INTERVIEW
凸版印刷発のIT企業? 新組織トップに聞くデジタルトランスフォーメーションの裏側
早川礼(株式会社ONE COMPATH 代表取締役社長CEO)

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2019.07.10

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「イノベーションはひとりの熱量から始まるが、ひとりで成し遂げるものではない」

HIP:「ワンマイル・イノベーション・カンパニー」であるために、大切なものは何ですか?

早川:ビジョンとともに考案した、3つのキーワードで表しました。それが「My Opinion(自らの意見)」「10% Margin(のりしろをつくろう)」「End to the start(逆算思考)」です。

HIP:それぞれの意図を教えてください。

早川:イノベーションを起こすには、まず「自分はどうしたいか」が重要ではないでしょうか。その想いを込めたのが「My Opinion」です。たとえば、私が社員に100の熱量でアイデアを伝えたとしても、100のままの熱量では伝わらないでしょう。さらにその下に伝えるとなると、より熱量は薄まってしまう。それでは革新的な成長が起きません。社員一人ひとりが「自分ならこうしたい」という想いを持っていたなら、100の熱量は200にも300にもなるはずです。

また、イノベーションはひとりの熱量から始まりますが、ひとりで成し遂げるものではありません。イノベーションを成し遂げるには、思いやりのあるチームワークが必要。そこで、それぞれが自分の役割に「10%ののりしろ=10% Margin」を加えることで、自分の仕事だけでなく、ほかのメンバーへのアドバイスやサポートができる強いチームになると思っています。

早川:私は凸版印刷でさまざまな仕事に携わりましたが、どんな仕事もひとりではできなかった。とかく新規事業は役割分担を明確に切り分けることが難しく、「あなたの仕事じゃないの?」「いや、そっちの仕事でしょ」というすれ違いから前に進まなくなりがち。そういう事態をなくしたいのです。

そして最後に、スピーディーにものごとを成し遂げるのに必要なのが、ゴールを描ける「逆算思考」。ゴールが見えていれば、マイルストーンが決まり、いまやるべきことが明確になりますから。

HIP:社員のみなさんの反応はいかがですか?

早川:この3か月間で、社内の何気ない会話からも「ワンマイル・イノベーション」という単語や「それって、ワンマイルだよね」などの言葉が聞こえるようになりました。ビジョンや行動指針が社員に浸透しつつある手ごたえを感じています。

HIP:マインドに加えて、仕組みの面でイノベーションを起こすための工夫はありますか?

早川:新規事業を手がけたい社員をフォローする部署と仕組みをつくりました。アイデアを出す際は、規定のシートを埋めるだけで応募できます。

まず重要なのは、やりたいことがあれば、誰でも手を挙げられる文化と制度をつくっていくこと。特に新規事業は、上からいわれてやるのではなく、自らの意志でやるべきです。意欲のある社員に対しては、既存事業から切り離して専任にするなど、新規事業に注力できる環境を会社全体として用意するべきではないでしょうか。これは稼働時間を確保するためにも、退路を断って言い訳の余地をなくすためにも、大切だと考えています。

日々の行動に新たな価値を生み出す。それが「ワンマイル・イノベーション」

HIP:「Shufoo!」や「Mapion」をはじめとした既存サービスは、ONE COMPATHに集約されることでどのように進化するのでしょうか。

早川:「Shufoo!」は、顧客企業の課題を解決するBtoBの事業創出力が強み。一方の「Mapion」は、生活者のインサイトを突いて、ユーザー課金などで成功したBtoCの強みを持っています。WEB業界で対顧客企業、対生活者の双方に強みを持っている企業はまだ少ないですから、その両輪を組み合わせることが、イノベーティブな事業創出につながると考えています。

HIP:最後に、ONE COMPATHが見据える今後の展望を教えてください。

早川:まずはメディア企業として、「ワンマイル・イノベーション」を実現する新しいメディアやサービスをつくっていきたい。そのうえで、将来的にはデータの活用を重要なテーマとしてとらえています。「Shufoo!」は、ネットショッピングではなく、リアルな買い物における行動をデータとして持っている。「Mapion」も、利用者がどこへ行こうとしているのかという行動のデータを収集できます。これら「リアルの行動」のデータを引き続き集めつつ、BtoB向けにどう価値のあるものに変えていくかが、今後2、3年の大きなテーマです。

データ活用の布石となるのが、2019年4月に発表した新サービス「エリアデータマート TORIMAKU」。気象データや人口統計情報、世帯年収情報など、エリアを取り巻くリアルタイム情報をまとめることで、「場所」とそこに集う「人」の属性を可視化するものだ。これにより、地域環境変化に応じた広告配信などが可能となる

早川:もうひとつの目標は、地図と買い物を掛け合わせて、その領域を進化させること。たとえば「Shufoo!」は折込みチラシというかたちで商品情報を出していますが、どの店舗に何の商品があるのか、欲しい商品がどの店舗に置いてあるのかが調べられるサービスはありません。このように、生活者のちょっとした不便を解消できるサービスも提供していきたいと思っています。

HIP:まさにBtoB、BtoCの両輪でサービスを強化していくということですね。

早川:買い物やお出かけは、人が生まれてからずっと、ほぼ死ぬまでやり続ける普遍的な行動。日々のアクション自体はささいなことかもしれませんが、ここに「ワンマイル・イノベーション」を起こせば、積み重なって大きなインパクトになるはずです。

何気ない行動をより便利に、よりワクワクするものに変えることによって、日々の行動に新しい価値が生まれていく。私たちのサービスでそれを実現できれば、ONE COMPATHは10年後、20年後も生き残れる存在になれると信じています。

Profile

プロフィール

早川礼(株式会社ONE COMPATH 代表取締役社長CEO)

2000年、凸版印刷株式会社に入社。営業を経験したのち、2006年に株式会社BrandXing(現博報堂ダイレクト)へ出向。2011年に凸版印刷に帰任してからは電子チラシサービス「Shufoo!」事業に携わり、2019年4月より現職。

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