INTERVIEW
AIを誰もが使いこなせる未来へ。ソニーとUEIが融合したギリアの挑戦
清水亮(ギリア株式会社 代表取締役社長) / 齋藤真(ギリア株式会社 取締役副社長) / 数藤剛(ギリア株式会社 財務・管理担当取締役)

INFORMATION

2019.03.29

SHARE

AI普及への第一歩は、マニアの遊びを「くだらない」と切り捨てないこと

HIP:現在、AIはある種のバズワードとして扱われている気もします。みんなが思い描くような世界も「少しずつ実現する」と伺いましたが、いまはまさに本格的なAI時代の入口、黎明期なのかもしれませんね。

清水:いまの状況は、パソコンが出はじめた頃に似ているのではないでしょうか。1976年に「TK-80」(NECが発売したマイクロコンピューターシステム開発のためのトレーニングキット)が発売され、その翌年にAppleから「Apple II」が発売されました。どちらも発売当初には、つくった人たちでさえ、なにに使われるべきものかがよくわかってなかったんです。

でも、1979年にApple IIで動く表計算ソフトのVisiCalc(以下、ヴィジカルク)が発売されて流れが変わりました。アメリカでは個人で確定申告しなければならないので、おのずとヴィジカルクが重宝されるようになったんです。その後、日本では年賀状文化の影響で、ワープロが普及しました。

それぞれの国や文化に合ったツールがブレイクスルーのきっかけをつくり、いまでは、世界中の人がビジネスの場面でパソコンを使っています。いまでこそ当たり前の光景ですが、パソコンが誕生したときは、ビジネスで使えるようになるとは、誰も予測していませんでした。当初は、マニアがゲームで遊ぶときくらいしか使われていなかったですから。

HIP:いま、一般消費者にとってAIは、まさに当時のパソコンと同じ認識だと。

清水:はい。実際に、技術のあるAIマニアは、AIを使ってハリウッドセレブの顔を3Dで描いたり、二次元キャラをつくったりしているんですよ。

ただ、それをくだらないと切り捨てるのではなく、よりクリエイティビティーを発揮できる環境をつくってあげたり、マニアでなくてもAIのプログラムができる仕組みを整えてあげたりすることが大事。それこそが、一般消費者にAIを普及させるための第一歩なんです。

HIP:2018年末にギリアが発表した「Deep Analyzer Lite(以下、ディープアナライザー・ライト)」は、マウス操作だけで深層学習AIの開発、訓練、検証ができるソフトウェアで、まさに誰もがAIを手軽に使える仕組みです。「そんなことにAIを使うの?」という専門家では思いつかないアイデアが生まれるかもしれませんね。

清水:それがぼくらのいちばんの狙い。パソコンにとってのヴィジカルクのように、AIも「なにか」がきっかけでブレイクスルーが起こるはずです。

ヴィジカルクは、Apple社がつくったわけではありませんが、Apple IIというプラットフォームがなければ、ヴィジカルクは生まれなかった。同じように、AIのブレイクスルーとなる「なにか」が生まれるためのプラットフォームを、弊社で握っておきたいのです。

そこからブレイクスルーが起きれば、必然的にギリアのAIプラットフォームも普及しますからね。

期待されているはずのAIが、「幻滅期」に突入。導入企業の傾向から得た感触

HIP:ワクワクしますね。一方で、BtoB領域では、すでにギリアは存在感を発揮しています。AIを活用し、橋梁のひび割れを検出するシステムをパートナー企業と共同開発したり、金融会社の業務効率改善を実現したり、主に大手企業をいくつもサポートしています。企業からはどういった要望が多いのでしょうか。

齋藤:最初は各社さまとも、コスト削減にAIを活用されますね。ただ、それだけでは、どうしても弊社の事業としては成長の余地がなくなっていくので、事業成長が期待できなくなってしまう。むしろ、付加価値を生むAI活用を推進していきたいと思っています。

HIP:コスト削減にAIを活用する企業が増えたのは、なにか理由があるのでしょうか?

清水:時代背景も影響しているかもしれません。IT分野の調査を行うガートナー社が発表したレポートでは、AIはハイプ・サイクル(特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示すグラフ)で見ると、「幻滅期」に入ったといいます。

幻滅というと聞こえは悪いのですが、つまりできることとできないことがわかってきて、「過度な」期待を持たなくなったということ。そのうえで、より具体的にAIをどう使えばいいかを検討する時期にきている。時代や社会に求められる最適なAIの活用法を推し進めていけば、順調に進化を遂げていくはずです。ギリアのように実業としてAIに取り組んでいる企業にとっては、非常に都合がいい状況といえますね。

齋藤:今年に入ってから、とくに潮目が変わった気がしています。いままでは単純に実証実験で終わっていたお客さまが多かったのですが、継続的に業務にAIを取り入れたいというお問い合わせが増えている。

先ほどの清水の話にも通じますが、「AIはなにに使えるのかわからない」「マニアが使う」というイメージから、少なくともビジネスでは、「業務に使えそう」といったイメージに変わりつつある。まさに、普及への取っ掛かりが見えはじめていると感じています。

ベンチャーと大企業の異文化統一。お互いの良さを活かした会社の築き方

次のページを見る

SHARE

お問い合わせ

HIPでの取材や
お問い合わせは、
下記より
お問い合わせフォームにアクセスしてください。

SNSにて最新情報配信中

HIPでは随時、FacebookやWebサイトを通して
情報発信をいたします。
ぜひフォローしてください。