通じ合えなかったはずの会社がつながる瞬間に立ち会える。これがカントリーマネージャーという仕事の醍醐味です
HIP:カントリーマネージャーの面白さとは何でしょうか。
児玉:私はKickstarterのジャパンカントリーマネージャーとして、サービスを普及させるミッションを背負っています。でも、日本で働いている以上は、マーケティングを行うだけじゃなく、やっぱり日本企業と仕事をすることが醍醐味なんですよね。
たとえば、なかなか決断に踏み切れない日本企業の担当者と話しているとき、Kickstarterの創業者たちのパッションがぼくに憑依することがあるんです。それが相手に伝わったとき、「そこまで言うならわかったよ。お前を信頼するよ」と、大きな決断してくれることがある。こういう瞬間が面白い。
アリソン:私はカントリーマネージャーではないのですが、ファウンダーのピュアな情熱が伝わった瞬間というのは嬉しいですね。
児玉:カントリーマネージャーは2つの国の人々に接しながら、それぞれに共感しつつ、2つの顔を持って調整しないといけません。そうした仕事をしていくなかで、通じ合えなかったはずの会社がつながる瞬間に立ち会えるのが、カントリーマネージャーという仕事の醍醐味の一つですね。
HIP:カントリーマネージャーという肩書は、日本でまだ一般的ではないと思いますが、海外ではどうなのでしょう。
児玉:営業活動に注力する場合は「カントリーセールスマネージャー」だったり、ぼくがFacebookに在籍していたときはユーザーを増やすことが主なミッションだったので「カントリーグロースマネージャー」という肩書でした。役割によっても変わりますね。ただ、その国の責任者という意味ではどちらも同じです。
Facebookでは各国のカントリーマネージャーを集めて世界展開のミーティングを行っていましたし、Kickstarterでも各国にカントリーマネージャーがいます。本国から送り込まれることもありますけど、基本的にはローカルの人に任せることが多いですね。
HIP:本国から派遣される人とローカルの人では、どんな違いがあるのでしょうか?
児玉:全然違うんですよ。よくあるのが、日本語が少し話せる本国の担当者が来日するケース。本社側の気持ちを代弁できるかもしれないけど、日本のマーケットや企業の体質、ユーザーの気持ちを汲み取りきれないのでうまくいかないことが多い。それができる人ならもちろん外国人でもいいんですけど、ローカルの人のほうが気持ちを汲み取りやすいんじゃないかな、と。
自分の枠の外に出て、新しい仕事を見つけられる人ならば、どんどんビジネスの可能性を広げていくことができるはずです
HIP:カントリーマネージャーにはどんな人が向いていると思いますか?
アリソン:まず一番大事なのは、太郎さんも言うように、いろいろな人々の気持ちや価値観も含めてビジネスをつないでいくための共感能力。2つ目が会社のビジョンにどれだけパッションを持てるか。そして、3つ目は自分自身をマネジメントする能力。カントリーマネージャーは、担当する国でプロジェクトの最初から最後まで立ち会うことになるので、その国で行うビジネスのすべてをオーガナイズできるかが重要なのです。
HIP:お話を聞いていると、経営者に近いイメージを抱きました。
児玉:そうですね。その国でサービスを語れる代表者は自分以外にいない、という状態なわけですからね。「Kickstarterはなぜできたんですか?」って聞かれたときに、児玉太郎として答えるのではなく、創業者的な視点から答えなければいけない。だから創業者を憑依することができる人かもしれません。「私は現地に行けないからお前に任せる」と、創業者からサービスを預かる仕事ですからね。
アリソン:そういう意味では、カントリーマネージャーに必要なのはクリエイティビティーかもしれませんね。初めての国で誰もやってない仕事を成し遂げるわけですから。自分はビジネスの経験が浅いからカントリーマネージャーになれないと考えてしまう人もいるかもしれません。でも、自分の枠の外に出て、新しい仕事を見つける力のある人なら、その国でどんどんビジネスの可能性を広げていくことができるはずです。