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海外展開でどん底からの起死回生。『QBハウス』の持続的な成長を支えているものとは?
キュービーネット代表取締役 北野泰男
2015.11.06

現代人は忙しい。仕事に、家庭に、趣味に、やりたいことややるべきことが山ほどある。そんな時代だからこそ、効率的に時間を使うことができるサービスが受け入れられている。ヘアカット専門店「QBハウス」もそのひとつ。

10分1000円でヘアカットをしてもらえるというシンプルな仕組みは、そのコストパフォーマンスの良さとわかりやすさが相まって、多くの人々に受け入れられ、海外でも人気だ。理美容業界の既成概念を覆してきた「QBハウス」を展開するキュービーネット代表取締役 北野 泰男氏に、話を伺った。

取材・文:HIP編集部 写真:相良博昭

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「海外展開でどん底からの起死回生。『QBハウス』の持続的な成長を支えているものとは?」
キュービーネット代表取締役 北野泰男

日本のサービスは世界で喜ばれるんじゃないかと思ったんです

HIP編集部(以下、HIP):理美容業界に関心を持ったのはどうしてだったのでしょうか?

北野 泰男(以下、北野):学生時代の放浪の旅がきっかけです。長く海外にいると、当然髪を切らないといけないわけですが、これが意外にストレスで。色々な国の店舗でカットしてもらいましたが、なかなか思い通りの髪型にならず、最終的には旅の途中で出会った台湾人の友人と互いの髪を切り合っていました。

HIP:意外にも、日本と海外の違いが散髪で明らかになったと。

北野:はい、苦労したと同時に、日本の理美容室の技術力の高さを知ることにもなりました。当時から、日本のサービスが海外に行くと喜ばれるんだろうな、と考え始めて。

HIP:でも、そのまま理美容業界には進まれなかったんですよね。

北野:はい。何をビジネスにするにしても、数字は重要だと思って、まずはお金について学ぼうと銀行に入りました。

元気な会社とそうでない会社の一番の違いとは?

HIP:銀行には何年いらしたんですか?

北野:かねてから父親に、「10年くらい時間をかけないと物事の本質はわからない」と言われていたこともあり、10年弱勤めました。途中、その銀行が破綻してしまうのですが、それも含めて本当に多くの大切なことを学ばせてもらいました。厳しい環境の中で事業を清算する取引先が続出しましたが、そんな大変な時期でも、元気に成長していた取引先もあって。この差は何なのだろうと考えていました。

HIP:北野さんが考える、元気のよい企業の共通項はなんですか?

北野:いくつかありますが、一番大切なのは経営者の情熱です。情熱を人に伝え、人を巻き込む。組織は、一時は強制することができても、持続的に成長していくためには情熱を人に伝播させて、自発的にその人が動くことが求められるからです。この「巻き込むこと」が長けているというのが重要です。

HIP:キュービーネットの創業者小西國義さんも、大変魅力的な経営者だと伺いました。北野さんから見てどのような人物でした?

北野:私が小西さんと知り合ったとき、キュービーネットはものすごく急成長していました。小西さんは高いカリスマ性を持っていて、業界の障壁を物ともせず、スピードを重視しながら先頭に立って組織を牽引されていました。

HIP:北野さんは小西さんに声をかけられて入社されたんですよね。どんなお誘いがあったんですか?

北野:「国境はないし終わりはないよ、このビジネスは」という言葉をもらったのが印象に残っています。このワンフレーズに、とてもやりがいを感じました。

急成長が生んだ「部分最適」からの脱却

HIP:キュービーネット入社後は、どういったことから着手されたんですか?

北野:入社してみてわかったのは、それまでスピード重視で急成長してきたがゆえに、問題解決に十分な時間とお金をかけられず、「部分最適」の連続だったということ。全体で見ると、歪みが発生していて、所々バランスの悪い状態となっていました。ここで一度しっかりバランスを整えることができれば、まだまだ成長できると考え、外部の方々のアドバイスを受けながら課題を洗い出し、チームみんなで一つひとつ解決することから始めました。「こんなの解決できないよ」と嘆く声も多々ありましたが。

HIP:たとえばどんなところからバランスの悪さを感じたのでしょうか。

北野:入社して最初に参加した会議の場ですね。よく言えば白熱した会議だったのですが、入社したての私から見れば、現場と本部の衝突がかなり見られました。

HIP:かなり緊張感が高い状態だったと。

北野:急成長の最中でしたからやむを得ない部分もあるのですが、互いに自分たちの尺度で主張しあう。議論は永遠に平行線。そして、少々強引に突き進む中で、お互いの信頼感が揺らぎだし、関係は当然ギクシャク。ただ、こういう状況が長く続くと、やる気のある人から先に離れていき、あっという間に組織の活力が失われることは前の仕事で目の当たりにしてきました。これ以上成長し続けるには、お互いが同じチームの一員として相手の状況に深く関心を持つことが必要。その中でまずは現場と本部の人間関係を良くしていくべきだと考えました。

HIP:成長し続ける上で、現場と本部の関係性がなぜ大事なのでしょう?

北野:まず、急成長期の段階では、十分に人材育成の時間がとれません。現場のクオリティがどうしても下がってしまいます。サービスの質を改善するためにも、まずは現場で働いているスタイリストが、QBハウスの価値、つまり10分でお客さまの髪を的確にカットすることに誇りを持てるような環境を整えなければならないと考えました。

HIP:仕事への誇りが、質の維持にもつながるということですね。

北野:はい、自分の仕事にやりがいや誇りを感じられないとサービスの質は一時的に改善できたとしても維持できませんし、働いているスタイリストが誇りを感じられていない職場に、新たな仲間が加わってくることはない。そうなってしまうと、これ以上スケールさせることはできません。お客さまから選ばれるだけではなく、一緒に働く仲間から選ばれるブランドにならなければならない。それで、切磋琢磨し合ってスタッフ同士がお互いにやりがいを見いだせる環境を作ろうと考えました。

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