INTERVIEW
常識を覆すラーメン店をつくり上げる。日清食品の新規事業「RAMEN EX」とは
吉田洋一(日清食品ホールディングス株式会社新規事業推進室室長)

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2020.07.27

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調理時間7分は長い? あらゆるユーザーを想定してサービスを進化させていく

HIP:サービスローンチから2か月ですが、手応えはいかがですか。

吉田:麺やスープ、具材のクオリティーにはこだわりましたので、味に関しては高く評価していただけていると感じています。われわれ、そしてパートナーのラーメン店主様にとって、大きな自信に繋がりました。サービスに関しても、麺が伸びたりスープがこぼれたり、冷めてしまったりするといった、ラーメンデリバリーの課題を一気に解決できたと自負しています。しかし、まだまだ改善すべきポイントは残っていますね。

HIP:どんな改善点があるのでしょう?

吉田:ひとつは、配達エリアです。現在は全国に4店舗しかないため、「RAMEN EX」を利用したい方全員にお届けすることができていません。さらに、調理時間にも改善の余地があると思っています。ラーメン1杯の調理にかかる時間は、商品によって異なりますが、電子レンジで約7分。家族4人で4杯食べるとしたら、すべてを調理するのに30分近くもかかります。「RAMEN EX」の潜在ユーザーのなかには、お子さまがいらっしゃる方も多いはず。調理時間が改善すれば、家族の食事としての選択肢にもなってくると思います。

メニューのラインナップ拡充にも取り組んでいます。現在は「一風堂」「すみれ」「ますたに」「無鉄砲」「豚天国」の5品で、どちらかというと味の濃い商品が揃っています。男性のニーズには応えられているのですが、女性からは鶏白湯や担々麺といった味も欲しいというお声をいただいています。こうした要望にお応えして、9月からは新しいメニューを3品ほど追加する予定です。

HIP:より広いニーズに応えることができそうですね。

吉田:そうですね。ニーズに応えるという点では、デリバリーだけでなく、さまざまサービスも検討していく必要があるでしょう。実際、6月29日からは、お客様のお好みに合わせて“チャーシュー増量”や“替え玉”ができるカスタマイズサービスを「RAMEN EX」全店で開始したほか、お客様に店頭で商品を直接お渡しするテイクアウト販売も一部店舗でスタートしています。ラーメンに対するニーズを積極的に取り込んで、サービスをさらに充実させていきたいです。

また、ちょっと先の話になるかもしれませんが、海外展開も視野に入れています。ラーメン店の海外出店はコストもリスクもかかる。しかし、「RAMEN EX」を使えば、より低リスクで出店することが可能です。実現すれば、「本格的な日本のラーメン」を世界中に届けることができる。大仰な言い方ですが、日本の食文化の浸透、そんな未来図も描いてみたいですね。

未来の食文化をつくる。「チキンラーメン」誕生を超える驚きを社会に届けたい

HIP:では、最後に新規事業で日清食品が目指す未来像を教えていただけますか。

吉田:われわれの目標は、新しい食文化を生み出すことです。安藤は就任時から、「Beyond Instant Foods(即席食品を超えて)」という言葉をスローガンに掲げています。込められているのは、「自分たちの意志を持って現状を超え、未来の食文化を打ち出していく」という思い。これは創業者・安藤百福が世界初の即席麺「チキンラーメン」を生み出したときから変わらない、いわば日清食品のDNAです。

社会環境は大きく変わってきています。SDGsへのアクションも重視される世の中ですから、今後、お客様が食に対して求めるものも多様化していくはず。超えなくてはならないハードルもさらに高くなっていくでしょう。すでに、日清食品では、食の安全のための品質保証体制を築き上げているほか、容器や原材料でもサステナビリティを強く意識した事業活動を行っています。新規事業推進室では、そういったことも含めて新しい商品や事業を考えている最中ですから、これからの展開も楽しみにしていてください。

HIP:どんなサービス・商品が誕生するのか、一消費者としてとても楽しみです。

吉田:ありがとうございます。安藤からは、社内に使えるリソースがあるのなら何でも使えと言われています。そして、社内のリソースで不十分な場合は、どんどん社外と協業すればいいと。

実際、東京大学 生産技術研究所の竹内昌治教授と培養肉の共同研究を行い、2019年にはサイコロステーキ状のウシ筋組織の作製に成功しました。「『培養ステーキ肉』実用化への第一歩」と、話題になったイノベーションです。

また、2020年6月より虎ノ門ヒルズビジネスタワーにオープンしたインキュベーションセンター「ARCH(アーチ)」の利用をはじめました。イノベーションへの意識を持った人が集まる場所に身を置くことで、新規事業のアイデアが得られたり、協業のパートナーが見つかったりと、イノベーションのさらなる加速を期待しています。

HIP:ラーメンに限らず多様なイノベーションが誕生しそうですね。

吉田:そうですね。社会のスタンダードは突然、変わります。いまの時代、ひとつのことに注力して、これで絶対大丈夫だと思い込むことはリスクでしかありません。だからこそ、つねに新しい可能性を追求し、新しい仕組みに対応したり、スタートアップとも柔軟に組んだりしていく必要がある。勇往邁進していきたいと思います。

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プロフィール

吉田洋一(日清食品ホールディングス株式会社新規事業推進室室長)

1990年、日清食品入社。営業部門、宣伝部を経て、2007年にマーケティング部へ異動し「チキンラーメン」のブランドマネージャーに就任。その後、経営企画部部長を務めたのち、2019年3月より現職。

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