弊社は優れた組み上げ技術と、最高の運転技術を持ってして、軽トラでF1を抜くためのお手伝いをさせていただいているのです。
HIP:日本に競合となる企業は存在しているのでしょうか?
鳥海:カメラやサーバー、アプリケーションなど、一つひとつの分野にはライバルがいますが、彼らは製品やサービスに特化しているため、プラットフォーム志向ではありません。その意味で、同じレイヤーで事業をやっている競合はないと思います。
私はAmazonの創業者ジェフ・ベゾスを戦略面で尊敬しているのですが、ベンチマークとしてはAmazonがグローバルに展開しているクラウドコンピューティングサービス「AWS(Amazon Web Services)」が近いと考えています。
HIP:AWSと「SCORER」の共通点はどういうところにあるのでしょうか?
鳥海:プラットフォームには2種類あると思っていて、一つはマーケットプレイスとしてネットワーク効果があるもの。利用ユーザーが増えれば増えるほど便利になるメルカリさんや楽天市場さんを想像してもらえればと思います。
もう一つはプラットフォーム上で誰もが自由にビジネスをつくることができるもの。ユーザーに対して「使い方を制限しない」ところが重要なポイントで、「SCORER」は最初からそこを意識しています。ユーザーは「SCORER SDK」を使って機能拡張を行い、独自の映像解析システムをつくることができます。なので、いま行っている企業との協業は、ユーザーに「SCORER」の使い方をイメージしてもらうための導入例づくりでもあるのです。
HIP:なるほど。先ほどおうかがいした映像解析のソリューションはあくまで一例であり、フューチャースタンダードが目指しているのは、「ユーザーが映像解析を通じた新たなソリューションをつくり出せるプラットフォーム」なのですね。
鳥海:はい。「SCORER」が普及すれば、誰もが低コストで映像解析を行える状況が生まれます。たとえば人工知能でも、プログラムを稼働させるための高速処理サーバーを用意するために苦労されている企業の話をよく聞きます。自分たちはそういうインフラまわりの泥臭いところをやらせてもらおうと。で、すごいアイデアやビジネスを「SCORER」に乗せれば、最先端の技術を揃えているのですぐに実現できますよ、と。ユーザーにとっても絶対効率的なはずですよね。
よくお客さまにこんな説明をさせていただくんです。「弊社は優れたエンジンやタイヤをつくっているわけではありません。「SCORER」という優れた組み上げ技術と、最高の運転技術を持ってして、軽トラでF1を抜くためのお手伝いをさせていただいているのです」と。
GoogleやFacebookが入り込めていない分野で地位を築いていきたいというのが私たちの考え方です。
HIP:今後のフューチャースタンダードのビジョンについてもお聞かせいただけますか?
鳥海:フューチャースタンダードという社名の由来に通じるのですが、「未来のふつう」となるようなイノベーションの黒子として、サービスを展開していくことが面白いと思っています。本当にイノベーティブなものは、いずれ世の中に普及して「ふつう」になります。そのお手伝いができるのはとてもやりがいがありますね。
HIP:そんな「未来のふつう」となるビジネスをつくっていくうえで、課題に思っていることはありますか?
鳥海:今後はカメラを設置する場所の取り合いになっていくと予想しています。現在、年間40億台以上のカメラが生産されているのですが、これはゆうに人間の目の数を超える数字です。
これからの時代は、車や家のなか、あるいは電柱のような街中にもカメラが張り巡らされていくでしょう。それぞれの分野の企業がカメラを設置したときに、私たちのプラットフォームをインフラとして使ってもらえるような状況をつくりたい。そのためには、どんな課題にも対応できる汎用的な仕組みを常に提供し続けることが重要です。
HIP:プラットフォーマーとしてのフューチャースタンダードには、他社に比べてどんな強みがあるのでしょうか?
鳥海:「SCORER」は、使い方を制限していないため、さまざまな目的でたくさんのユーザーに使っていただくことで、膨大なビッグデータが集まります。するとより正確に、より多くの事例に対応することが可能になります。
また、弊社の強みはデータの質です。GoogleやFacebookが集めているデータはたしかに膨大です。ただ、彼らが持っている写真や映像は、ユーザーが意図的にカメラを向けて撮られたものですよね。つまり、厳密には「日常」ではなく「非日常」のデータなんです。私たちは、さまざまなところに張り巡らされたカメラが捉えた、「日常」のあらゆるシーンでのデータを持っています。それはGoogleやFacebookもまだ入り込めていない分野なのです。
そしてその映像データは「使える」ことがもっとも大事です。データをうまく活用し、「映像解析といえばフューチャースタンダード」と言われるよう確固たる地位を築いていきたいですね。