エンジニアとセールスの人間が歩み寄らないと、いいプロダクトは生まれません。そこをつなげて生まれたのがベルフェイスです
HIP:ベルフェイスの現在の事業内容を伺えますか?
中島:ウェブブラウザベースのテレフォンカンファレンスサービス「bellFace」を提供しています。bellFaceの一番の特徴は「5秒でつながるオンライン会議」だということですね。あくまで「電話」というアナログなプロセスであるということが、営業の現場の方々にとっては、すごくやりやすい。電話番号さえわかっていれば、メールアドレスがわからなくても使えるんです。使用するためにプラグインのインストールも必要ないし、ストレスなく一瞬で相手とつながれる。そして、インターネットのように商談の途中で途切れることがないというのが重要な点です。
HIP:すごくシンプルなサービスですが、従来のウェブ会議システムとの違いはどのようなものなんですか?
中島:例えば、こんな場面を想像してみてください。営業マンが電話をかけて提案する。その際、お客様のパソコンにカメラがなかったとしても、営業マン側のカメラが写っていれば、お客様はその姿や資料を見ることができます。多くの営業を経験してきた私の感覚では、営業マンの姿や表情が見えることでお客さまが得られる安心感はとても大きい。これだけでこのサービスを選んでもらえる理由は8割方決まっているんじゃないかなと思います。
中島:また、ファイル送信機能も実装されていますので、求人広告の制作担当者であれば、どういうデザインになるのかを画面共有しながら説明できるし、その場でお客さまから素材データを送ってもらえばいい。
HIP:サービスの機能、アイデア自体はすごくシンプルに見えるのですが、これまで同様のサービスがなかった理由はどこにあるのでしょう?
中島:じつはマーケティングも広告出稿も行なっていないんですが、それでも月に数百件のお問い合わせを頂いているので、ニーズはあったんです。
にも関わらず、これまでに似たサービスがなかった理由は、やはり開発の難易度が高いからだと思います。どんなユーザーでもシンプルに使えるようにするために、ブラウザのバージョン、セキュリティーから回線速度に至るまで、さまざまな環境において同じ挙動で動くようにしないといけない。これをつくるのは、ものすごく高いレベルの技術と根気が必要です。
HIP:そこにチャレンジする人間がいなかったということですね。
中島:bellFaceのようなサービスをつくるためには、エンジニアと営業マンの相互理解も必要です。大抵のエンジニアは、営業の現場を理解していないので、古いブラウザを使っているユーザーは、世の流れについていけない人と見なして無視するわけです。かたや、営業の現場を熟知している人間は、テクノロジーへの理解が乏しい。
弊社はメンバー全員が中小企業のITリテラシーや顧客のペルソナを完璧に把握していて、エンジニアには高いレベルの開発力がある。これが強みですね。私自身はその両方の知見を持っているので、そこをつなげようと。bellFaceは、ボタンの配置から接続のフロー、新しい機能の開発、UIなどを基本的に私のアイデアでつくっています。
インサイドセールスは海外のほうがよっぽど可能性がある。世界レベルで使いやすいプロダクトに進化させていきたい。
HIP:会社やサービスの成長スピードはいかがでしょうか?
中島:bellFaceは、リリースから1年半ほどで500社以上の企業に導入してもらえています。ディーノシステム時代は、1か月400社ペースで新規開拓していたので、以前を知るスタッフには「ゆっくりしたペースですね」と言われます。でも、新規開拓をやろうと思えばいつでもできますから、いまはサービスのブラッシュアップやお客さまサポートに時間やコストをかける段階だと考えています。
HIP:グローバルな展開も視野にいれているのでしょうか。
中島:もちろんです。世界一周の経験もあるので海外への気持ち的なハードルや特別感は特にありません。そもそもインサイドセールスは海外のほうがよっぽど可能性があると思います。アメリカでは、フィールドセールス(現場営業)よりも効率的だということで、インサイドセールスに従事している人のほうが多い。そんなアメリカのマーケットで自分たちがやっていけるか、試さない理由はないんです。
海外のIT企業が電話で営業という野暮ったいプロセスを受け入れるのか。それとも営業マンと営業シーンというのは世界共通なのか。それはチャレンジしてみないとわかりませんが、世界レベルで使いやすいプロダクトに進化させていきたいですね。