INTERVIEW
睡眠に悩む社会人を救いたい。帝人が挑む、企業向け「睡眠力向上プログラム」
佐藤暢彦(帝人株式会社 ヘルスケア戦略推進部門 デジタルヘルス事業推進部 部長) / 増村成嗣(帝人株式会社 デジタルヘルス事業推進部 B2B推進グループ グループリーダー)

INFORMATION

2019.10.30

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スタートアップ協業で得たもの。リスクとのバランスを見ながら、アクセルを踏むことの大切さ

HIP:もともと「Sleep Styles」はスタートアップとの協業から生まれたものだったんですよね。

増村:はい。いまでこそ帝人の単独事業ですが、BtoCを模索していた時期は、スタートアップと協業していました。主には、BtoC向けのメディアの企画・運営会社や、ヘルスケア系のサービス企業などです。「IT×ヘルスケア」の融合を目的に互いの知見を持ち寄って活動していました。

HIP:スタートアップと協業するなかで、どういったことが学びになったのでしょうか。

増村:私はもともと医療機器のエンジニアなのですが、彼らの知見はとても参考になりました。たとえば、企業向けの睡眠力向上プログラムで睡眠ログをとるためのアプリをつくるにしても、以前に協業していたスタートアップから学んだ知見が活かされています。

アジャイル開発をするうえで、どんなインターフェースであれば使ってもらえるか、そうしたデザインのノウハウも含め、彼らと組んだからこそできるようになったことは多いと思っています。

佐藤:増村のような医療機器のエンジニアは、普段は厚労省やPmda(医薬品医療機器総合機構)の審査をクリアするために、綿密に計画を立ててやっていく必要があるんです。まったく畑が違うのでスタートアップと事業を進めることに、増村も戸惑うことが多かっただろうなと思います。

増村:もちろん、戸惑うこともありましたが、学ぶべきことも多かったですね。何かを始めるときの意思決定の速さや、サービスを世に出してからアジャストしていくやり方などは、うちにはない文化。純粋にすごいなと思いましたし、学びになりました。

ただ、帝人のように、十分に石橋を叩いて、しっかりと確かめてからでないと外に出さないというやり方も、こと医療の領域においては変えるべきではありません。

ですから、見習えるべきところは取り入れながら、リスクとのバランスを見てアクセルの踏み方を調整することが大事なのではないかと思います。

医療は「信頼が第一」。攻めの姿勢をつくれない、帝人ならではの苦悩とは?

HIP:たしかに、「信頼が第一」の医療分野に取り組んでいると、「なんでもチャレンジする」というのは難しいですね。

佐藤:そうなんです。増村たちが睡眠のプロジェクトを立ち上げた当初、私はまだ帝人ファーマ側で睡眠の事業に携わっていました。帝人ファーマが医療領域でビジネスを行うためには、ドクターの信頼をいかに得るかが重要で、それには何よりしっかりとしたエビデンス(証拠)が求められます。

一方、睡眠事業で協力してもらっていた未病やヘルスケア領域の多くのスタートアップは、ドクターの確認などは必須ではありません。とにかくスピード勝負。まずはやってみて、失敗も許容しながらPDCAを回していく文化があります。

ただ、同じ屋号でやる以上、帝人ファーマが医療や睡眠の分野で築き上げてきた信用を担保する必要がある。こちらとしては、やはり慎重になってしまうんです。

HIP:たとえ医療ではない、ヘルスケア分野の睡眠事業でも、問題や誤りが発覚すれば帝人グループが40年築き上げた医療分野の信頼に傷がつくと。

佐藤:はい。そうしたスタートアップとの協業の難しさは、このプロジェクトに異動してきてからも感じていましたね。

ただ、彼らとの協業がなければ、ずっと「守り」に入っていたかもしれないので、「攻め」の姿勢を学べたのは確実にプラスです。違う企業文化や価値観に触れることで、気づくものはたくさんありますよね。

上からの締めつけがないから、柔軟なアイデアも生まれる。部下が働きやすくなる環境論

HIP:2019年4月にデジタルヘルス事業推進部が立ち上がり、睡眠プロジェクトもそこに属すそうですね。どんなチームなのでしょうか?

佐藤:現在の主軸は睡眠事業ですが、ヘルスケアに関するまったく別の新事業も併せて模索していくチームです。いまは睡眠事業のチームと、新規事業を企画するチームに分かれています。与えられているミッションはシンプルで、「とにかく新しい事業を起こせ」ということだけ。

会社からこの部署へ異動する内示をもらった当時、私と増村で飲みに行き、「社会の役に立つ仕事をしよう」と熱い想いを共有しました。ですので、われわれとしては社会課題を解決する事業をやりたいという思いがあります。

HIP:飲みの席でそんな熱い話が出るって、いい関係性ですね。

増村:別に上司だからと持ち上げるわけではありませんが、佐藤のようなフラットな人間が部長を務めてくれているので、仕事はかなりやりやすいですね。意見を言いやすい環境をつくってくれていると感じます。

それでいて佐藤には、帝人ファーマの既存の医療事業において長年積み重ねてきた確かな実績と、新規事業の部署で先進的な取り組みを進めてきた経験があります。そんな頼りになる上司が、トップの全幅の信頼のもと新しい部署にきてくれたわけですから、こんなに心強いことはない。帝人ファーマとの連携もより強固となり、やりとりも以前よりスムーズになりました。

佐藤:先進的というよりは、上からの締めつけがないのをいいことに、異端なことをずっとやっていただけですけどね……(笑)。現在の部署でも基本的には、やりたいようにやらせてもらえています。チームメンバーも30代後半から40代半ばで構成されていて、年が近いので仲も良い。全員が個で動ける能力を持ち合わせているので、非常に仕事をしやすい環境です。

私よりさらに上の立場の部門長もずっと新規事業に携わってきた人間で理解がありますし、そういう意味ではトップからやりやすい体制をつくってくれているのが帝人の良さだと感じますね。上からの押しつけが少ないので、柔軟なアイデアも出やすい。だからこそ、私も部下に働きやすい環境を与えていきたいんです。

HIP:お二人の関係性からもチームの雰囲気の良さが伝わります。最後に今後の展望を教えてください。

佐藤:「Sleep Styles」は引き続き導入企業数を増やしていきたいですね。睡眠力の向上をサポートすることで、一人でも多くの方の仕事の生産性はもちろん、日常生活にもより良い影響を与えていきたいです。

また、デジタルヘルス事業推進部としては、睡眠事業以外もいくつかのプロジェクトがかたちになりつつあります。どの事業も、まずはPoC(概念実証)の取り組みがメインにはなりますが、すでに複数の取り組みを同時進行させていく計画を立てています。大学や自治体、あとはもちろんスタートアップの方々とも協業しながら、社会のお役に立てる事業をつくっていけたら嬉しいですね。

Profile

プロフィール

佐藤暢彦(帝人株式会社 ヘルスケア戦略推進部門 デジタルヘルス事業推進部 部長)

1997年、帝人株式会社に入社。在宅医療事業の営業担当および事業企画を担当。2014年より地域包括ケアに関する新規事業担当として従事したのち、2019年4月より現職。

増村成嗣(帝人株式会社 デジタルヘルス事業推進部 B2B推進グループ グループリーダー)

2001年、帝人株式会社に入社。医療機器の研究開発業務に従事。その後、企画管理スタッフ、経営戦略部でイノベーションプロジェクト推進担当を務めたのち、2019年4月より現職。

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