新常識に挑む「みんなの銀行」の戦略。ネット銀行と異なるデジタルバンクとは
永吉健一(みんなの銀行 取締役頭取)
2022.10.31

開発と組織づくりはアジャイル型で「小さく、早く」。スピード感ある事業を実行するための意識

HIP:銀行というと、どこか旧態依然とした組織のイメージもありますが、ふくおかフィナンシャルグループの社内ではデジタルバンクの立ち上げに関して、どう進められ、開業につながったのでしょうか?

永吉:デジタルバンクの新設について、グループ内の反応としては総じてネガティブではなかったです。ただ、総論賛成・各論反対の側面はあり、各論では何度も議論を重ねていきました。各論の議論をスタートしてから正式な設立決定にいたるまでには2年ほどかかっています。ただ、その2年は決して無駄な時間ではなく、議論しつくしたうえで社内のコンセンサスがとれ、今回のプロジェクト化に至ったわけで、デジタルバンクの事業を進めるうえでとても大切なプロセスだったと感じています。

最終的に全員の意識を「賛成」にまで持っていくことができた理由の1つには、iBankマーケティングの成功も大きかったと思いますね。iBankマーケティングの「Wallet+」は、ふくおかフィナンシャルグループとして初めてデジタルサービスに特化した新規事業ですが、それがゆえに検討当初は「誰がこんなサービスを使うんだ」といった懐疑的な声も社内には聞こえていました。

社員10名からスタートしたiBankマーケティングですが、今では100名を超え、アプリのダウンロード数も200万件を突破するなど、相応の手応えを得ることができました。こうした経緯・経験もあったことで、デジタルバンクのプロジェクトの推進を認めてもらえたところはあったのかなと思います。

iBankマーケティングが提供する「Wallet+」

HIP:みんなの銀行同様、iBankマーケティングも新しい会社として設立しています。あえて銀行の外に切り出した理由は何だったのでしょうか?

永吉:誰も経験がなく、不確実要素の多いプロジェクトでしたから、会社からはグループ銀行内のいちプロジェクトとして推進することを提案されましたが、既存の銀行の枠組みのなかでやろうとすると、さまざまな組織間の壁や業務・システム上の制約に縛られ、プロジェクトをスピーディかつ柔軟性を持って立ち上げるのは難しい。銀行の外に、小規模でアジャイルに動ける独立した別組織をつくらないと、プロジェクトを形にできないと考えていました。

最終的には上層部からも「失敗してもいいから、とにかくスピーディーに、どんどんチャレンジしてくれ」と応援してもらえました。

HIP:具体的に、iBankマーケティングやその後のみんなの銀行では、既存の銀行でのやり方をどう変えましたか?

永吉:既存の銀行では基本的にサービスの開発はウォーターフォール型で進めますが、開発まで時間をかけた結果、世の中に出した際に思ったようにいかなかったケースもありました。一方、銀行の外につくったiBankマーケティング、みんなの銀行では、アジャイル型で小さくサービスをつくり、顧客の声を取り込みながら改善を繰り返していく手法をとっています。また、データドリブンのマネジメントや、金融以外の世界との協業にも積極的に取り組んできました。

さらに、意思決定のスピードも重要視しています。例えば、iBankマーケティングでは、社員が100名くらいになるまでは部長などの役職はあれど決裁の権限はなく、実質的にほぼフラットな組織にしました。意思や意図をメンバーにできるだけシンプルに理解してもらえるよう心がけてもいます。

メンバー、組織という点で付け加えると、みんなの銀行のメンバーは元からの銀行員は全体の4割を切っており、6割以上がエンジニア、データサイエンティスト、デザイナー、マーケターといった職種で、既存の銀行では考えられない人員構成になっています。私たちは、UI含むUXからその世界観、提供価値まで、既存の銀行とはまったく異なるものを目指していますから、この多様性が強みになると考えています。いま、みんなの銀行には、新しい技術を使って、これまでにない新しい銀行づくりをすることに、面白そう! 挑戦したい! という人たちが続々と集まってきています。

BaaSではサービスと金融が、ますます密接な関係に。銀行のあり方を変革していきたい

HIP: 独立した別組織として新規事業に取り組む一方で、グループ銀行本体と連携できる部分もあるのでしょうか?

永吉:いろいろなことが考えられると思います。デジタルバンクの取り組みやソリューションは、ゆくゆくはグループ銀行のDXに役立つはずです。

そのためにも、グループ銀行とみんなの銀行は、既存事業、新規事業の区別なく、お互いのやっていることを理解する姿勢が大切です。実際、グループ全体の戦略会議の場などでは、グループ銀行トップから各支店長にデジタルバンクの意義を発信してもらっています。そうやって「この取り組みがグループ全体に何をもたらし、具体的に自分たちの業務に何が還元されるのか」を伝え続け、現場レベルにまで理解を深めていくことが重要なのではないでしょうか。

HIP:国内初のデジタルバンクとして、「みんなの銀行」にかかる期待は大きいと思います。新しいかたちの銀行として、今後どのような価値を社会に提供していきたいですか?

永吉:まず、BaaS事業は今後大きなビジネスの柱になり得ると考えています。あらゆる分野でDX化が進む流れのなかで、サービスと金融はますます切り離せない関係になっていきます。そのなかで、私たちが「デジタルにおける最適な金融機能の使い方」を提供するパートナーになれれば、銀行に対する印象や立ち位置も変わってくるはずです。

これまでの銀行をアップデートし、価値仲介、信頼創造、決裁に発展させて、デジタルネイティブ世代の新しいニーズをとらえ、新しい価値の創造にもチャレンジしたいと考えています。そうやって、銀行のあり方をどんどん変革していきたいですね。

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永吉健一(みんなの銀行 取締役頭取)

九州大学法学部卒業。1995年、福岡銀行入行。経営企画を中心とした業務に就き、ふくおかフィナンシャルグループ発足やiBankマーケティング立ち上げに従事。みんなの銀行を構想段階からリードし、2022年に頭取就任。

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