INTERVIEW
日本をシリコンバレーに優る起業大国にするために「Incubation Hub Conference 2014」ディスカッションパネル
川邊 健太郎(ヤフー株式会社 取締役副社長 COO 常務執行役員)/田中 章愛(ソニー株式会社 新規事業創出部 IE企画推進チーム エンジニア)/松本 真尚(株式会社WiL 共同創業者ジェネラルパートナー)/山田 進太郎(株式会社メルカリ 代表取締役社長)

INFORMATION

2015.06.11

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ベンチャーを取り巻く人材が育ち始めている

松本:「大企業のリソースという文脈の他には、「メガベンチャーのプロデュース」という文脈も重要だと思いますが、ベンチャー企業の経営者である山田さんはどのように考えていますか?」

山田:社会にインパクトを与える象徴として、日本発のメガベンチャーを生み出すことは非常に重要です。メルカリが最初に大成功を収められれば嬉しいですが、そうならなかったとしても、我々の挑戦を踏み台として他の誰かが成功できれば良い、とも考えています。まずは、挑戦することが大切ではないでしょうか。」

松本:「最近は巨額の資金調達を果たす日本のベンチャーも増えていますが、この流れについて、山田さんはどう見ていますか?」

山田:「以前に比べ、起業家のレベルが上がってきているのだと思います。メルカリのスタッフは、ヤフージャパンや楽天、DeNA、GREEなど、優れたベンチャーで事業づくりを経験した人が多いですが、やはり、彼らは非常に意識やスキル、目線が高い。また、僕自身も長くエンジェル投資を続けていますが、最近は起業をサポートしたいと考える人も増えています。ベンチャーを取り巻く環境が底上げされ、人材も育ち始めているのでしょう。」

川邊:「ビットバレー」という言葉が登場した1995年から2000年頃にかけて、日本でも多くのネットベンチャーが生まれました。しかし、スキルや目線の高さについては、現在のようなレベルにはなかったと思います。その後、特にここ六本木に目線の高いベンチャーが集うようになり、切磋琢磨し、レベルが上がっていった。それは如実に感じますね。」

松本:「ベンチャースピリットの普及という文脈についてお聞きします。目線を高く持ち、ビジョンを描いている起業家の下には、その「目線の高さ」に惹かれ、集まってくるスタッフたちがいるはずです。山田さんが様々な困難に直面しながらも、彼らを惹きつけることができるような目線の高さを維持できているのには、何か理由があるのでしょうか?」

山田:「お金を儲ける、会社を大きくすることは、僕にとっては目的ではありません。僕の目的は、世界中で当たり前のように使われ、人々の人生に影響を与えるようなプロダクトを生み出すことです。理想とするサービスは、Skypeのようなもの。例えば、Skypeのおかげで出会い、結婚した人もいるはず。そうしたサービスを生み出したいからこそ、プロダクトの質にこだわり、老若男女、誰もが手軽に使えるサービスをつくろうとしています。」

松本:「ぜひ、山田さんには目標となるような姿を他の経営者の方々に見せてもらいたいと思います。日本の大企業は、自前主義で発展してきた歴史があることから、他分野・他業界とのコラボレーションを苦手としています。また、自社の研究開発に多額の投資を行っていますが、様々な統計を見る限り、イノベーション創出につながっているとは言い難い状況もあります。日本の大企業には、世界がうらやむような豊富なリソースがありながら、現状はそれらを生かし切れていないのです。日本の大企業にも、オープンイノベーションを進めなければならない、という危機感は確実に広がっています。そして、ベンチャーにしかできないことがあるのなら任せてみよう、と考える大企業も増えています。日本の企業が再び世界を席巻する日を目指し、我々としてもグローバルな視点から大企業やベンチャーをサポートしていきたいと思います。」

Profile

プロフィール

川邊 健太郎(ヤフー株式会社 取締役副社長 COO 常務執行役員)

1974年10月19日生 東京都出身 青山学院大学法学部卒(1998年)
1995年在学中に電脳隊を設立、1999年に代表取締役。1999年PIM株式会社設立。
2000年8月 ヤフー株式会社と電脳隊、PIMの合併に伴い、ヤフー株式会社入社、Yahoo!モバイル担当プロデューサー。2003年社会貢献事業担当プロデューサー(モバイル兼任)。2006年2月Yahoo! JAPAN10周年記念非営利事業として「Yahoo!みんなの政治」を立ち上げ。2007年メディア事業部に異動、Yahoo!ニュース、Yahoo!ニュース トピックスなどの責任者。2009年5月株式会社GyaO代表取締役社長。
2012年4月ヤフー株式会社 最高執行責任者(COO) 執行役員兼メディア事業統括本部長。7月副社長 COO 兼 メディアサービスカンパニー長。2013年4月副社長 COO。
2014年6月 取締役副社長 COO 常務執行役員。

田中 章愛(ソニー株式会社 新規事業創出部 IE企画推進チーム エンジニア)

1981年長崎県出身、2006年筑波大学大学院修了、同年よりソニー(株)入社。2013年-2014年スタンフォード大学訪問研究員。複数のロボット研究開発プロジェクトにおいてハードウェア/メカニカルエンジニアとして従事。西海岸ベイエリアでの留学経験を経て、2014年より新規事業創出部にて社内スタートアップ支援プラットフォーム構築とハードウェアのラピッドプロトタイピングに携わる。放課後は所謂メイカーとして2011年より友人である高橋良爾と始めたデザインユニットVITROや2013年発起人として創設した品川のモノづくりコミュニティ“品モノラボ”を通じ共創型モノづくりを追及している。 Maker Faire Bay Area2014出展、ASIA Award Young Creator 2013受賞、Good Design Award 2014 Best 100受賞。

松本 真尚(株式会社WiL 共同創業者ジェネラルパートナー)

70年7月神戸生まれ。1999年にPIMを設立、CEOとして2000年のYahoo Japanとの合併を指揮。その後、ヤフー社長室で、戦略投資やYahoo!BBの立ち上げを経て、Yahoo Shopping 事業部長に就任。SBのVodafone買収にも携わり、後は、Yahooのモバイル事業部の初代事業部長とSBモバイルのプロダクト・コンスーマー統括本部長を兼務。その際にモバイルのPF開発や事業戦略の構築等をシリコンバレーの本社と共に推進。2008年にはYahooのRD統括本部長としてYahooのサービスのフロントエンドの開発を行う。2011年からは、YahooのCIO(Chief Incubation Officer)としてYahooの新規事業を指揮。多くの他の事業会社との連携やJVを仕掛ける。
2013年に元DCM伊佐山氏、元サイバーエージェント西條氏と共にWiL,LLCを立ち上げ、現在に至る。

山田 進太郎(株式会社メルカリ 代表取締役社長)

早稲田大学在学中に、早稲田リンクス代表、楽天株式会社にて「楽オク」の立上げなどを経験。卒業後2001年8月、ウノウ設立。ウノウのサービスとして新作映画情報サイト「映画生活」(ぴあ社に譲渡)や「スグCC」や「NeoAd」(GMOアドパートナーズ社に譲渡)、写真共有サービス「フォト蔵」(デジタルガレージ社に譲渡)などの企画・開発・運営に関わる。2009年にウノウはソーシャルゲームに参入し、「まちつく!」(総ユーザー数500万超)をはじめとして複数のヒットタイトルをリリース。2010年8月3日、ウノウ株式をZyngaに売却。Zynga Japanジェネラル・マネージャーを経て、2012年1月退社。世界一周を経て、2013年2月、株式会社メルカリ(旧コウゾウ)を創業。2013年7月フリマアプリ「メルカリ」をリリース。ネットが趣味のネットオタクで、Twitterのフォロアーは17万近い。

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