさん考えてくれたうえで提案してくれる人じゃないと、視座を合わせることは難しいんだなとあらためて思いましたね。
社会的に共感性の高いミッションを実践していると、自然と仲間が集まってくる
HIP:最後に、「人々に「はたらく」を自分のものにする力を」というミッションを踏まえ、あらためてその思いや今後の展望をお聞かせいただけますか?
峯尾:ぼくらのミッションは、いままさに世の中から求められていることだと感じています。だからこそ、これに共感してくれる人や企業も多いはず。これからは、その輪をさらに広げていきたいですね。
HIP:現状の手応えはいかがですか?
峯尾:たしかな手応えがあります。ここ1年、ぼくらのミッションに共感し、一緒に仕事をしたいと言ってくださる人や企業が本当に増えましたから。
以前に児玉さんにも言われたのですが、社会に対して共感性の高いミッションをつくって実践していると、自然と仲間が集まるんですよね。同じ志を持つパートナー企業とタッグを組めるでしょうし、理念に先導してくれる人を採用できるようになる。つまり、自ずとミッションが強くなっていく構造になっていると思います。
HIP:それがいずれはパーソルキャリアだけでなく、社会全体のミッションになっていくかもしれませんね。
峯尾:そうなればいいですね。実際、今年の春には、われわれのミッションを社会全体で考えるための「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」を立ち上げました。
すると、キリンホールディングスさん、KDDIさん、コクヨさん、富士通さん、三井情報さん、ヤフーさん、LIFULLさんという名だたる企業に賛同していただくことができた。ここを起点に、とても大きな渦に成長していきそうな予感もあって、ワクワクしています。
今後は、こうした取り組みをさらに推進し、日本の「はたらく未来」を模索し続けていきたいと考えています。場合によっては、他の人材サービス会社と連携するのも全然アリですね。一社だけの利益に捉われず、業界の垣根を超えてミッションを遂行する。それが、児玉さんの言う理想のパーソルキャリア、理想の自分に近づくことなのかなと思いますね。