INTERVIEW
海外進出に必要な「もう一人の創業者」カントリーマネージャーとは? VC代表が語る
アリソン・バーム(Fresco Capital マネージングパートナー)

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2017.09.02

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日本企業のビジネスを映画に例えるなら、ハリウッド映画のトレンドを勉強して、邦画につくりなおしているようなもの

HIP:日本企業は海外マーケットの最新事情には目を向けても、実際に進出はしていかない、と。

児玉:そうなんです。映画で例えるならば、ハリウッド映画のトレンドやヒットの法則を勉強して、邦画につくりなおしているようなものです。ただ、私がやりたいのは、実際に海外企業との取り組みを増やすこと。つまり、自分がハリウッド映画をつくる、出演するということなんです。

それはいままで眺めているだけだったコンテンツのなかに入り込むということ。日本人はその瞬間に苦手意識が出るんです。言語、カルチャーの壁、ゴール設定の違いなど、いろんな壁がありますからね。

HIP:その壁を乗り越えるお手伝いをするのが、Fresco CapitalやAnchorstar Inc.の役割でもあるんですね。

児玉:そういうことです。人間同士、言語の壁はあってもちゃんとした関係をつくれれば、一緒に仕事することはできるんです。それを日本企業のため、ひいては日本のためにやりたい。

日本にたくさんのスタートアップを連れてこようとしているアリソンがいて、それを求めている私がいる。お互い同じ目的に向かって逆のアングルから歩んでいたんですよ。なので、すぐにビジョンを共有し、素晴らしいパートナーシップを結ぶことができました。

HIP:日本企業が海外進出に苦手意識を持つ最大の要因はなんだと思いますか?

児玉:一番は、違うルールのなかで仕事をすることへの不安感じゃないですかね。例えば日本には独自の稟議プロセスがありますよね。ある意味では素晴らしいと思いますし、アリソンも面白い仕組みだと言っています。ただアメリカだと、ある程度の権限を持った人が握手した瞬間に話が決まり、部長や次長、執行役員の判子はいらないということもあります。日本だと社長同士が握手したあとも稟議書が必要ですからね。

そんな日本人の感覚からすると、打ち合わせの後に外国人と握手することすらも怖く感じてしまうんです。「ここで握手したら、約束することになってしまうのではないか?」と考えてしまいますから。こういった両者の間に入ってビジネスカルチャーの違いをシェアすることで、お互いにとってちょうどいい進め方を見つけることが私やアリソンの役割だと思っています。

自社の欠点を把握できなければ、パートナーを見つけることすらできません

HIP:アリソンさんはグローバル市場に進出するうえで、日本人に必要なマインドやスキルはどういうものでしょうか?

アリソン:日本人だけに限りませんが、第一に海外のマーケットや商習慣を知らないことに気づくこと。そして、その事実をちゃんと受け入れることです。

児玉:耳が痛いのですが(笑)、これは本当に苦手なんですよね。「私たちはグローバルレベルの会社だ」と海外の人たちにいい顔をしたい。だから、わからないことをわからないと言えない。小さなことに思えるかもしれませんが、こういったことが本当に障壁になっているんですよ。

アリソン:「いい顔をしたい」は誰もが思うことですが、成功するためには自社の欠点を把握し、相手に伝えることも必要です。その欠点を伝え、受け入れた上で、自社の強みも引き出してくれる存在こそがベストパートナーなので、それに気づけなければ、パートナーを見つけることすらできません。

児玉:日本企業は、すべてが自社内で完結していないと不安になる「自前主義」なんですよね。でも、たとえば海外には、事業を回していくための機能部分を担えるスタートアップが多いんですよ。御社の営業プロセスを改善します、在庫管理をやります、とか。

グローバルなビジネスって、そうした特殊技能を追求した会社の集合体で仕事をしている感じがあるので、日本企業も自社の不得意なところを認めて、相性のいいパートナーと組めばいい。インターネットによってそれが世界規模で可能になったことは、ここ10年で起きた劇的な変化だと思うんです。

HIP:なるほど。見栄を張らずに補い合う関係性が必要なんですね。

アリソン:組織に足りていない点を共有していただければ、必要な機能を補える企業を私たちの投資先から紹介することも可能ですし、サポートを行うこともできます。

あとはビジネスに対するモチベーションが重要ですね。どんなビジョンを持って、そこに熱意を向けて取り組んでいるのか。私たちが投資を行なっている企業をサポートするとき、ビジネスとしての成功だけを考えるのではなく、企業の価値観やモチベーションにあったマーケティングができているかどうかを検討し、そのビジョンを達成するまでの道筋をサポートしているのです。

児玉:海外企業の担当者にミッションを聞くと、どんなに小さい会社でも「世界のこんな課題を解決して、こういう価値をもたらすんだ」と熱弁するんです。日本の企業でもグローバルなビジョンを語る人はいますが、演出だったりすることも多い。ほとんどの担当者から聞こえてくるのは、国内市場でどうやって勝つかという話ばかりです。世界で成功するポテンシャルがあるのに、国内の競合ばかりを意識しているんです。

アリソン:海外でビジネスを行っていくためには、ミッションがグローバルスケールである必要があります。そして、実際にビジネスをするときに大切なのは、クライアントと結んだ約束をできるだけ早く果たすことですね。同じスピード感で進めることで信頼を得られますし、長期的なパートナーシップにもつながります。

児玉:KickstarterやFacebookのカントリーマネージャーとして、ぼくも逆の立場か経験しているのですが、日本企業では、稟議書を通したあとにも細かい手続きが多い。海外の人はそうしたフローを知らないので「やるって決めたんだから早くやろうよ」「本当にやってくれるのかな?」と不安になってしまうんです。そういった部分ですれ違うことは多いですね。

アリソン:スタートアップにとって長期間待たされることは、企業がつぶれてしまうリスクにもなりますからね。また、日本とは反対に、実現できないことを簡単に約束してしまう傾向の国もあります。それぞれの国ごとに課題は違うので、現地の文化に精通しているローカルのパートナーが重要になるわけです。

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