グローバルで戦うには、現地に強いチームをつくることが重要。
HIP:グローバルにビジネスを展開するときに、日本に拠点を置いているからこその強みやメリットは存在するのでしょうか。
康井:日本拠点だからこそ、というのはあまりよくわからないですね。ぼくが日本に拠点を置いているのは、合理的な理由というよりも、「日本でやりたいから」という想いと「日本の会社である」という誇りから。
そして、海外でビジネスを展開するときには、「ローカル」を重要視します。ぼくが事業を推進するうえで重要なリソースだと感じるのは、「人」「お金」「こと」の3つ。つまり、現地に精通した「人」でチームをつくる。日本だけでなく海外の投資家からも「お金」を調達する。海外の大企業とパートナーシップを結んで「こと」を生み出す。つまり、海外で成功するには、現地の優秀な人の力を借りて、現地の投資家から資金調達し、現地のリソースを上手く活用することが必要です。
康井:なかでも、特に大事なのは「人」です。日本の企業は現地事務所に日本人を置いてしまうケースが多い。それでは、商習慣も言語もわからず、なかなか戦えないですよね。だったら、すでに現地でバリバリ働いている人を採用して、その土地に強いチームをつくることが重要だと思います。
やはり、海外で成功したいなら現地に行かなければならない。シリコンバレーのファンドで働いていたときに、現地の投資家が、ニューヨークの案件でさえ遠すぎてよくわからないから投資できないと言っていたのが印象的でした。そうなると、言語も文化もマーケットもわからない日本のスタートアップへの投資など、問題外になってしまいます。日本での数字がいいとか悪いとか、そういった次元の話ではない。海外で成功したいなら、まずその国の地を踏んで、人とつながる必要があると思います。
誰かが事例をつくれば、日本からもAmazonやFacebookが生まれる。
HIP:残念ながら日本からは、AmazonやFacebook、Googleのような新しいグローバル企業が生まれていません。
康井:その原因として、アイデアや経営者の資質などが挙げられますが、ぼくは根本的に資本力が違うと感じています。アメリカでは、黒字化や上場までに、スタートアップが数百億、数千億円のお金を集めることも珍しくありません。
オーバーな表現ですが、サーキットを速く走るマシンを開発する目的のスタートアップがあったとして、日本では3億円を集めて三輪車を、アメリカでは300億円を集めてF1カーをつくっている。それでは、グローバルで勝負できませんよね。最近、海外のスタートアップの社長になった友人と話をした際に、社長就任から半年ですでに2,500億円を集めたといっていました。一方、日本で数百億円の資金調達したスタートアップですら皆無に等しい。その投資文化の差は大きいと思います。
HIP:最近は日本でも大企業によるスタートアップへの投資が活発になってきたと聞きますが、いかがですか。
康井:素晴らしいことだと思っています。ただ、多くの日本の大企業は、海外と比べると構造的にリスクを取りにくいことが多い。株価を下げたくないし、積み上げてきたキャッシュも減らしたくない、と考え始めると、大胆な投資に踏み出しにくいですよね。
マーケットもスタートアップへの投資を理解しきれていない部分があり、Amazonのような先行投資型の経営が評価されにくいと思います。結局、スタートアップも、単年度黒字になるかどうかなど、アメリカのスタートアップの現場ではあまり議論されない指標を気にして、短視的に業績を上げる施策を打ってしまう。
もし、日本のスタートアップが数百億円集めることができるようになれば、日本からもAmazonやFacebookが生まれるかもしれません。そのためにはどうすればいいか。結局、市場が徐々に成熟していくよう、失敗も良き挑戦と認めて、事例をつくるかしかないのです。シリコンバレーも一夜にしてできたわけでないですからね。
HIP:その最初の事例を、Origamiが目指していると考えていいのでしょうか?
康井:最初かどうかはまったく関心がなく、10年単位で大きな仕組みをグローバルでつくりたいと考えています。ECのマーケットプレイスでお金が動く基盤をつくり、「Origami Pay」で決済に参入しました。次は、お金を貯める仕組みや運用、融資できる仕組みをつくることが目的です。そして、データを中心とした金融の新しい価値を創造したい。最終的には、財閥をつくりあげるくらいの大きな夢を持っていたいですね(笑)。