サービスを英語から日本語に翻訳するだけではダメで、文化の違いによって生まれる問題をひとつずつ解決していかなければいけません。
HIP:カントリーマネージャーとして日本にサービスを展開していくなかで、どんな問題に直面しましたか?
野村:日本はMake Schoolが初めてカントリーマネージャーを置いた国なんです。そうした手探りの状態から、まずは日本独自のサマースクールを企画しました。アメリカでは2か月のカリキュラムですが、日本は夏休みが5週間しかない。部活や宿題があることも加味して、3週間のサマースクールを実施することにしました。ですが、ただ日数を縮めるだけでは不十分です。
よく「ローカライゼーション」という言葉が使われますが、サービスを英語から日本語に翻訳するだけではダメで、日本人向けにカスタマイズしなければなりません。たとえば州によっては義務教育のなかにタイピングの授業があるアメリカと比べると、日本の子どもはキーボードを打つスピードが遅いんです。すると、「初心者」という言葉を指すレベルも全然違ってきます。
また、親御さんとの関係も大きいですね。アメリカの子どもは自主的なので、プログラムにも自分で応募しますし、問題があったら自分で訴えてきます。日本では親御さんが応募したり、相談に来たりする場合が多い。親御さんとコミュニケーションをどうとるのかはアメリカにない課題です。こういった文化の違いによって生まれる問題をひとつずつ解決していかなければいけません。
HIP:文化の違いを踏まえた「翻訳」が必要とされているのですね。
野村:そのほかにも日本の企業と共同してプログラムを企画するなど、ローカライズしていくための施策を進めています。
特にIT系の企業はプログラマーの採用に困っているので、興味を示してくださりました。プログラミングの専門学校は日本にもありますが、英語でのコミュニケーションができる点、プロダクト制作を見据えている点に期待を寄せていただいています。
サッカー少年がアプリをつくるなど、プログラミングが「ふつう」になるような環境をつくりたい。
HIP:カントリーマネージャーはどういう仕事ですか? と聞かれたらどう答えますか。
野村:「アメリカにあるMake Schoolを日本に広める仕事です。そのためになんでもする人です」と答えますね。他の会社を見ると、日本への営業機能のみを委託されるなど、役割が決まっているカントリーマネージャーもいるのですが、私は「Make Schoolという概念を日本で広める」という役割。明確な答えが見えないなか、進めていかないといけないんです。
そのために、私はIT企業の方にヒアリングをしたり、そこから信頼できるパートナーを見つけたり、プログラムを新しくつくったりと多くのことにチャレンジしています。2017年9月末からは、週末だけ通うことが可能なコースをつくります。これは本国にはない、日本独自のプログラムです。
HIP:自由度が高いぶん、責任がある役割ですね。
野村:そうですね。でも、私一人でできることは本当に少ないと思っています。ですが、いろいろな人に会ってMake Schoolの思想を話すと、教育のバックグラウンドをもった人や、経験豊富なエンジニアなどが、どんどん意見をつけ加えてくれるんです。エンジニアかどうか、個人か企業勤めかに関わらず、ビジョンに共感してくださっ方々が助けてくださるんですよ。なので、Make Schoolの思想を全部翻訳するというよりも、最初のページを書いて、みなさんが書き足していってくれるものだと思っています。
HIP:カントリーマネージャーとして、これからのMake Schoolをどうしていきたいですか?
野村:いまは中高生向けのサマースクールを実施していますが、大学生や大人も受けてほしいと思っています。アメリカでは、サマースクールに40歳の人が来たりするのですが、日本でもそういった環境をつくっていきたいです。
特に日本の場合は、研究者や専門職としてプログラミングに触れている人がいる一方で、一般の人がプログラミングに触れる機会は少ないんです。私は、部活でサッカーをしている人やファッション業界で働いている人などがプログラミングを気軽に学んでほしいと思っています。そういった人たちのなかから、面白いアイデアや新しいプロダクトが生まれてくるはず。もっともっと、プログラミングを身近に感じてもらい、つくることの喜びを共有していきたいですね。