INTERVIEW
現金主義はハンデじゃない。スマホ決済のOrigamiが日本で起業した理由
康井義貴(株式会社Origami代表取締役社長)

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2018.04.16

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スタートアップの成功に重要なのは、潜在市場規模の大きさ。いくらいいサーフボードを持っていても、波が小さければダメなんです。

HIP:GoogleやFacebookの台頭から金融業界の激変を予想した先見性は卓越したものだと感じます。なぜ、そういった発想につながったのでしょうか。

康井:イノベーションを起こしたい、何か大きなことをやりたいと、常に思ってきました。ビジネスには小さい頃から興味があり、高校生のときには、自分でスニーカーや洋服を販売するサイトを立ち上げて運営していました。ニューヨークの投資銀行での勤務や、シリコンバレーのベンチャーキャピタルに勤めていたことも大きかった。

康井:ベンチャーキャピタルではさまざまなスタートアップへの投資案件に関わったのですが、そこで学んだのは潜在市場規模の重要さです。サーフィンにたとえると、市場規模は波の大きさ。いくらいいサーフボードを持っていても、波が小さければダメなのです。日本の場合、市場規模を考えると、自動車産業か情報通信産業、そして金融だと考えました。

起業するにあたっては、その3つの業界がインターネットによってどう変化するかを考えていたのですが、まず外したのは、情報通信産業。先ほどのGoogleやFacebookの話のように、この20年ですでにビジネスモデルがシフトしてしまったように感じていました。

次に、自動車産業。金融業は情報通信業よりも、規制を含めてより慎重さが求められますが、人命に関わるビジネスはそれ以上に慎重さが必要です。そういった意味で、自動車産業ビジネスの劇的な変化や完全自動走行を含むインターネット化は、もう少し時間がかかるのかなと。

いま、金融の世界では、まさにインターネットが入りつつあります。これからの10年で、劇的な変化が起こるはずです。ぼくらが知っている金融のかたちがなくなるほどの地殻変動が起こるでしょう。

「Origami Pay」で利用されるQRコード。ユーザーはこのQRコードを読み込み、支払いを行う

キャッシュレス化が進まない日本での起業だからこそ面白い。

HIP:しかし、ご経歴からすると、そのままスタートアップの本場、シリコンバレーで起業しても良かったようにも感じます。スタートアップにとって決して恵まれた環境とは言い難い日本で起業した理由を教えて下さい。

康井:海外に住んでいたからこそ、日本人であることを意識させられたのかもしれません。生まれたときから常に「Are You Japanese?」と聞かれるわけですから。日本に誇りを持つようになるし、自分のアイデンティティーのひとつだと感じています。

シリコンバレーでは、「日本は20年間、何をしていたんだ。ソニーやホンダのような素晴らしいテクノロジーの会社はもう出てこないのか。元気なのはサムスンくらいじゃないか」と言われ、存在感の低下を思い知らされました。実際この20年は、戦後の時期と比べると、日本から世界に通用する新しい企業が生まれていません。1980年代には、三菱地所がロックフェラーセンターを買収したこともありましたよね。そのニュースを知ったとき、子ども心になんだかワクワクしたのを覚えています。善し悪しは別にして、日本の企業に存在感があった。自分もそういった事例になれれば幸せだなと思っています。

Origami社内にあるキャッシュレスキオスク

HIP:日本でのキャッシュレス決済の普及率は20%ほどです。中国や韓国、アメリカの普及率が40%から50%というデータ(いずれも2015年経済産業省調べ)に比べて、現金主義の文化だといえますが、その日本で金融のスタートアップをはじめるのは不利ではないでしょうか。

康井:だからこそ面白い。そういうマーケットこそ伸びしろが大きいので、早く仕込まないといけないし、どこよりも早く動きたいと思いました。そもそも、日本人の現金主義の背景にあるのは、「カードは怖い」とか「現金を手元に置きたい」とか、非常に感覚的なものです。

この性質はどうすれば変わるのか。じつはほかの国がキャッシュレス文化に変化した例を調べてみると、ターニングポイントはどこも同じで、経済合理性を打ち出すこと、つまり、現金よりキャッシュレス決済のほうが安く買えることで普及していったのです。資金移動のコストが下がるということは、お客さまが同じ商品をより安く買える、あるいは店舗が負担する手数料が下がるということ。つまり、日本でも十分普及する可能性はあります。

HIP:「Origami Pay」は、店舗側が表示したQRコードをユーザーがスマホアプリで読み取ることで決済を行います。企業やショップが導入するには、iPadなどのタブレットに専用のアプリケーションを入れるだけなので、海外への展開もしやすいのではないでしょうか。

康井:「世界に通用する企業を日本から」というのが大きな夢なので、まだ具体的には言えませんが、実際に海外での展開も視野に入れています。技術面では難しいことはそこまでないのですが、大変なのは加盟店の開拓。たとえば、日本のクレジット会社のカードブランドが世界中で使えるのは、現地で粘り強い営業活動を続けることができたから。その困難を乗り越えていまがあるわけなので、先駆者として本当に尊敬しています。

日本からFacebookやAmazonのような、新しいグローバル企業が生まれない理由とは?

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