INTERVIEW
『HIP Fireside Chat 2018 変化の時代、リーダーは何を語る?』レポート
児玉太郎 / 村上臣 / 脇雅昭 / 阿部広太郎 / 松本真尚 / 大隅雄策 / 山川恭弘 / 梅澤高明

INFORMATION

2018.05.29

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2017年に引き続き、今年も開催された『HIP Fireside Chat』。「Fireside Chat」とは海外のビジネスコミュニティーではよく行われている形式のトークイベント。直訳すると「暖炉脇の会話」となるこのスタイルは、ラフな会話を覗き見するようにカジュアルに参加できることが特徴だ。

2018年の開催テーマは、『変化の時代、リーダーは何を語る?』。産官学それぞれの分野で東京を代表する4名と、彼らにフックアップされた「いま対談したい相手」4名、計8名の方にご登壇いただき、「リーダー」をテーマにカジュアルな議論が行われた。

取材・文:飯田光平 写真:玉村敬太

LinkedInで部下をエンパワーメントするという意識を学び、明らかに業務効率が良くなった。

最初に壇上に上がったのは、アンカースター株式会社CEO / Kickstarterジャパンカントリーマネージャーの児玉太郎氏。児玉氏がいま話を聞きたい「次世代のリーダー」と考えて招待したのが、LinkedInカントリーマネージャーの村上臣氏だ。

国外のサービスを国内に向けてローカライズするカントリーマネージャーの肩書きを持つ二人。前職のヤフー株式会社では同僚関係にあったという二人のセッションは和やかな雰囲気でスタート。日系企業と外資系企業の働き方の違い、そこで得られるスキルセットについて話は深まっていった。

写真左より、児玉太郎氏、村上臣氏

村上:そもそもぼくは、「カントリーマネージャー」という仕事を知らなかったのですが、児玉さんがFacebook Japanのカントリーマネージャーとして活躍する姿を見て、こんな仕事もあるんだと興味を持ったんです。でも、ぼくは外資系で働いたことはなかったし、児玉さんのように帰国子女でもなかった。

それなのに2017年に外資系企業のLinkedInに転職して、カントリーマネージャーに就任してしまったんです。企業内のカルチャーも違うし、英語ができないので大変でした。世界で一番英語ができないカントリーマネージャーですよ(笑)。

LinkedInは、世界で約5億6,000万人のユーザーを抱える、ビジネスに特化したSNSです。仕事のスキルアップに役立つ情報を掲載したり、転職先を探したり、ヘッドハンティングを行ったりする目的で利用されています。

児玉:ぼく自身がFacebook Japanで感じたことなんですが、外資系企業ではリーダーシップのあり方が日本企業とは全然違うじゃないですか。会社のカルチャーとして、どんな違いを感じましたか?

村上:まず、LinkedInは日本企業では考えられないぐらい変な人が多いですね(笑)。人材を扱っている会社なので、人への気遣いが徹底しています。上司と一対一で話すときも、まず「なにか困ってることある?」って最初に聞かれるんですよ。日本企業だと「これお願いしたいんだけど」というように、指示がくるのが普通じゃないですか。なので、最初は何と答えていいかわからなかったぐらいですよ。

児玉:上司と部下は上下関係ではなく、役割の違いっていう考え方で、お互いの役割を尊重しているからこそ無駄がないんですよね。そうした違う環境に飛び込んでみて、得られた一番の学びってなんですか?

村上:一番は部下との接し方ですね。外資系企業は部下をエンパワーメントする意識、自分じゃなくどうチームをうまくワークさせていくかという考えが徹底されていますね。転職してからは、自分のなかでリーダーシップの定義が変わりましたね。

また、日本だと指示系統が階層構造になっているから、ぼくが指示を出したとしてもアクションにつながるまでに時間がかかるし、繰り返し稟議が行われます。LinkedInでは一度仕事を預けたらメンバーがパラレルで仕事を進めてくれるから効率がいいんですよね。この考え方は、今後どこで働くにしても参考にしていきたいですね。

一歩でも挑戦すれば、仲間が集まる。だから、やらないよりやったほうが得です。

次の登壇者は、神奈川県庁に務める公務員として「よんなな会」を主催する脇雅昭氏と、彼が選んだ新しいリーダー、電通のコピーライターである阿部広太郎氏。二人がトークのテーマとして選んだのは「挑戦する言葉」だった。

写真左より、脇雅昭氏、阿部広太郎氏

脇氏が主催する「よんなな会」とは、「47都道府県の地方公務員と国家公務員が一堂に集まる場」というコンセプトのもと行われる「飲み会」形式のミートアップイベント。ラフな雰囲気のなかで、それぞれの思いや志を楽しくぶつけ合う場を目指しているという。

:日本では2017年現在、約274万人の地方公務員がいるそうです。すごい数だと思いませんか? 公務員の志やスキルが1%上がれば世の中がめちゃくちゃ良くなるんじゃないか? そういう思いからよんなな会を立ち上げました。

行政だけでは解決できないことがたくさんあるんです。なので、公務員だけでなく民間の人も巻き込んで「ニュルッとした組織体」をつくりたいんですよね。同じ組織じゃなくても、緩やかにつながって、なにかをしたいときに相談できるような。そういう考えのもとイベントを全国で展開して、仲間を増やしながら広げていっています。

「日本一飲み会をしている公務員」と自称する脇氏は、「人類史上、人と人が一番つながりやすい」いまこそ、社外に仲間をつくることで、あらゆる価値を最大化し、インパクトのある仕事ができる時代だと続けた。そして、その仲間の一人が、株式会社電通のコピーライターとして働く阿部広太郎氏だ。

阿部氏が携わった仕事のなかで、最もインパクトを与えた言葉が予備校講師・タレントである林修氏の「いつやるか、今でしょ!」だろう。制作チームの一人として世に送り出したCMは、3年かけて、じわじわと世の中に広まり2013年に流行語大賞を獲得するまでに至る。

阿部:ぼくは、社会に役立つ価値あるコンテンツをつくって広めることで、世の中に一体感をつくりたいという思いで仕事をしています。だから、コピーライティングの仕事に加え、イベントや映画のプロデューサーなど、幅広く「企画」の仕事をさせてもらっているんです。

「企画」は「クリエイティブ」と呼ばれる一部の方が専門的にする仕事とイメージされることも多いのですが、じつはみんな日常的にやっていることなんですよね。

たとえば、人事の仕事でも、淡々とこなすだけでなく、どうすれば人が変わるかを企てて新たなプログラムをつくることはできます。「誰かを幸せにしたいという意志」が企画を考えるときの根幹にあると思うんです。「企画」にはピンチでも逆境をひっくり返したり、新しい景色を見せてくれたりする力があるんですよね。それを誰もが自分の持ち場で発揮できるといいなと思うんです。その思いから企画する人を増やす講座「企画でメシを食っていく」の開催もしています。

セッションの後半で、二人は「挑戦の言葉」として、それぞれが大事にしている言葉を発表してくれた。まず脇氏が掲げたのは「0より1のほうがいい」というもの。

:なかなかチャレンジができない人は、完璧を求めすぎなんじゃないかと思うんです。ぼくは自分に甘いんで、70%でいいじゃんって思ってとりあえずやってみるんですよ(笑)。で、まず一歩踏み出すと仲間ができるんです。仲間が増えるなら、失敗しても、挑戦したほうが得だって思えるじゃないですか。そういう意味で、0より1という考えを大事にしています。

もう一つが「直感は36年もの」という言葉です。いま自分の持っている直感は、私が36年間生きてきたなかでの経験から導き出されたもの。言語情報だけでなく、身体で感じた非言語情報も自分の中に蓄積されているはず。だからこそ、頭でっかちにならず、直感を信じてもいいんじゃないかって思うんです。

阿部:いいですね。ぼくは「資本主義から関係主義へ」というのが最近のテーマです。最初から儲かることを意識しすぎなくても、新しい仲間が増えたり、関係が生まれたりするのであれば、いつか利益は回収できると思っているんですよね。好奇心ファーストで行動を起こしていくことがこれからは大事になっていくんじゃないかと思っています。

シリコンバレーでは、新しいアイデアを「見つける」だけでなく「持ち帰れるか」がカギ。

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