INTERVIEW
海外進出に必要な「もう一人の創業者」カントリーマネージャーとは? VC代表が語る
アリソン・バーム(Fresco Capital マネージングパートナー)

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2017.09.02

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海外企業が外国のビジネスシーンに参入する際、商慣習、言語、人材獲得、オフィス開設などさまざまな参入の障壁にぶつかる。そうした問題をクリアするために必要なのが、各国のビジネスカルチャーに理解を持ち、橋渡しを行う「カントリーマネージャー」という人々である。

元Facebook Japanカントリーグロースマネージャー、現在はニューヨークに拠点を置くクラウドファンディングサービス「Kickstarter」のジャパンカントリーマネージャーを務める児玉太郎氏は日本におけるその第一人者。自身の経営するAnchorstar Inc.の代表としても海外企業の日本進出のサポートを行なっている。今回は、そんな彼とパートナーシップを組み、世界中のスタートアップへの支援、投資を行っているFresco Capitalのアリソン・バーム氏とともに、それぞれ違った立場から海外企業と日本企業の関わり方、カントリーマネージャーという仕事の魅力について語ってもらった。


取材・文:HIP編集部 写真:玉村敬太

少子化や高齢化を解決できれば、10年後に同じ問題を抱えるアメリカやイギリスでもうまくいくかもしれない

HIP編集部(以下、HIP):まず、お二人の仕事内容から教えていただけますか?

児玉太郎(以下、児玉):私はKickstarterのジャパンカントリーマネージャーを務めていて、代表を務めているAnchorstar Inc.でも、同じように海外企業の日本進出のサポートをしています。アリソンたちが運営するベンチャーキャピタル「Fresco Capital」とはパートナーシップ契約を結んでいて、彼女たちが投資するスタートアップ企業が日本のマーケットに参入する際にサポートを行うのも私の役割なんです。

アリソン・バーム(以下、アリソン):太郎さんのような仕事をしてくれる方たちをFresco Capitalでは「ベンチャーパートナー」と呼んでいて、世界12か国にパートナーがいます。そのなかでも焦点を置いているのが、アメリカ、ヨーロッパ、中国、中東、東南アジア、そして日本です。

左から、アリソン・バーム氏(Fresco Capital マネージングパートナー) / 児玉太郎氏(Anchorstar Inc.代表取締役 / Kickstarter ジャパンカントリーマネージャー)

HIP:日本のマーケットに進出したいというスタートアップ企業には、どんな狙いがあるのでしょうか?

アリソン:先進国といわれる国は、近い将来、少子高齢化や過疎化などの問題に直面します。そうした問題がいち早く起きている日本は、ヘルスケア、教育、未来の働き方などの課題に取り組んでいる企業にとって、興味深い環境でもあるんです。また、私たちとしてもそうした企業に投資し、日本進出を手伝うことで、これからのビジネスの流れを掴んでいくことができると考えています。

具体的には、アメリカやイギリスが10年後に日本と同じ問題を抱えるのではないかと予測しています。私たちが投資している企業が日本でうまく機能することができれば、そのノウハウを今後のグローバル展開に応用することができますからね。

HIP:ベンチャーパートナーについて、もう少し詳しく教えてもらえますか。

アリソン: Fresco Capitalは、私を含めた3人の創業メンバー全員が別の企業でカントリーマネージャーを経験していました。そのため投資先の海外進出も最初からサポートしていたのですが、2015年に来日したとき、日本には特有のビジネスの進め方があることを知ったのです。

アリソン:同時期に太郎さんと出会い、日本のローカルな文化やルール、システムに精通し、企業のビジョンとマーケットのギャップを埋めるパートナーの重要性に気づきました。ローカルなビジネスマナーは日本に限らず、アジア、中東、アメリカ、アフリカ、どこにでもあります。国ごとによって文化が違いますから、その橋渡し役が重要なんです。たとえば、日本に進出する企業の場合、まず彼らを太郎さんに紹介し、関係性を築きながら、マッチングしそうな日本企業とつないでもらうようにしています。

日本企業が得意なことは、効率良いプロセスを生み出すこと。そして、深い信頼に基づいたビジネスを行なっていること

HIP:日本に進出するとき、文化の違いに直面したとのことですが、具体的にはどんな違いがありますか?

アリソン:良い面も、悪い面もありますが、特に優れた点が2つあると思います。1つは、成功事例をコツコツと積み上げて、繰り返し、パターン化するのが得意なこと。効率の良いプロセスを生み出すことに優れているところは、他国の企業でも実装すべきだと思っています。

もう1つは、何を始めるにおいても価値観やミッションを共有し、信頼関係を築いて物事を進めていくこと。深い信頼に基づいて何かをやろうとすることによって、成し遂げられないような大きなことも実現可能になってくる。これは世界を見まわしても稀有なパートナーシップの築き方です。

HIP:児玉さんも、アリソンさんと同じような問題意識を持っていたのでしょうか?

児玉:私は海外のスタートアップを日本に誘致することに興味がありますが、いっぽうで日本企業が海外のスタートアップと仕事をする機会を増やしたいという気持ちも強くあります。というのも、日本企業の多くは自分たちが世界で戦えるポテンシャルがあることに気づいていないんです。これはすごくもったいないことだと思うんですよね。

HIP:海外展開に興味がないということでしょうか?

児玉:海外の情報には敏感で、どういうサービスが成功していて、どういう仕組みなのかなどはすごく知りたがる。だけど、違った環境が不安だからなのか実際には進出しないんですよね。海外の成功事例から要因だけを取り出し、自社のサービスに活かして、国内の競合に勝つことばかり考えている。これは日本企業の悪い面ですね。

日本企業が海外でビジネスを行うために必要なスキル、マインドとは?

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