INTERVIEW
4日間で3000件超の商談を創出。大手とスタートアップをつなげてきた「ILS」の10年
松谷卓也(株式会社プロジェクトニッポン 代表取締役)

INFORMATION

2024.09.04
取材・文:多田慎介 写真:北原千恵美 編集:藤崎竜介(CINRA)

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虎ノ門ヒルズを舞台に、国内外の大企業やスタートアップ、大学の研究室が参加して開催される「イノベーションリーダーズサミット」(以下、ILS)。新たなビジネスチャンスを創出するアジア最大規模のオープンイノベーションの祭典として、2024年に10周年を迎えた。

ILS2023で実施されたマッチングプログラムでは3000件超の商談が実現し、新たな協業や事業提携、M&Aなどにつながっているという。さらなる出会いの創出に向けて、2024年も12月2〜5日の開催に向けて準備が進む(詳細はこちら)。

主催するプロジェクトニッポンの松谷卓也社長は「近年は海外スタートアップや大学関係者の参加も増えて、世界的に注目されるようになった」と手応えを語る。

なぜILSはオープンイノベーションを目指すプレイヤーたちを惹きつけるのか。その歴史と現在地、展望などを聞いた。

閉鎖的だった大企業、スタートアップ、アカデミアの「ムラ」をつなげる

HIP編集部
(以下、HIP)
ILSの前身は、松谷さんがリクルート時代に立ち上げたプロジェクトだと聞きました。
松谷卓也氏
(以下、松谷)
2004年、リクルートに在籍していた私は「起業家を大量に輩出したい」という経済産業省からの声がけに応じて「ドリームゲートプロジェクト」を立ち上げました。
起業家を目指す若者を応援するプロジェクトで、堀江貴文さんや藤田晋さんなど、著名なベンチャー経営者に起業家志向の大学生がついてまわる「カバン持ちプロジェクト」は、大手メディアにも取り上げられています。
こうした取り組みを拡大するために私はリクルートを卒業し、会社を立ち上げました。
HIP
松谷さん自身も起業家として挑んだのですね。
松谷
誰も開拓していない場所へレールを敷く仕事に、やりがいを感じるんです。当時の日本では、起業家を大量に輩出する取り組みは誰もやっていませんでしたから。

当然しんどい局面もありました。誰もやっていないということは、ビジネスモデルも市場もないということ。国からの受託事業であれば食うに困ることはありませんが、自前で民営化する際には大きな借金もしました。最大で2億円ほどの借り入れがありましたね。

リクルートでの経験を生かしてILSを立ち上げた松谷卓也氏
HIP
そうした苦労があり、大きなリスクも背負いながら、ILSへと取り組みを進化させた背景には何があったのですか。
松谷
ドリームゲートプロジェクトを始めて10年目のタイミングで、「培った経験やネットワークを生かしてさらに世の中のためになることをやれないか」と考えたんです。
日本には優れた技術があり、研究機関があり、意欲的な大企業も多い。だけどGAFAMに代表されるようなグローバルな強者はなかなか生まれない。その要因は各セクターの「ムラ(村)化」にあると見ていました。
HIP
セクターのムラ化とは。
松谷
イノベーションは良い技術があるだけではなく、それをもとにビジネスを立ち上げる人がいて、また資金を援助する人がいてこそ成り立ちます。でも2014年当時は、大企業やスタートアップ、アカデミアの各セクターが閉鎖的な集まり、つまりムラになっていて、相互交流はほとんど見られませんでした。
アメリカでは盛んなセクター間の人材交流も、ほぼ皆無。こうしたボトルネックを解消することが新しい目標になりました。
そこで交流のあった著名な財界人を頼り、数十人もの有力大企業のトップに向けた紹介状を書いてもらい、接点をつくったうえで趣旨を説明していきました。結果、約30人の大企業トップに発起人となってもらい第1回のILSを開催できました。
現在は2万人近くが集まるイベントになりましたが、最初は800人くらいだったんですよ。
2015年の2回目から虎ノ門ヒルズフォーラムで開催していて、今年で10回続けて虎ノ門で実施していることになります。
10回連続で虎ノ門での開催となるILS

CESやSXSWなどの有名イベントと肩を並べ、グローバルトレンドが生まれる場へ

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