AIで業界全体の効率化を。〈みずほ〉がプラットフォーマーを志す理由とは
白河龍弥(株式会社みずほフィナンシャルグループ デジタルイノベーション部 プロジェクト推進チーム シニアデジタルストラテジスト / 株式会社Blue Lab シニアデータサイエンティスト)
2019.03.11

バックオフィスは「非競争領域」。業界全体で取り組むべき課題だった

HIP:2019年1月末に出されたプレスリリースでは、地方銀行と一緒に実証実験を行っているとのことでした。たしかに他行の業務効率化にもつながると思うのですが、自社の競争優位性を明け渡すことにはならないのでしょうか?

白河:日本の銀行業界において、メガバンクと地銀のあいだには必ずしも競争関係の構図があるとはいえません。得意とするサービス領域や向かい合う顧客は、ある程度すみ分けができているためです。また、営業などのフロント業務では、どうしてもお客さまを奪い合うケースも発生してしまいますが、バックオフィスの事務業務は「非競争領域」と捉えているんです。たとえばメガバンク同士で、事務業務の一部を他行に委託することもあるんですよ。

HIP:銀行業界全体が抱える課題にも関わらず、なぜ誰も取り組んでいなかったのでしょうか?

白河:やはり一つには、手書きかつ非定形の帳票を読み取る、技術的な難しさがあったと思います。銀行が保有する膨大なデータを機械学習することで、どこになんの項目が書かれているかを自動的に特定できるようになったのが、技術的に大きなブレイクスルーでした。

また、機械学習というのは、基本的にトライアル&エラーで前進していきます。チャレンジしなければ効果が出るかわからない状況で、個人情報が多く含まれる銀行データを持ち出すことへの壁もあったんです。

仕事がなくなるのでは? と心配していたスタッフにも変化が

HIP:そのハードルは、どのように乗り越えたのですか?

白河:厳格に管理されているデータを持ち出すには、当然ながら社内の承認プロセスを経る必要があります。そのときに重要なのは、しっかりとした信頼関係を築くこと。データの所管部門や企画部門には、AIができることを他のプロジェクトの実績から示しつつ、AORのコンセプトを丁寧に伝えました。実績、計画、そして熱意。この三つが揃ったからこそ、プロジェクトスタートに踏み出せたと思っています。

HIP:ソリューションを現場導入する際には、どのような点に留意して進められましたか。

白河:プロジェクトを進めながら、社内に対してアピールしていくことは重要だと感じました。実証実験の結果などをこまめに社内外に発信し、プロジェクトの価値や意義を認めてもらえていると、次のフェーズにもスムーズに進みやすい。

また、現場の方とのディスカッションやすり合わせも大事でした。当初は「自分の仕事はなくなるのか?」という不安の声が多くあったんです。「そうではなく、人がやらなくていい部分を機械がやってくれるようになる。業務自体や職場がなくなるわけではない」と丁寧に説明しました。

また、現場からは「業務フローを見直すきっかけになった」という声ももらいました。「マニュアルに書いてあったから、なんとなく続けていた」という作業について「これは本当に必要な作業なのか?」と考えるようになったということでした。

「営業が上手い人」を定量的に分析。他行のコンサルに活かす

HIP:白河さんは、AOR以外にも、AIを活用したプロジェクトを手がけているんですか?

白河:そうですね。つねに3つくらいは並行して担当しています。最近は、「営業ハイパフォーマー」の分析を行いました。「営業が上手な人=顧客への提案が成功する人」の要因が何かを、定量的に分析する試みです。これまでは、「性格に愛嬌があるからじゃないか」とか、「トークがうまいから」とか、「所属する支店がたまたま優良顧客に恵まれていただけかもしれない」とか、経験による定性的な分析しかされていなかった。それをきちんとデータでサイエンスしようと。

HIP:再現性が高まれば、これまで成果を上げられなかった人の学習に活用できそうですね。これはAORと異なり、「競争領域」での取り組みに思えますが、他行への展開はしないのでしょうか?

白河:メガバンクと地銀はお客さまの層が被らないので、これも横展開していきたいと思っています。社内で完結するだけではもったいない。研修やコンサルティングを通じてノウハウを提供する事業にも、つなげられるのではないかと考えています。

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Blue Labが「横展開」にこだわる背景には、業界への大きな危機感があった

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