アメリカ、中国と比べると金額は小さい。長期的に投資環境を整備していく必要がある
次に村田氏は投資環境に関わる変化について言及。TechCrunchなどテックメディアでアメリカの話だけではなく、日本の大型ファイナンスのニュースが増えてきた。3年ほど前までは3億円の資金調達は大型調達として注目されていた。それが、ここ2年ほどで10億円超えの調達が増加。資金調達の金額は上がってきている。
村田氏「3年ほど前に資金調達していたスタートアップは、実力があり、トラクションがあって、トラクションを評価するキャピタリストがいて、適切なバリエーションを計算した上で大きな金額が出資されていました」
最近、スタートアップはバブルと言われることも多い。村田氏は、2014年後半から2015年にかけて、複数のVCが3000万ずつ出資する案件も見られるようになったと指摘。投資家からのフォローが多くなることで、その分バリエーションが高くなっているという意味で、現在はバブルになっているという見方もできると述べた。
村田氏「その中でもメガベンチャーに育っていく可能性が高い会社は登場してきており、IPOした企業や未上場で大きくスケールしているスタートアップも出てきています。調達金額はアメリカや中国と比較すると桁が1、2桁は異なってきます。それを考えると日本の資金調達の金額は大きすぎることはありません。今後大きく資金調達してもらい、メガベンチャーを輩出していくことを考えると、長期的に投資環境を整備していく必要があります」
スタートアップが大企業のイノベーションのジレンマを克服する?
グループスがネクソンに365億円で買収され、nanapiが70億以上の金額でKDDIに買収、meryとiemoはDeNAに50億円ほどで買収されるなど、買収される事例も少しずつ生まれてきている。
村田氏「買収金額の多価以外にも、買収された会社の経営幹部が買収した会社の幹部に据えられるという、アクハイヤーを含めた買収が増えてきていることにも注目です。ヤフージャパンやミクシィなどは、経営幹部の半分が買収された会社の幹部。外部から優れた人材を入れて、さらにスケールしていくような事例が多くなっていくのではないでしょうか」
買収された後、その会社の経営幹部となる人材もいれば、その会社を離れてもう一度起業する人もいる。こうした起業家はまた事業を立ち上げるシリアルアントレプレナーやスタートアップに出資するエンジェル投資家となる。
村田氏「こうした循環が数多く生まれてくると、よりスタートアップが生まれやすい環境になっていきます。買収する大企業からしても、イノベーションのジレンマに陥っているところから、イノベーションの獲得を人材も含めて可能になってきます」
スタートアップで会社を立ち上げ、シード、シリーズA、シリーズB、シリーズCと、それぞれのラウンドごとに各ファンドが得意なラウンドで投資を行うようになっている。ステージに応じて、その都度M&Aの機会が生まれつつあり、買収が実現すればその買収資金がエンジェルマネーとなり、さらにスケール感のあるスタートアップが生まれていく。
村田氏「メルカリの山田進太郎氏やYahoo!の小澤隆生氏のような人物が増えてくると、大企業側のスタートアップを見る目も変わっていきます。そうするとさらにエコシステムが回転させることができる。また、親しい人たちの中からイグジットする起業家が登場することも重要です。友人知人が20、30億でバイアウトするという話を聞くと、自分もできるのではと考えるようになります」
スタートアップには変化がたくさん起きている。リーマン・ショックが起き、資金調達に苦しんだスタートアップとVCが数多く登場したことで、今の状態につながっている。
村田氏「スタートアップへの投資を盛り上げるだけではなく、ノウハウを共有していくために、VCがどういう存在なのかということを含めて発信していくことで、業界全体を盛り上げていきたいと思います」