INTERVIEW
人とつながることで、インスピレーションが生まれる。「グローバル・ギャザリング」登壇者から見た日本市場の魅力とは?
ライアン・マクノートン(PriMetaz CEO & 共同創設者)/ ニコラ・ミゾン(Vizta DGTL 共同創設者)

INFORMATION

2025.04.10
取材・執筆:中野慧 撮影:北原千恵美 通訳:漆原琢雄(ベンチャー・カフェ東京) 編集:HIP編集部、篠崎奈津子(CINRA)

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医療機器、ファッション、ゲーム。日本市場への期待感と展望

HIP
お二人は東京、日本、そしてアジアの市場へと挑んでいきたいというビジョンを描いていると思います。あらためて、お二人にとって新しいマーケットの魅力はどんなところにあるのでしょうか。
ライアン
じつは、北米とアジアのMRI市場はよく似ているんです。アジアで伸ばすためには、日本の力がなければ伸びないと思います。そこで、日本の大学病院などでどのようなケアが行われているのか、そしてどのように使われているのかを調査し、MRIのソフトウェアをどのようにアップグレードしていくべきかを考えていきたいと思っています。
ニコラ

まずは、今回の機会を活かしてたくさんの人と対話したいと思っています。日本、東京のファッションといえば「ロリータ」や「カワイイ」などが世界的にも注目されていますが、実際にそういったファッションに親しんでいる人はごく少数ですよね。そういった人たちを支援していけたら、と思っています。

もうひとつ、いまはヨーロッパや日本でもファストファッションの存在感が大きくなっていますが、私たちは世界中のローカルかつトラディショナルなファッションも非常に素晴らしいものだと考えています。そこで、ファッションの世界の中小企業やスタートアップを応援できるプラットフォームを育てていきたいですね。

2月27日に開催された「Pitch2Tokyo」に、ベルリンの代表として登壇したニコラ・ミゾン氏
ニコラ

またゲームの世界では、日本人の67%がゲーマーではないかといわれており、女性ユーザーが大きく伸びています。コンソールゲーム(※)の男女比は1対1程度ですが、モバイルゲームは女性が上回っているといわれているんですね。モバイルゲームの女性市場は大きく伸びていくと思っています。

※Nintendo Switch、プレイステーションなど、ゲームをプレイする際に機器(ハード)を必要とするゲームのこと。

国内のプレイヤーが海外に挑むための重要なステップとは?

HIP
日本の大企業やスタートアップには、世界に目を向けたいと思っている人も多いと思います。お二人は、世界で成長していくためにはまずどんなステップを踏むのがいいと感じていますか。
ニコラ

まずはアクセスしやすい、国内で開かれている国際的なカンファレンスに参加することがすごく大事だと思います。違う地域の人たちとつながることによって、羽ばたく意思を高めていくことが大切なのではないかと思っています。

私の場合、まずはゲームの世界ではデベロッパーやパブリッシャーとつながり、サポートしてもらうことが重要です。もちろんメリット・デメリット双方ありますが、彼らを介さなければ次のマーケットに入っていくこともできないですからね。

ニコラ
それと政府関連のサポートを受けることも重要です。ヨーロッパでは公的なスタートアップ支援が比較的充実していますが、日本であればJETROなどにアクセスして、相談していくということですね。
ライアン

やはり、今回のグローバル・ギャザリングのような国際的なビジネスカンファレンスに参加することは大事ですね。私のフィールドであるレディオロジー(X線その他の貫通性放射物の医学的使用に取り組む医学)の場合は毎年、ビジネスカンファレンスが国を移動しながら開催されることが多いので、その機会に現地に行けば市場調査もできます。

また、ボストンにはベンチャーカフェを含め、非営利でアクセラレーションプログラム(※)を提供してくれる組織があり、彼らが海外の地域のプレイヤーを連れてきてくれます。そういう場で、それぞれの地域の人たちと触れ合うことによって新たなインスピレーションを受けることが重要だと思います。

※スタートアップやベンチャー企業を対象に、当面の事業成長や成功を促進することを目的とした支援プログラム

人とつながることで、インスピレーションを得るループを作り出す

HIP
お話を聞いていて、お二人には「セレンディピティ(思いがけない偶然で引き寄せた幸運、偶然の産物のこと)」を大切にするマインドが共通しているように感じました。個人的な考えですが、多くの日本の大企業のビジネスパーソンたちは、セレンディピティをあまり活かせていない気がします。お二人はその重要性にどのようにして気付いたのですか。
ニコラ
スタートアップは基本的に「Lean and Mean(無駄を省き、シンプルかつ貪欲に成長を目指す)」が重要だといわれますし、人材、お金、時間などのリソースを大切に使わないといけません。スタートアップは1〜2人でプロダクトを作り始めることが多いですが、どんなお客さんに向けて作るのかをイメージする必要があります。そのためには人とのつながりがすごく重要になるんです。
ライアン
私もニコラさんがおっしゃるとおりだと思います。私はニコラさんと違って、大学で博士号を取ってすぐ起業したので大きな組織での経験はありません。ただ、起業当初、さまざまな研究に1年半ほどを費やしたのですが、少しもったいない時間の過ごし方をしたのかなと感じています。
「Pitch2Tokyo」でCIC Global Prize賞を受賞したライアン・マクノートン氏
ライアン

研究の目処がついたあとにボストンでイベントに登壇してわかったのが、自分をサポートしてくれる人はたくさんいて、孤独に研究をしていた1年半の時間をネットワーク作りに使えばよかったな、ということでした。

私は2024年の4月、カリフォルニア州で開かれたビジネスイベントでピッチをして、その後にシリコンバレーにあるGoogle本社に招いていただきました。驚いたのは、ほとんど3メートルごとぐらいに、座ってご飯を食べたりコーヒーを飲んだりできるスペースがあることです。Googleはあれだけの大企業ですが、オフィスのなかに「ほかの人と話すチャンス」をできるだけ設けているんだなと感じました。

HIP
「人と話す」ということが、チャレンジスピリットにつながっていくわけですね。
ライアン
ええ、それは私たちのようなスタートアップだけでなく、大企業のビジネスパーソンでも同じではないか、と思います。もちろん「人と話す」というときには日常生活の話もあるでしょうけれど、自分が抱えている課題、チームが抱えている課題について話してもいいわけです。自分がほかの人を助けたり、自分が助けられたりする、「人と人のつながる場所」がすごく大切なのだと思います。
ニコラ

私も大人数の会社に勤務していた経験がありますが、大企業のビジネスパーソンは社内にたくさんの人がいるので「ほかの世界の人とつながることが重要だ」という目線を失いがちかもしれません。

私が大企業のビジネスパーソンに提案したいのは、どんどん社外の世界の人たちと出会ってナレッジシェアをしながら、自分もインスピレーションを得られるようなループを作ることです。それが「自分にとって意味のある経験だ」という実感が得られれば、自然とセレンディピティを大切にできるようになると思います。

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プロフィール

ライアン・マクノートン(PriMetaz CEO & 共同創設者)

MRIスキャナーを高速化するアクセサリ製品を開発している医療機器会社PriMetazの CEO兼共同創設者。MassChallengeのUS Early-Stage AcceleratorやM2D2の IMPACT Acceleratorなど、評価の高いスタートアップアクセラレータープログラムに積極的に参加し、PriMetazの代表を務める。同社はARPA-H Investor Catalyst Hubのスポークとなり、TiE Universityのボストンピッチコンペティション(世界第5位)とM2D2 IMPACTのピッチオフで優勝。

ニコラ・ミゾン(Vizta DGTL 共同創設者)

ゲーム主導の最大のデジタルファッションソーシャルプラットフォームを構築することで、ゲーム、ファッション、コマースの交差点におけるイノベーションに取り組む。コンピューターゲーム業界でのプリプロダクションとライブ製品の両方で働いた実績のある、経験豊富なプロダクトマネージャーおよびプロダクトリーダー。

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