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東日本大震災直後に社長に就任。逆境から会員定着率95%を実現したスポーツジムの躍進劇
株式会社ルネサンス 代表取締役社長執行役員 吉田正昭
2016.04.04

新規入会者の定着率を上げるために必要なのは、アナログでの顧客接点をどれだけ増やすかということに尽きますね

HIP:スポーツクラブ ルネサンスは現在、新規入会者の3か月定着率が95%以上という業績を誇っています。震災での会員数減少からの復活のみならず、定着率まで上昇させた秘訣はどういったものなのでしょうか。

吉田:アナログでの顧客接点をどれだけ増やすかということに尽きますね。全スタッフに顧客との接点を指定の回数以上持つよう義務づけし、お客さまと会話する機会を増やしました。話すことでお客さまのニーズを知ることができれば、サポートしやすくなりますから。最初は挨拶だけでもいいから声をかけるようにして、慣れてきたら徐々にいろんな話をしていこうという方針を取りました。

HIP:既にできているコミュニティーに加わることが億劫になって、通わなくなってしまう方も多そうですよね。

吉田:そうなんです。会員の方も、クラブの中で自分の居場所ができたり、動きのパターンができると辞められないんですよ。それが確立できずに辞められてしまう人をなくそうという気持ちで続けていたら、定着率が毎月上がってきたんです。現在はITを使って優先的にコンタクトを取るべきお客さまがわかる仕組みを作り、活用しています。

HIP:それはどういった仕組みなんですか?

吉田:利用記録がすべてデータベースに入っていて、お客さまがチェックインされたときに全スタッフに伝わるようになっているんです。コンタクトをとる優先順位はいろんな条件から導き出すのですが、例えば2か月ぶりに来られた方がいたとしたら、まずはその方のところに行って「お久しぶりですね」とお声がけしたり。そして、運動は大きな成果が出るまで半年から1年かかるものなのですが、1か月ごとに「少し筋肉がついた気がしませんか?」など小さな変化もお客さまに伝えてあげる。そうすることで「よし、もう1か月頑張ってみよう」という気持ちになると思うんですよね。

日本人スタッフとベトナム人スタッフが、一緒に作っていこうというマインドで取り組めたのが良かったと思います

HIP:2013年からはベトナムに進出されていらっしゃいますが、初の海外進出をベトナムにした理由はなぜなのでしょうか?

吉田:調べてみてわかったのですが、ベトナムでは水難事故が少なくありません。泳げない人が多いんです。現地のプールを視察したときは、深さが2メートルもある上に、塩素注入機もろ過機も故障していて、水の色が緑になっている状況で。間違っても入ろうとは思えない(笑)。それぐらい水に関する環境が良くなかったです。「国としてもバックアップするので水泳を広めてほしい」というお話をいただいたので、まずは水泳から参入することにしました。その後独資で会社を設立し新たにフィットネスの展開にも取り組み、2014年にハノイに1号店を出店しました。

HIP:ベトナムに進出されたのはそういう理由だったんですね。

吉田:それと、日本のスイミングスクールの仕組みは独特で、10とか20とかの段階を設けて1個ずつ上がっていくというスタイルが確立されています。こうした日本の指導法が、ベトナムの兵隊が採用していた階級制にも重なるので、うまくマッチングするんじゃないかと思ったんです。

HIP:その際、スタッフは現地で募集されたのですか? お客さまも当然現地の人になるわけですから、日本との文化の違いなどでご苦労された点もあるかと思うのですが。

吉田:現地スタッフを採用するにも、どんな人が来るかもわからないですから苦労しましたね。でも、結果的にとてもいいスタッフが集まってくれました。今、ベトナムで経理部門の部長をしているベトナム人女性は、この事業に魅力を感じて、以前働いていた会社よりもお給料が安いのに来てくれたんです。そういう人たちを多く採用できたのも大きかったですし、もちろん日本からも当社のスタッフたちが現地に行って研修を行いました。

HIP:日本でのやり方を共有していかれたのでしょうか。

吉田:そうではなく、「一緒に作っていこう」というマインドで取り組めたのが良かったと思います。当社の社員には熱い人間が多いですから。そうしたマインドが受け継がれ、2015年10月にハノイに2号店をオープンした際には、1号店のスタッフが2号店のメンバーを育ててくれたんです。ベトナムは離職率が非常に高い国らしいですが、初期に入社した人はほとんど辞めていないそうで、これからまた新しい店を作っても大丈夫だなという安心感がありますね。

HIP:今後、他のアジア諸国への出店も視野に入れているんですか?

吉田:いろいろとお話はいただいているのですが、ベトナムに出店できたからと言って他の国でも出店ができて成功するという保証はないんですよね。カントリーリスクは国ごとに違いますから、マーケティングを含めてしっかり勉強しないといけないと思っています。

僕の熱さと同じ熱さを、みんなに持ってほしい。同じ温度でいくことが大切だと思うんです

HIP:ルネサンスに入社して以来、さまざまな苦境や新たな挑戦に立ち向かわれてきた吉田さんが、会社としてのモチベーションを向上させるために大切だと思っていることは何ですか?

吉田:目標の決め方でしょうか。何かしようとしたとき、ストレッチできる範囲がどこまでかっていうことを考えるんです。その範囲を超えてしまうと、紐が切れてギブアップしちゃいますから、ここまでなら行けるという範囲を見極め、その最大を目標にするようにしています。

HIP:その範囲の見極めはどのように行うんですか?

吉田:最初のプランを見た時点で、だいたい自分の中で答えは決めます。ただ、それを社長が言ってしまったら、みんな「わかりました」で終わってしまうので、極力みんなの意見を先に聞くようにしています。特に業績の悪い時期なんかはその見極めがうまくいかなくなりがちなので、お店の巡回をするようにしていました。1時間のミーティング時間を取り、社員もアルバイトも来たい人は来るという形をとると、多いときは30人くらいが来てくれるんです。そこでまず僕が40分くらい、会社の方向性だったり、震災の話だったりをして。そして、残りの20分はみんなからの質疑を受ける時間にして、どんな質問でもいいから訊いてくれということをしていました。そうすると、やっぱり距離が縮まるんですよね。

HIP:直接コミュニケーションを取ることが大切だと。

吉田:今は部長職が同じことをやっていますけど、それをすることで僕の熱さが現場にいる人たちにまで届くというか。僕の熱さと同じ熱さを、取締役や役員にも持ってほしいし、その熱さを部長からエリアマネジャーや支配人に伝えてほしい。同じ温度でいくことが大切だと思うんですよね。

HIP:ここまで主に吉田さんのお仕事に対する想いをうかがってきましたが、最後に吉田さんの個人的な今後の目標を教えてください。

吉田:まずは、趣味のゴルフでどこまでスコアを伸ばせるかといったところでしょうか(笑)。それと、社内社外の友達との接点、ネットワークというのは持ち続けていきたいですね。まったく違う分野の方も多く、そこから刺激を受けることもありますし、意外なアイデアのヒントをもらうこともありますから。人との繫がりをさらに強く、広くしていくというのが、これから先の自分の「生きがい」になっていくと思います。

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