INTERVIEW
デジタル人材不足を解消するには?ジェネラル・アセンブリーのリスキリングに学ぶ
ライアン・マイヤー(General Assembly) / 苔口穂高(アンカースター株式会社)

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2022.09.05

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人材評価は学位よりも実績へ。グローバルの流れに沿ったプログラムとは?

HIP:ほかの企業にはない、GAの独自の学習プログラムやインストラクターの特徴などがあれば教えていただけますか?

ライアン:GAのプログラムは、古代ギリシアの哲学者・アリストテレスが提唱した経験論をもとにつくられています。それは「やったことがないことを学ぶには、やるしかない」というもの。

学習プログラムではプロジェクトとしてスキルを実践してみたり、グループワークで考えながら手を動かしたりすることがプログラムの根幹にあります。最も長いプログラムで480時間ありますが、受講することで新しいスキルを身につけるための素地や勘所が身につき、モダンなデジタルスキルに適用できるようになっていくのです。

HIP:そうした学習プログラムなどが、グローバルに広まっていった要因はどこにあると思いますか?

ライアン:人材評価のグローバルな傾向として、学位といった証明書ではなく、実際にその人ができることを重要視するようになってきたのは、GAにとって良い影響だったと思います。いまは世界的に学歴よりも、デジタルマーケティングでどんな施策を立てたか、UXデザインではどんなアウトプットをするのかなどを企業にアピールすることが必要な時代になってきました。GAではポートフォリオづくりにも注力しており、それがグローバルで成功している理由の一つだと考えています。

HIP:ほかにも、半年ごとにプログラムの内容を再検討するといった特徴があるそうですね。

ライアン:いま、テクノロジーの進化のスピードは速く、手法もツールもどんどん進化します。その進化に併せてカリキュラムを提供できるよう、スタンダードボードという、各業界や職種のエキスパートを10人くらい集めた組織があります。例えばですが、SpotifyのCTOや、Bloombergのトップデータサイエンティストなどがメンバーです。

ソフトウェアエンジニアリングやデータサイエンス、デジタルマーケティングといった領域ごとに組織されたスタンダードボードが、半年スパンでカリキュラムの見直しを行ないます。さらに、最新のマーケット情報から、どんなスキルを教えるべきかといったフィードバックをもらい、カリキュラムに反映させています。

ちなみに、GAの講師は世界に3,000名程度います。彼らのほとんどが別に本業を抱え、MetaやTwitter、Amazonといった企業で、最先端のテクノロジーを使い活躍しています。そうした人材から実践的な講義が受けられるのも、GAの特徴の一つです。

HIP:現状、アンカースターでは、どのようなサポートを行なっていますか。

苔口:講義の実施、講師コミュニティの構築、プログラムのローカライズを担ったりしています。使用する資料の言葉の定義やケーススタディー、データセットを日本人に合うものにしています。プログラムを導入している企業のスケジューリングも行なっていますが、ビジネスが軌道に乗れば、GAの日本におけるビジョンの検討・策定など、より大きな戦略作りを担っていく予定です。

GAのウェブサイトに掲載された、アルムナイの転職先の例

デジタル人材とは、「一生学び続けられる人」

HIP:これから求められるデジタル人材とは、どのような人物であるべきか。グローバルでプログラムを提供するなかで気づいた点などありますか?

ライアン:デジタル人材の定義については、一言で表現すると「一生学び続けられる人」です。そうしたマインドセットを持った人が、真のデジタル人材といえるでしょう。一つのスキル、能力に固執せず、オープンマインドで学び続けることが何よりも重要です。

20年ほど前は、ITもいまほど浸透していませんでした。その時代から現在に至るまで、最先端で活躍しているのは、学びを積み重ねてきた人にほかなりません。テクノロジーはこれからも進化していきます。それらを学び続けられる人こそ、デジタル人材なのです。

HIP:なるほど。海外での経験も豊富な苔口さんにも、これから求められるデジタル人材についてお聞きしたいです。

苔口:日本が海外に比べて、デジタル人材の育成に遅れをとる理由が3つあると思っています。1点目はライアンが言うようにグローバルでは実践経験を重視する流れの中、日本は学位などの証明書を重視し続けていることです。デジタルスキルとは実践することです。そうした視点から、人材を別の視点で判断する目がこれからさらに必要になります。

2点目が、学びの場や環境が不足していること。新卒で入社し、終身雇用でキャリアを終える人が多かった日本では、資格取得以外に学ぶ機会がほとんどありませんでした。企業のOJTも、社内のカルチャーを学ぶためのものとして重要な機能でしたが、新たな知識を体系立てて学ぶチャンスがなく「学びたいことがあれば独学で」というのが、多くの企業のスタンスです。これからはデジタルスキルなどを学ぶ場を、企業が提供していけばさらに成長のチャンスが広がると考えています。

最後の3点目が、部下の学びや失敗を許せる上司がいるかという問題です。失敗しても許される、つまり「心理的安全性のある環境」が必要です。いままでの日本企業は、失敗しなかった人が出世するケースが多いと聞いています。しかし、デジタル領域では、いかに失敗を重ねて成功に近づくかが鍵になるのではと思っています。

そのためには「私が責任を持つから失敗しても大丈夫だ」と言ってくれる上司が必要。そういった心理的安全性がある企業であれば、新たなデジタルスキルを学び、挑戦していきたいと思う社員も増えていくはずです。

「組織で学ぶことの意義」

HIP:そうなると、組織としての成長や組織自体の課題解決も必要となりますね。

苔口:GAは、いま申し上げたような3点を解決するB2Bプログラムを提供しています。つまり、1. 実践的なプロジェクト型のカリキュラムに基づき、2. ポテンシャルの高い既存社員が新しいスキルを身につけることができ、3. さらに経営層や管理職に対するプログラムも準備しています。真のDXは、現場だけがDXプログラムするのではなく、経営層や管理職も巻き込んで組織全体でデジタルを理解し、組織の共通言語を持つことが、最も効果的で重要だと考えています。

GAが米国のトップ企業に信頼されているのは、このように幅広くプログラム提供が可能であり、組織全体で効果を最大化できるためではないかと思います。

HIP:最後に、GAの日本進出に向けて今後の展望を教えてください。

ライアン:まず、今年中にみなさんをワクワクさせる発表ができるので、楽しみにしていてほしいですね。これから取り組むべきこととして、日本の最先端企業とプログラムをつくり上げ、社員が次世代のデジタルスキルを身につけられるようにリスキリングのプログラムを提供していきます。

企業にとって教育は、福利厚生と同じように社員の満足度を上げるものであり、ビジネスへのインパクトが弱いと思われてきました。GAなら社員教育に貢献しながら、満足度を上げ、さらに企業利益にまで反映できる。日本においても、インパクトが出せる事業になると信じています。デジタル人材を効率的に育成し、企業の競争力を上げていきたいと考える日本企業をサポートしていきたいですね。

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プロフィール

ライアン・マイヤー(General Assemblyアジア太平洋地域マネージングディレクター)

ジョージタウン大学でForeign Service学士号取得。大日本印刷の在米オフィスに10年間勤務。アルムナイ・ファウンダー、マインズ・イン・モーションなど教育や学生起業家支援の企業・プロジェクト立ち上げに携わった後、現職。

苔口穂高(アンカースター株式会社ディレクター)

慶應義塾大学法学部卒業。全日本空輸のパイロット訓練生を経て、ボストン・コンサルティング・グループ入社。戦略コンサルタントとして多数のプロジェクトに参画。アンカースターでは、グローバルスタートアップのサービス推進、日本企業とのコラボレーションに従事。

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