INTERVIEW
新しい森永製菓になるために。ベンチャーとの交流が生んだ、大きな変化とは
金丸美樹(新領域創造事業部 チーフマネージャー)

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2018.03.12

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「本気で新しいことをやるんだ」というメッセージが込められた、新たな部署の設立

HIP:その後、新井社長就任を経て、2014年に「新領域創造事業部」が設立されます。金丸さんも合流されていますが、過去の「経営戦略部イノベーショングループ」とは、どう違うのでしょうか?

金丸:「新しい森永をつくる」「外の風を取り入れる」の2つのミッションが与えられた、社長直轄の部署でした。もちろん兼務ではなく、専任です。成績トップの営業マン、研究のスペシャリスト、MBAホルダー……と、さまざまな領域の専門家が呼ばれました。

HIP:各部署のエースクラスの人材が集められた?

金丸:私は新規事業の経験があったのでこの部署に参加することになったのですが、ほかのメンバーは恐らくそうだと思います。自然と注目度も高まりますから、新規事業部が陥りがちな、「あの部署、結局何をやっているの?」という状態にもなりにくい。あらためて「本気で新しいことをやるんだ」というメッセージが、社全体に伝わったと思います。

HIP:それぞれの部署が応援し、協力したくなるような人が集められたんですね。

金丸:はい。とはいえ、やっぱりすぐにいいアイデアが生まれるものでもなくて。既存領域と近いことをしても意味がないし、あまりに掛け離れたことも難しい。何度も会議を行いましたが、なかなか突破口は見つかりませんでした。

そんなとき、ゼロワンブースター(事業創造・オープンイノベーション支援を行うベンチャー企業)に新商品の相談に行く機会がありました。そこで当時の部署の状況を話しているうちに、「アイデアや議論より、まずは実行です」と怒られてしまったんです。

大企業の社員は、新しいチャレンジに対して「できない理由」を探しがち

HIP:せっかく体制が整ったにもかかわらず、机上の空論だけを並べて行動できていなかったんですね。

金丸:すごく印象的な出来事で、目の覚めた思いがしました。ベンチャー企業の「スピード」や「行動力」に勝つことは難しいと感じましたが、「事業のスケール化」や「資金」「与信」の面では、大企業のほうが明らかに優っている。ベンチャー企業と大企業、それぞれが得意とする部分を提供し合えば、新しいことができるのではないかと考えました。

HIP:その思いが、ベンチャー企業や起業家の事業アイデアを森永が支援する「森永アクセラレータープログラム」の開催につながったのでしょうか?

金丸:はい。まずは社内へのアピールも兼ねて、外部の方を招いてアイデアソンを開催しました。森永製菓の社員とベンチャー企業の方がチームを組んで、1週間かけてビジネスアイデアを考え、それを起業家にプレゼンするという試みです。

実際にベンチャー企業の方と直接交流したことで、「圧倒的な差を感じた」という感想を語る社員がすごく多かったですね。大企業の社員は、プレゼン時にあらゆる指摘に応えられるよう、万全の態勢を整えるトレーニングを受けている。だから、新しいアイデアを思いついても同時にリスクやできない理由も考えてしまいがちです。その環境に慣れてしまって、チャレンジを諦めてしまう社員も多かった。

だから、プレゼンのときは起業家の方に「ポジティブな意見しかしないでください」と相談しておきました(笑)。おかげで、イベントはかなり盛り上がりましたね。社長は、社員の活き活きとした姿にびっくりされていて。だからこそ、スムーズに「アクセラレータープログラム」につなげることができたと思います。

HIP:「アクセラレータープログラム」では、実際にどういったプロジェクトが事業化したのでしょうか?

金丸:2015年には5つのプロジェクトが選ばれ、事業化を目指し出発しました。たとえば、保育や教育系施設のコンサルティングなどをしている株式会社ウィライツから提案された、学童保育向け補食(おやつ)サービス。学童保育の現場に強いネットワークを持っていた、ウィライツならではのアイデアでした。

森永製菓としても、日本の人口が減っていくなかで、新しいファンをつくるにはどうすればいいのかという課題がありました。その課題を、児童のおやつに積極的に関わることで解決に導くプロジェクトとして、協業することになったんです。個人的にも、教育はやってみたかった分野でした。でも学童保育の現場は、民間も行政もあり、構造が入り組んでいてなかなか着手できずにいたんですよね。

森永アクセラレータープログラム2015受賞企業

HIP:ウィライツにとっては、森永製菓と組むことでどういったメリットがあったのでしょうか?

金丸:まずは単純に、資金の提供です。森永製菓の役員たちも参加したメンターがアイデアの壁打ち役になり、ブラッシュアップできたことも大きかったと言ってくれました。それから、森永製菓という名前によって、営業の成功率が格段に上がり、1年ほどで事業を拡大することができました。それぞれの強みが、いいかたちで実を結んだ例のひとつだと思います。

「いい人ばかり」が森永製菓の強み。ベンチャーと大企業の協業が成功する秘訣とは

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