INTERVIEW
英語ではなくグローバルコミュニケーションを学ぶ。海外との事業を成功に導く英会話プログラムとは
金巻未来(アンカースター株式会社 シニアマネージャー)/ ネルソン・リン(Anchorstar English ヘッドコーチ)

INFORMATION

2025.03.31
取材・文:荒井洋平 写真:北原千恵美 編集:藤崎竜介(CINRA)

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グローバルビジネスの成功をゴールに据えた、ユニークな英会話プログラムが話題を集めている。

名は、Anchorstar English。剣道や茶道のような「道」をキーワードに掲げており、受講者は繰り返しの鍛錬や「型」の習得によって、グローバルコミュニケーションの力を養うことができる。

運営元は、海外企業との共創を支援するアンカースター。「言語ではなくコミュニケーションを教える」というこの一風変わったプログラムについて、アンカースターでシニアマネージャーを務める金巻未来さんと、ヘッドコーチのネルソン・リンさんに聞いた。

AI時代にきれいな英文を書く力は、さほど重要ではない

HIP編集部
(以下、HIP)
Anchorstar Englishはほかの英語学習プログラムとは大きく異なると聞きましたが、どういうことでしょうか。
金巻未来氏
(以下、金巻)

私たちは言語ではなく、グローバルビジネスを成功させるための、コミュニケーションを教えています。「道(どう)」と表現していますが、コミュニケーションを学ぶことは剣道や茶道や柔道を習得するようなものだと考えているんです。

いわば、「グローバルコミュニケーション道」ですね。

HIP
もう少し詳しく教えてください。
金巻

剣道や茶道では型(かた)を繰り返し稽古することで、身体に動作を染み込ませ、無意識に正しい動きができる段階をまず目指します。

そしてその先に、既存の型を超え、自在に応用できる境地がある。そこまで達すると、相手との駆け引きをしたり、毎回異なる状況に柔軟に適応したりできるようになるんです。

Anchorstar Englishも、それに似たアプローチなんです。鍛錬を続けるうちにある境地に達して、自分で成長を実感できるようになる。

コーチが「上達したね」と伝えるより、自発的な気づきをうながすことも大事にしています。

HIP
繰り返し、つまり反復の練習を重視しているのですか。
金巻

そうですね。その点はほかの英語学習と共通するかもしれません。現在新たなカリキュラムをつくっているのですが、反復のトレーニングはさらに強化する予定です。

もう1つ大事にしているのがシンクロナイゼーション、つまり相手と通じ合って深い理解を得ることです。相手と通じ合うための、さまざまな手法を教えます。

Anchorstar Englishの事業責任者を務める金巻未来さん
金巻

たとえばDoes that make sense? と理解度を確認したり、相手の言ったことをそのまま繰り返して理解していることを伝えたり。そういったテクニックを教え込んでいるのも、特徴ですね。

グローバルビジネスのシーンだと、関わる人のバックグラウンドや価値観がみんな違うので、スムーズに伝わることのほうが少ない。自分の言ったことがちゃんと伝わっているかを、確かめることが大事です。そのためのフレーズが、英語には結構あるんですよね。

ネルソン・リン氏
(以下、ネルソン)

一般的な英語のレッスンだと、TOEICの点数や、ネイティブっぽい英語を話すことなどを目標に定めますよね。でも、私たちのレッスンは少し違います。

目指すゴールは、ビジネス上の成功です。そのために必要なスキルや考え方を教えています。

HIP
日本の英語教育とも大きく異なる考え方かもしれませんね。
金巻

そうかもしれません。学校の授業だと、「きれいで正しい、完璧な英語」を目指しがちですよね。ただ私も英語を勉強していて思うのですが、ネイティブのレベルには、そうなれるものではない。だから、心理的ハードルが必要以上に高くなりがちなんですよね。

Anchorstar Englishでは、ネイティブ並みの流暢さは目指しません。もちろん発音や文法も大事にするのですが、それら以上に、まず相手と意思疎通することに重きを置くんです。

ネルソン
日本の英語の勉強は、数学と同じような教科の1つとしてとらえられています。英語はコミュニケーションの手段の1つということを、あまり教えられていない。
ヘッドコーチとして、Anchorstar Englishのカリキュラム作成などを主導するネルソン・リンさん
ネルソン

英語を教科として位置づけると、正解と不正解が生じて、多くの場合日本人の発音・アクセントは不正解となってしまいます。ですが実際、日本人風の発音でも問題ないんです。

インド人風やフランス人風の発音・アクセントがあるように、ビジネスでは特に多様性が受け入れられます。

HIP
それを踏まえると、授業の内容も変わってきそうですよね。
ネルソン

そうですね。たとえば一般的な英語の学校だと、ビジネスメールの書き方を教えますよね。Anchorstar Englishでもメールでのコミュニケーションを教えるのですが、少しやり方が違います。

生成AIにメールを書かせる前提で、プロンプトの書き方や、AIが書いた文章をどうやってチェックするかを教えています。AIが普及するいま、きれいな英文を書く力は、さほど重要ではないんです。

剣道や茶道のように「型」を習得するための秘密兵器とは!?

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