ベンチャーを取り巻く人材が育ち始めている
松本:「大企業のリソースという文脈の他には、「メガベンチャーのプロデュース」という文脈も重要だと思いますが、ベンチャー企業の経営者である山田さんはどのように考えていますか?」
山田:社会にインパクトを与える象徴として、日本発のメガベンチャーを生み出すことは非常に重要です。メルカリが最初に大成功を収められれば嬉しいですが、そうならなかったとしても、我々の挑戦を踏み台として他の誰かが成功できれば良い、とも考えています。まずは、挑戦することが大切ではないでしょうか。」
松本:「最近は巨額の資金調達を果たす日本のベンチャーも増えていますが、この流れについて、山田さんはどう見ていますか?」
山田:「以前に比べ、起業家のレベルが上がってきているのだと思います。メルカリのスタッフは、ヤフージャパンや楽天、DeNA、GREEなど、優れたベンチャーで事業づくりを経験した人が多いですが、やはり、彼らは非常に意識やスキル、目線が高い。また、僕自身も長くエンジェル投資を続けていますが、最近は起業をサポートしたいと考える人も増えています。ベンチャーを取り巻く環境が底上げされ、人材も育ち始めているのでしょう。」
川邊:「ビットバレー」という言葉が登場した1995年から2000年頃にかけて、日本でも多くのネットベンチャーが生まれました。しかし、スキルや目線の高さについては、現在のようなレベルにはなかったと思います。その後、特にここ六本木に目線の高いベンチャーが集うようになり、切磋琢磨し、レベルが上がっていった。それは如実に感じますね。」
松本:「ベンチャースピリットの普及という文脈についてお聞きします。目線を高く持ち、ビジョンを描いている起業家の下には、その「目線の高さ」に惹かれ、集まってくるスタッフたちがいるはずです。山田さんが様々な困難に直面しながらも、彼らを惹きつけることができるような目線の高さを維持できているのには、何か理由があるのでしょうか?」
山田:「お金を儲ける、会社を大きくすることは、僕にとっては目的ではありません。僕の目的は、世界中で当たり前のように使われ、人々の人生に影響を与えるようなプロダクトを生み出すことです。理想とするサービスは、Skypeのようなもの。例えば、Skypeのおかげで出会い、結婚した人もいるはず。そうしたサービスを生み出したいからこそ、プロダクトの質にこだわり、老若男女、誰もが手軽に使えるサービスをつくろうとしています。」
松本:「ぜひ、山田さんには目標となるような姿を他の経営者の方々に見せてもらいたいと思います。日本の大企業は、自前主義で発展してきた歴史があることから、他分野・他業界とのコラボレーションを苦手としています。また、自社の研究開発に多額の投資を行っていますが、様々な統計を見る限り、イノベーション創出につながっているとは言い難い状況もあります。日本の大企業には、世界がうらやむような豊富なリソースがありながら、現状はそれらを生かし切れていないのです。日本の大企業にも、オープンイノベーションを進めなければならない、という危機感は確実に広がっています。そして、ベンチャーにしかできないことがあるのなら任せてみよう、と考える大企業も増えています。日本の企業が再び世界を席巻する日を目指し、我々としてもグローバルな視点から大企業やベンチャーをサポートしていきたいと思います。」