「みんなで乗れる船」をつくる。Blue Labが担うメガバンクとしての責任
HIP:白河さんが手がけているどの事業も「横展開」を大事にされているんですね。
白河:Blue Labの基本は、「シェアリングの精神」なんです。人手不足が進むなか、もはや銀行が個々でソリューションを開発するような時代ではない。金融業界全体の課題解決のため、コストダウンやサービス向上に取り組みたいと考えています。最先端テクノロジーを活用したサービス開発は、規模の大きい会社でないとなかなか難しいので、Blue Labに期待を寄せてくれている他行も多いんです。
HIP:メガバンクの責任のようなものを感じます。それは、Blue Labの設立時から変わらない考え方なのでしょうか?
白河:そうですね。Blue Labの創立趣旨は、「オープンイノベーションによる業界全体の課題解決を行うこと」「すべての参加者の利益につながる座組みをつくる、プラットフォーマーになること」の二つです。代表の山田は「今後ビジネスの世界で生き残るにはプラットフォーマーにならなければいけない」と常々言っています。そのためには、業界の汎用的な課題解決ができることが求められる。そこに取り組めば、もちろん収益にもつながりますし、最終的に業界の収益構造、産業構造を変えていける可能性だってある。
とにかく、Blue Labでは「みんなで乗れる船」をつくることを最重視しているんです。
HIP:Blue Labでは、プロジェクトや事業はどのように立ち上がるんですか?
白河:自分の「やりたい」がある人が集まり、その思いを軸にプロジェクトを立ち上げています。日々、新たなプロジェクトが生まれ、つねに30くらいが並行して走っている状態ですね。
私のいまのプロジェクトの仲間も、主体的に手を挙げて参加してくれているメンバーばかりです。他の銀行から来ている方々も、自分自身の課題意識に対して、Blue Labのリソースを活用して取り組みたいという自発的な考え方を持つ人ばかりです。それぞれが主体となり、決裁は社長の山田の承認だけで、スピーディーにプロジェクトを進めています。
また、Blue Labでは外部パートナーと組むことが多いのも特徴の一つですね。AORのプロジェクトでも、WiLの紹介で、スタートアップのギリア株式会社と協働しました。日本のAI研究開発の最前線で長く活躍されている、清水亮さんが代表の会社です。
じつは開発の途中、なかなかいい結果が出ず、「取り組む課題として少し難しすぎたのか……」と諦めかけたことさえあったのですが、その際にもギリアを含めたチームでトライアル&エラーを続け、いろいろなアルゴリズムを試したおかげでうまくいったんです。AIという未知の領域において、ギリアのような経験豊富なパートナーの力を借りることができなければ、ここまでは来られなかっただろうなと思っています。
目指すはBlue Labからのスピンアウト。まずは地道な全国行脚から
HIP:AORは、今後どのように導入事例を増やしていくのでしょうか?
白河:ありがたいことに、1月にプレスリリースを出した後も、いくつかお問い合わせをいただいているんです。まずは興味を寄せてくれているさまざまな銀行と一緒に、実証実験を進めていきます。システムが間もなくリリースされるので、その後は全国行脚をして、地銀をまわりながら提案していく予定ですね。
当面はシステムと事業の立ち上げをしっかりやれればと考えていますが、一方で、Blue Labの本分はインキュベーション(新規事業の創出)であり、事業を行うことではないんです。その意味では、プロジェクトを事業として軌道に乗せて、一つの事業体としてスピンアウトさせるところまでがBlue Labのミッション。その第一号事例になるのが目標です。