オンラインとリアルの融合。時流に順応するワークショップデザイナーの挑戦
タキザワケイタ(PLAYWORKS株式会社 代表)
2020.06.30

リアルのやり方に固執しない。「オンラインの制約を価値に転換できるか」がカギとなる

HIP:オンラインに移行していく際、気をつけるべき点があれば教えてください。

タキザワ:リアルでの経験に固執しすぎないことですね。ワークショップも、リアルの内容をそのままオンラインでやろうとしても劣化版にしかなりません。現在のような移行期は、まだ失敗が許される状況です。

いままでの経験や知見を一回取っ払って、オンラインという制約をいかに価値に転換できるかが、カギになると思います。私たちもどんどん新しい試みにチャレンジして、オンラインのメソッドの発明をしていきたいです。

公開資料「オンラインワークショップ成功の秘訣」より(画像提供:PLAYWORKS)

HIP:ワークショップでは「ファシリテーター」の存在が重要ですが、オンラインとリアルで何か違いを感じますか?

タキザワ:実際に私が担当してみて感じるのは、テンションの上げ方やモチベーションの維持に難しさです。というのも、リアルの場合は会場の設営をしたり、来場者が集まってくるなかで徐々にモチベーションを上げていけましたが、オンラインはワンクリックで始まります。しかもそれが自宅だと、なおさら気持ちの切り替えが難しいです(笑)。

だからオンラインでは、心の準備も肝心。私の場合は始まる30分前くらいから、瞑想やシミュレーションをして心を整えています。

ファシリテーターが不安そうな様子だと参加者も不安になる。とくにオンラインは顔の表情と声のトーンが伝わりやすいので、最初からテンション高めでいくようにしています。

2020年4月1日に創業したPLAYWORKS株式会社(画像提供:PLAYWORKS)

HIP:参加者側がオンラインワークショップで意識したほうが良いことはありますか?

タキザワ前回の記事でもお話しましたが、ワークショップで大事なのは、「ひとつのチームである」という意識をそれぞれが持つことです。だから、話している人に対して、聞いている人は積極的にリアクションをしてあげると良いです。オンラインだと、「一人が話して、他の人は聞いている」という構図になり、伝わっているか不安になりやすいですからね。

そのためにも、事前にリアクション方法を決めておくのが有効です。「OK!」「質問あります」などを書いた「コミュニケーション付箋紙」をつくって画面に映してもらうとか、不明点があったらいつでもチャットに書きましょうなど。参加者のリアクション方法をルール化してあげるると、主体的に参加してもらえるようになります。

コミュニケーション付箋紙(画像提供:PLAYWORKS)

信頼できる仲間といつでも共創できる。時代に順応したイノベーションのかたち

HIP:アフターコロナの働き方においてオンラインが注目されていますが、これからのビジネスシーンはどう変化していくと思いますか?

タキザワ:緊急事態宣言により、さまざまな企業で在宅勤務やリモートワークが広まり、会社も個人も「遠隔でも仕事は十分にできる」ということに気づいた。これまでの「会社という場所でマネジメントする概念」が揺らいでいます。

今後は、個人のつながりがより重要になり、コミュニティーの時代になっていくのではないでしょうか。オンラインなら社内外、場所を問わずクイックにつながることができる。これからは会社という枠から外れたところでの活動が増えていくはずです。

また、新型コロナウイルスのような感染症や地震や大雨などの自然災害は、これからも起き続けてしまうと思うんです。そして、まだ解決されていない社会課題もたくさんある。これらの問題を解決していくために、オンラインワークショップは有効な手段になります。

問題が起きている現地と中継しながら、当事者やメンバーがオンラインで共創する。その様子を録画した映像をネットに公開して、社会を巻き込んでいく、といったスタイルも増えていくと思います。

ウィズコロナ・アフターコロナのサービスを開発する「サービスデザイン」オンラインワークショップ(画像提供:PLAYWORKS)

HIP:タキザワさんが以前から推進されている「&HAND」というサービスも、身の回りの社会課題を解決するものでしたよね。

タキザワ:まさにそうですね。「&HAND」は妊婦や障がい者など手助けを必要とする方と、周囲にいるサポーターをLINEでマッチングさせるサービスです。もともと私がリーダーをつとめる一般社団法人PLAYERSで、プロジェクトを推進しています。

&HAND」(画像提供:PLAYERS)

タキザワ:「&HAND」はJR東日本、JR西日本、ANA、ブラインドサッカー協会といった企業、団体と連携しながら進めています。最近は、企業の新規事業担当者から、障がい者向けサービスの相談をいただくことも増えてきました。いまはいくつかの企業とインクルーシブデザインのプロジェクトを進めているところです。その事業開発においても、オンラインを活用しています。

オンラインは障がいを超える。フラットになれるから、リサーチにも向いている

HIP:事業開発の過程においても、オンラインならではの利点を感じることはありますか?

タキザワ:いままでリアルで出会えなかった人たちと、つながれることは大きいですね。健常者にとってコロナによる自粛は、大きな不便を感じると思いますけど、障がい者の方や子育て、介護をされている方にとっては当たり前の日常だったりします。

でもいまは、お互いに自宅からオンラインで気軽につながれる。普段、出会えない人たちとの対話やディスカッションは、ビジネスとしても一人の人間としても貴重な機会になっています。また、オンラインだと誰もがフラッットな立場になれるので、より本音を聞き出せている気がします。

2020年5月に行われた、視覚障がい者と晴眼者の対話「障害者・健常者 逆転インタビュー」オンラインワークショップの様子(画像提供:PLAYWORKS)

HIP:たしかに。あらゆる壁を取っ払って、対等に話せるのはオンラインの良さですね。

タキザワ:そういった意味では、オンラインは新規事業やサービスデザインのリサーチに向いています。外出できない人に、気軽に日常生活についてヒアリングできる機会は、いままでなかったですからね。

たとえば、冷蔵庫の中をカメラで見せてもらったり、朝起きてから寝るまでの導線を実際に移動してもらったり。いままで取得するのが難しかったパーソナルな情報を知ることができるようになりました。

事業開発や社会課題の解決には、いかにリアルな情報を集められるかがカギになります。オンラインを効果的に活用することで、イノベーションのヒントを得られるのではないでしょうか。

HIP:遠隔のコミュニケーションがさらに浸透すれば、さまざまなイノベーションが起きそうですね。

タキザワ:コロナ禍によるオンラインの浸透は、日本のみならず世界中で広がっています。今後は、オンラインによる海外企業との協業や、世界と連携したSDGsの取り組みなども活発になっていくでしょう。

通勤、打ち合わせ、ワークショップなど、リアルに戻そうとしている大企業も少なくないと聞きますが、もとに戻してしまうのではなく、いまこそ新しい取り組みに挑戦すべきだと思います。トライ&エラーを楽しみながらオンラインの可能性を探求、発明することが、イノベーションにつながっていくはずです。

Profile

プロフィール

タキザワケイタ(PLAYWORKS株式会社 代表)

オンラインワークショップデザイナー、インクルーシブデザイナー、プロジェクトファシリテーター。新規事業・組織開発・人材育成など、企業が抱える課題や社会問題を、ワークショップを通じて解決へと導く。一般社団法人PLAYERS、&HANDプロジェクトのリーダーをはじめ、筑波大学 非常勤講師、青山学院大学 ワークショップデザイナー育成プログラム 講師なども務める。2020年4月にPLAYWORKS株式会社を設立。

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