ドローンもIoT技術の一つであって、単体でビジネスができるわけではないんですよ。
単独プレゼンテーションが終わり、最後は坂本氏、瀧川氏、松木氏の三名によるクロストークセッションがはじまった。今後ドローン社会を実現するためには、どうやって消費者の元に届けていくかが課題になると、坂本氏は語気を強めた。
松木:ドローン事業をはじめて驚いたのは、IT業界の人が全然いないんですよね。測量とかの分野から広がりはじめたので、そういう業界の人が多くって、IT化がまだされていない。われわれのようにプラットフォームをつくっても、アプリケーションの開発に取り組んでいる人がいないのは課題ですね。今後はドローンにAIやビックデータなどの技術を組み合わせるとか、ITの流れを理解してビジネスを組み合わせていく動きが活発化すると思います。
瀧川:AIとビックデータは要注目の技術ですね。ハードウェアの開発は資本が必要だから、どうしても大企業さんが進めていくことになりますよね。ITベンチャーさんなんかは、ハードウェアのメーカーと接点がないのかなと思いますが、そこが組み合わさっていければ面白くなりそうです。
坂本:そうした技術を結ぶハブとなれる人が重要ですよね。ぼくはいろんな大学で機械や工学を学んでいる学生に授業をさせていただいているのですが、そういった活動をしているのは専門性を突き詰める方々にIT分野の柔軟なものの考え方を知ってもらい、専門性をビジネスにどう活かしていけるかを知ってもらうためです。ドローンに限らず、専門分野を持っている人が積極的にほかの分野やビジネスモデルを掛け合わせて事業をつくっていける世の中になると、社会がより豊かになるのではないかと思っています。
領域を横断する人間がドローンの未来を切り開いていくと壇上の全員が口を揃えたところで、トークセッションはいよいよ終盤に差し掛かる。最後は三名がそれぞれ描く5年後の未来像を語り、イベントは盛況のうちに幕を閉じた。
瀧川:弊社は「スカパーJSAT」からの出資を受けているので、最終的には映像分野にも入っていくと思いますけど、野望としては衛星通信の利用があります。映像に関しては、これまでの事業経験から、消費者の需要もある程度見えております。そうしたリソースを利用してサービスをつくっていきたいですね。
松木:ドローンはIoT技術のひとつだと捉えることが大事で、単体でビジネスができることはないんですよ。ドローン以外のデバイスを組み合わせてようやく1つのサービスができあがるわけです。なので、いろんな会社と協力しつつ、必要な仲間を集めていければと思いますね。かつて日本のドローン業界は遅れているといわれていたのですが、いまや世界的にリードしています。ドローン社会は遠くないと思いますね。
坂本:ドローンは、映像撮影からはじまって、農薬散布やインフラ施設の点検などに使われています。ですが、まだまだどんな使われ方をしているか明確に想像してもらえない部分が多く、せっかく注目してもらったのに機会損失をしていることも多いと思うんです。
いろんな人がドローンを活用するために必要なソフトウェアとユーザーインターフェースに触れて、利用シーンが想像できるようになれば、インターネットと同じようにドローンが個人や産業へもっと浸透するでしょう。ORSOではARを使ってゲーム感覚で操縦技能をスコア化し、継続的にドローンの操縦を学べる「DRONE STAR」というアプリサービスをつくっています。ドローンをどんなことに利活用していけるのか、人々が想像しやすい環境を整備したいと思っています。ソフトウェアからドローンの体験を整備して、日本からグローバル市場を席巻できるような面白いものをつくっていきたいですね。