他社とのコラボ商品発売も実現。社内報から生まれた新たな変化
HIP:最近、話題になった記事はありますか。
松林:「ローソン銀行」が開業した際に、社内報で取り上げてほしいという依頼がありました。ただ、届いた原稿がビジネス文書のような堅い内容だったんです。このままだとなかなか読まれなさそうだなと思って解決策を探していたら、金融事業に携わっている社員のなかに、「クレジットカードのポイント達人」として書籍を出版した経歴を持つ人がいることがわかりました。
そういったユニークな人が、自分の経験を絡めながらローソン銀行のことを語った記事のほうが、みんな読むはず。最初はカードポイントの話から柔らかく入って、「何それ?」と興味を持ってもらう。そこから、銀行の目的や今後の展開を語ってもらったほうが伝わりますよね。
松林:おかげさまで、「金融」という難しいテーマにもかかわらず、社員の半分以上が読んでくれました。これによって、取材を引き受けてくれた担当者も、いまでは「銀行の人」として社内で親しまれています(笑)。
HIP:社内報が横のコミュニケーションにもつながったんですね。カルビーでも、印象的だった記事があれば教えてください。
間瀬:紙の社内報に「ロングセラーの裏側」という連載がありました。他社のロングセラー製品を取り上げて、担当の方にお話をうかがうという企画なんですが、そこで、赤城乳業さんの「ガリガリ君」のブランド戦略を取り上げたことがありました。
そうしたら、記事に興味を持った社内の商品担当から問い合わせがあったんです。「ガリガリ君」の担当の方とおつなぎしたところ、最終的にはコラボ商品の発売が実現しました。社内報がきっかけで、新たな事業につながる可能性があることを実感しましたね。
松林:3年前に発売された「ガリガリ君リッチ コンソメMパンチ味」ですよね。私、食べました(笑)。
間瀬:ありがとうございます(笑)。
社内報は、事業部間の情報共有からイノベーションを生み出せるツール
HIP:最後に、これからどんな社内報にしていきたいかを聞かせてください。
間瀬:2018年のトップ交代に続いて、今年は社内システムの刷新や組織変更が控えているので、これらに合わせてイントラ版はリニューアルを検討中です。トップや組織、システムが変われば、それに合わせて社内報のあり方も進化させて、もっともいい手段で社員にメッセージを伝える必要があると考えています。
一方、紙版は、「読むと元気や勇気がもらえて、カルビーをもっと好きになる社内報」を目指したいと思っています。悩んでいるときに相談できる友達みたいな、社員に寄り添った存在になれるといいですね。
松林:ローソンの企業理念は、「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします」。マチを幸せにするためには、まず社員やローソンファミリーのメンバーたちが幸せだと感じる必要があります。
そのために、社内報を読むことで元気になったり、ほかの社員の頑張りを知って刺激をもらったりしてほしい。小さなことかもしれませんが、そういった手助けになる社内報を目指したいですね。
浪木:松林さんがおっしゃる通り、社員が企業理念を体現できていないと、社外の人に企業価値は伝わらない。逆に、社員が企業理念を理解したうえで企業や製品に誇りと愛情を持っていれば、それは必ず社外にも伝わります。つまり、インナーブランディングが、そのままアウターブランディングへとつながるわけです。
「社内報」という文化自体は古くからあります。しかし、なんとなく発行しているだけではもったいない。発行手段やコンテンツの内容を工夫すれば、インナーブランディングのみならず、アウターブランディングにもつながる。さらには事業部間の情報共有から、イノベーションを生み出すツールにもなり得ます。このことをぜひ、多くの企業に知ってほしいですね。