リスキリングが日本を変えるか?ジェネラル・アセンブリーの講師が語る
八田浩(株式会社ロケットメイカーズ代表取締役社長) / 黒柳茂(株式会社リム代表取締役社長) / エイミー・ジョーンズ(General Assembly Inc.)
2022.12.14

組織全体のリスキリングで大企業の文化が変わる。ともに学ぶことの効果

HIP:GAのプログラムを通して、大企業が変わっていくという手応えは感じましたか?

八田:手応えはありましたね。今回のプログラムに関しては、講義の回数などを調整しながら現場、リーダー、役員とそれぞれのレイヤーが受けました。新しい知識・手法を手に入れても、現場で相談できる上司がいなければ、結局は活かすことができません。上司も同じことを学んでいれば、同じ目線で相談しながら実践できるようになり、チームが変わっていきます。これが20、30と複数の部署で起これば、大企業も変わっていけるはずです。

黒柳:私の場合は次回の講義までに、その日学んだことを実践するという宿題を出していました。顧客中心主義を学んだら、その知識を活用してアウトプットしてみる。心理的安全性なら、次回までにそれらをチームに与えるためのアクションを起こすといったかたちです。この取り組みが受講した社員同士でシェアされていけば、新しい企業文化が育まれていくでしょう。

エイミー:今回プログラムを実施した企業では、受講の成果はとりわけ大きく、デジタルスキルの獲得に挑戦する社員のコミットメント、卒業課題の質の高さは、グローバル標準からしても評価されるものでした。また、新しいコンセプトを把握し、新しいスキルを習得する能力は、受講生のみなさんすべてが非常に高かったです。

HIP:政府がリスキリングに1兆円の支援を決定しました。日本を変えていくきっかけになるでしょうか。

黒柳:学び直しが、自分にとって素晴らしい経験になると思えるかが重要だと思います。仕事が忙しいなかで、講義のために時間を確保する。それをチャンスと捉えられるか。そう思える人が日本に少ないのであれば、まずはリスキリングによってキャリアが豊かになるという考え方を広めるほうが、先なのではないでしょうか。

大企業における社員の平均年齢が高くなっているなかで、新しいことを学ぶという行為自体を面倒だと思っている人も増えているかもしれません。日本が変われるかは未知数ですし、1兆円をかけて多くの人がリスキリングを受けても、何も変化が起きないということも考えられます。そうならないためにもマインドセットが重要で、学ぶことでポジティブな変化が起こると伝えていかなくてはならないのです。

八田:本当に学びたい人は、政府が号令をかけなくても進んでやると思われがちですが、実態はそうではありません。今回、GAのプログラムを通して、学びたい人が多くいるのを知りました。GAに依頼した企業が社員にリスキリングのきっかけを与えたことで、デジタルマーケティングの講義だけで受講生25人、プログラム全体では120名が変わろうとした。

これがさらに広がれば、リスキリングを数百万人が受けると、そのなかの10万人が本当に変わるかもしれません。1兆円などといわず、10兆円をかけて100万人を変えていけば、もっと効果的かもしれない。やるか、やらないかでいえば、積極的に取り組んでいくべきです。

日本のリスキリング文化の未来は、個人よりも企業が主導。ビジネスの拡大と生産性に貢献できるという確信

HIP:日本でもリスキリングへの熱が高まっているなかで、GAとしてはどのような展開をされていくのでしょうか?

エイミー:日本では、まずBtoBに注力する予定です。なぜなら、日本のリスキリングをめぐる文化は、個人よりも企業が大きく主導するであろうと考えているからです。また、デジタルテクノロジーに重点を置いたデジタルファーストな人的資本の構築を重視し、企業と協力していきたいですね。そうすることで、ビジネスの拡大と生産性向上に大きく貢献できると確信しています。

そして、リスキリングやライフ・ロング・ラーニング(生涯学習)の概念を企業文化に定着させることができたら、続いてBtoC市場に進出し、個人向けのデジタルスキルトレーニングを提供する予定です。

HIP:それでは最後に、八田さんと黒柳さんは講師を務めて気づいた点や学びがあった点などあれば教えてください。

八田:プログラムを通して受講生のスキルが上がっていることを目の当たりにし、大きなやりがいを感じました。プログラムでは受講生が自社のなかで実際に関わっている事業を、どのようなデジタルキャンペーンに仕立てるかをゴール(最終成果)にしました。ここに向けて、受講生自身がキャンペーン設計と実行計画を自らの力で立てることができたんです。デジタルマーケティング以外のキャリアを積んできたビジネスパーソンがデジタルマーケティングという大きな武器を手に入れた瞬間だと思いました。

また、講師を担当することで、自身の学び直しにつながったと感じています。講義内容を検討するなかで、デジタルマーケティングの手法をあらためて考え直す時間がつくれました。人に何かを教えるときは、曖昧な部分をなくしていかなければならないので、いままでの経験やナレッジも言語化していきました。

メンターを担当してくれたオーストラリア人講師とのディスカッションでは、どのように伝えれば受講生たちがしっかり受けとめてくれるかなどのアドバイスをもらえました。教え方や伝え方とともに、どうやったら受講生達が行動に移せるようになるか。とても参考になりました。キャリアを積めば積むほど、人からフィードバックを受ける機会が減ってきますよね。そうした自分のナレッジやメソッドの逸失を防げる効果も感じられ、とても貴重な経験になりましたね。

黒柳:私も学び直しができました。やはり、人に教えることが、一番自分の実になりますね。専門分野でない不動産業界についても、資料をつくりながら理解できました。企業で働くリーダー層が普段どのようなことを考えているか、講義のなかで知ることができたのも刺激的でしたね。

議論が熱を帯びてくると質問がより本質的なものになり、私も即答できないことがありました。寝る前に「あのときの質問は、どう答えればよかったのかな」と振り返ることも。回を重ねるごとに、どんな答え方がベストなのかが見えてきたのは、いい経験になりました。

受講生が多いので、ファシリテーション力も身につきます。いま、あの人の顔が曇っているので腹落ちしていないなとか気づくようになる。八田さんの場合は、「5段階でいまはどれくらいの理解度ですか」と質問しながら理解度が1、2の人をサポートしていくのですが、そのやり方も勉強になりました。受講生がどう考え、リアクションをするのか。相手のことを考えるスキルを高めることができたと思っています。

八田:たとえば会社の新人に対してなにかを教えるときは、「君が学ぶんだぞ」という一方的な雰囲気になりがちです。しかし、GAのプログラムでは、プロの講師として招かれているので、受講生の満足度が上がらないと私たちは評価されません。ただ教えるだけでは結果が出ないという、緊張感を持って講義に臨んでいました。だからこそ、脱落者を出さずに進めていかなければならない。GAのプログラムは「いかに受講生に学んでもらうか」という部分をとても大切にしていると強く感じましたね。

今後、GAではプログラム拡大のなかでこのような講師をもっと多く募っていくと聞いています。受講生のリスキルにとどまらず、現業を持った最前線の人間が教える側に回ることで、日本全体として大きなムーブメントを作っていけるといいなと思っています。

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Profile

プロフィール

八田浩(株式会社ロケットメイカーズ代表取締役社長)

2001年、明治大学経営学部卒業。証券会社勤務の後、デジタル専業広告会社や動画配信システム開発企業などで役員、経営者を務める。2019年にロケットメイカーズを創業し、企業の資金調達やDX支援に従事。

黒柳茂(株式会社リム代表取締役社長)

早稲田大学理工学部を卒業後、日本マイクロソフト、フェイスブックジャパンなどを経て、機械学習モデル構築、データプロダクト開発、データサイエンティスト及びデータエンジニアのマネジメントに従事。アンカースターではデータを活用した新規事業開発や、組織変革支援を担当。株式会社リムを設立し、企業のデータ活用、機械学習モデル構築、データプロダクト開発に従事。

エイミー・ジョーンズ(General Assembly Inc.)

General AssemblyのAPACディレクター。企業や政府とのパートナーシップを推進。キャンベラ大学MBA。元水球オーストラリア代表選手、2008年の北京オリンピック銅メダルを獲得。現在も豪州オリンピック選手強化組織のアドバイザーを務める。

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