東芝が逆境のなかで始めたネイル事業。女性の悩み解決が生んだイノベーション
寺岡佳子(株式会社東芝 デザインセンター デザイン第一部) / 中村恭子(東芝デジタルソリューションズ株式会社 プロダクト&サービス事業推進部)
2018.06.20

オープンネイルで決済や交通機関を利用できる未来が、間もなくやってくる。

HIP:2017年5月に販売開始された「オープンネイル」。今後どのように展開していくのでしょうか?

中村:まずは、ファッションネイルとして軌道に乗せることを目指しています。多くの販売パートナーと提携してユーザーを増やすために、ミチさんと一緒にマーケティング活動を続けているところです。その先には、2つの目標があります。

ひとつは、ネイル業界にデジタルトランスフォーメーション(ITで人々の生活をより良い方向に変化させる)を起こすこと。「オープンネイル」のデジタル技術を使えば、ユーザーは世界中のネイリストさんのデザインを手に入れることができます。ネイリストさんは、CADのように、パソコン上でネイルデザインを完成させることができます。これによって、ネイリストさんの仕事も大きく変わる可能性があります。

東芝は、デジタルトランスフォーメーションをリードし、グローバル社会で新たな価値を創造することをミッションとして掲げているので、「オープンネイル」は、その戦略にも合致します。大企業の新規事業では、会社の戦略に合致させ、しっかりアピールすることも重要です。

寺岡:大企業では、新規事業を応援するにもなにかしらの理由が必要になることも多いんです。でも、会社の戦略にあっていれば、経営陣も応援してくれる。「オープンネイル」も、発想を話すとみんな賛同してくれるのですが、実際に事業部単位で関わるのは難しい、と言われてきました。それは、自分たちの事業部が関わるべき理由がないからです。いいねと思ってくれた人たちを仕事でも巻き込むには、理由が大事です。

中村:たしかに、やるべき理由がないと自分自身も説得できないし、さらにその上の人に対しても話を通すのが難しいですね。

HIP:もうひとつの目標はなんでしょうか。

中村:このプロジェクトのスタート時に考えていたとおり、「爪をオープンプラットフォームにする」ことです。「オープン」という名前に思いを込めたとおり、たくさんの方々にオープンネイルを活用したビジネスを展開してほしいと考えています。具体的な取り組みとしては、ネイルチップに非接触のICチップを搭載します。

試作品はできていて、実用化を目指して取り組んでいます。実現すれば、爪をかざすことで決済や鍵の開閉、さらには公共交通機関の利用などができるようになるかもしれません。

寺岡:子守りや介護などにも活用できます。たとえば、足の爪に装着しておいて、対応したポイントを通過するとスマホに通知が届くようにしておけば、高齢者の見守りにもなります。あとは、身体に密着しているので、生体データを測定することも考えられますね。

中村:将来的には、爪がディスプレイになるところまで考えています。東芝の技術者のなかには「この技術を使えばできるかも」と心強い言葉をかけてくれる人もいます。興味を持ってくれる人は多いので、いま以上に「オール東芝」のプロジェクトとなるように、しっかりと社内に浸透させていきたいですね。

周りは敵ばかりじゃない、上手く巻き込んで応援してもらうことが必要。

HIP:東芝のような大企業で、自主提案の事業を立ち上げるのは、簡単なことではないと思います。経営危機のなかで新しいことにチャレンジするのも大変だったはずです。そんななかで新規事業を実現させたお二人から、大企業で新しいことにチャレンジするためのアドバイスをいただけますか。

中村:周りにいる多くの社員は、積極的に味方になってくれるわけではありません。会社の規模が大きければ大きいほど、ほかの部署には無関心になりがち。そういう人たちを味方につけるには、やはり熱意が重要と思います。

また内部よりも外部から評価されることで、関心を持ってもらえます。実証実験の反応もそうですし、メディアに取り上げられるのもそのひとつです。「私たちがやりたい」という想いも大事ですが、そこに「世の中が期待して、やってほしいと思っている」という流れをつくれたほうが、社内でも了承や協力を得やすいと思います。

寺岡:大企業で新しいことをやろうとすると、ときには反対を受けることもありますが、「やめておけ」という人も意地悪でいっているわけではなく「ビジネスだから、やりたいという気持ちだけじゃ困る」という意味で言ってくれていることが多かったですね。

大企業には技術力を持ったプロが大勢いるので、自分たちの考えや思いを伝えられれば、きっと力を貸してもらえると思いますよ。

Profile

プロフィール

寺岡佳子(株式会社東芝 デザインセンター デザイン第一部)

社会インフラ、ICT関連のデザインに携わる。2015年より、「オープンネイル」プロジェクトに参加。初期メンバーとして、事業化を推進したほか、コミュニケーションデザイン、サービスデザインを担当。

中村恭子(東芝デジタルソリューションズ株式会社 プロダクト&サービス事業推進部)

パートナー向けライセンス事業の営業を担当したのち、2016年より、「オープンネイル」プロジェクトに参加し、オープンネイルプロデューサーとして事業戦略及びマーケティング戦略の立案・実行を担当する。

オープンネイル公式サイト
https://opennail.jp/

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